アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が8日、ロシア・ウラジオストクで開幕。その席上で、野田佳彦首相が韓国の李明博(イミョンバク)大統領と握手した。大統領が8月に竹島(韓国名・独島〈トクト〉)に上陸後、初顔合わせだった。
首相は会議直前、隣席の大統領に笑顔で手をさしのべた。会議後、記者団に「目が合った瞬間に自然発生的に握手したが、言葉は交わしていない」と説明。両国の外相もAPEC首脳会議の夕食会で意見交換し、「事態沈静化のため、できる限り冷静に対応しよう」と確認した。(ウラジオストク=土佐茂生)
■「悪循環断てないか」
韓国の李明博大統領が、日韓関係に詳しい専門家らを緊急招集し、今後の対日政策について協議していたことが8日わかった。李大統領は、天皇に謝罪を求めたとされる自らの発言について、真意が伝わっていないと語ったという。
李大統領は5日早朝、大統領府に専門家らを招き、約2時間にわたって日韓関係について議論。協議参加者らによると、李大統領は「私の発言がねじ曲げられて日本に伝わっている」と述べ、強い不快感を示した。
また、「過去の問題が浮上するたび、日本との関係が悪くなる。この悪循環を日王(天皇)の韓国訪問で断ち切れないか。何とか自分の任期中にケリをつけられないか」という趣旨の説明をしたという。
8月14日の李大統領の天皇への「謝罪要求」は、天皇訪韓に条件を付けたものと日本側では受け止められていた。しかし、韓国政府関係者は「まず謝罪ありきのように強調されるが、一気に懸案を解決するには天皇訪韓ほどの大胆な決断が必要ではないか、というのが大統領の本意だ」と補足した。
野田佳彦首相が謝罪と撤回を求めた「天皇発言」について、李大統領は竹島訪問以上に日本の反発を招いているとの報告を受けた。李大統領は外交ルートを通じて日本政府側に説明するように指示。すでに日本政府側に伝わっているという。
さらに、李大統領は専門家との協議で、旧日本軍慰安婦問題に積極的に対処しない日本へのいらだちがあったことが竹島訪問の動機だったと改めて言明。ただ、慰安婦問題の解決に向けては「日本は法律や原則に固執しすぎている」として、市民団体などが求めている、日本政府が法的責任を認めることには必ずしもこだわらない可能性を示唆したという。