元男性職員(47)による5700万円余の横領が4日、明らかになった上田信用金庫(上田市)。8月末にこの職員を懲戒解雇処分にしたものの、事実を公表していなかった。信濃毎日新聞には3日までに同信金の事情を知る人から、不祥事が起きたものの同信金本店は事実を公表しないのではないか―と懸念する情報が寄せられた。同信金は4日昼までの取材に対しては、横領があった事実そのものを認めない対応をしていた。こうした隠蔽(いんぺい)体質は顧客の信用にも影響しそうだ。
「不祥事があったかどうかを確認しているところ。現時点ではお話しできることはない」。3日の取材に、同信金本店で法令順守を担当するコンプライアンス統括室はこう答えた。だが実際には内部調査を8月上旬から進めており、多額の横領をしたとして既に同月31日付で、この職員を懲戒解雇処分にしていた。
4日も当初、同信金側は同様の答えだったが、同日夕になり、一転して「不祥事件の発生」と題する文書で概要を公表。同日、財務省関東財務局に事実関係を報告し、上田署に相談を始めたという。
同信金で、御代田支店元支店長による約3億1400万円の巨額横領が明らかになったのは2009年3月。その公表時期は、同信金が横領の事実を把握し始めてから4年後だった。川原柳支店元支店長代理の横領も03年に発覚、懲戒解雇処分となったものの、09年4月まで6年余り公表していなかった。
巨額横領が発覚して以降、同信金は再発防止策を講じ、09年4月からコンプライアンス統括室を独立させたほか、年1回、融資担当などの職員を順番に休ませ、他の職員が業務をチェックする取り組みを続けている。だが、結果的に自浄作用は働かなかった。増子悟常勤理事は「預金はいったん入金されていたため、引き出しも顧客が行っているように見えた。積金は偽造証書なので、そもそも記録がなく、チェックできなかった」と説明するが、今後、職員による不正行為が再び起きないために、より厳格な対応が必要になりそうだ。
同信金の小林哲哉理事長は4日、取材への対応は行わなかった。同信金側は「他の業務があるため」などと説明した。