分野毎のEM活用方法
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EMと畜産
■畜産の現状
近年、牛や豚の飼育は配合飼料を与え、狭い場所での密飼いがメインになってきています。ともに手間を省いて省力化をはかり、少人数でもある程度の規模の飼育ができるためですが、この配合飼料と密飼いという2点がさまざまな問題を引き起こしています。
配合飼料に含まれる化学物質や抗生物質、残留農薬は糞に高い濃度で残留し、堆肥化しても発酵がうまくいかない場合があります。未熟な堆肥を畑に使用すると作物の病気が多発し、ひどい場合は数年にわたって畑が使えなくなるなどの被害が出ることもあります。また、臭いがひどいため、廃棄物として非常に厄介な物ともなってもおり、これらを総称して『畜産公害』などと呼ばれることもあるのが現状です。
その他、高濃度の抗生物質などにより、それに耐える耐性菌の出現も問題となっています。O-157や薬剤耐性黄色ブドウ球菌は、畜産の現場が発生源の一つではないかと考えられています。毎年流行するインフルエンザも、東南アジアの畜産現場で抗生物質の多投与と密飼いにより変異が起きやすい条件が揃っていることが原因のひとつと推測されています。
このような種々のトラブルは、昔の放し飼いの畜産ではなかったことで、エコロジカルなリサイクルが可能となれば解決できる問題と言えます。
また、畜産にはある程度の空間が必要な上、土地を荒らし水を汚す点で都市部での営農はますます難しくなってきています。地域の中で畜産農家と住民が共存して行くためには、廃棄物として出されている『有機物』を循環させるシステム作りを考えていく必要があります。
■EMを使った解決法
EMは臭い消しには特に著効があり、臭い消しだけにEMを活用している農家もいます。EMが作りだす抗酸化物質や有機酸には、悪臭物質を分解する働きがある他、有機物を腐敗させずに分解するため、悪臭の緩和に絶大な効果があります。
畜産の場合、EMの希釈液を畜舎内外へ散布・飲水に混入・EMボカシを飼料に混入、という3種類の方法を同時に行うのが代表的と言えます。これにより、飼料の消化吸収が高まり成長が早くなる他、体内の微生物相の変化で糞尿の臭いが消え、畜舎の衛生状況も向上させることができます。総合的に効果を出そうとするなら、畜産でのポイントは「飲ませる、食べさせる、散布する」の3点セットで、環境の中の微生物相を腐敗型から発酵型に変えていくことです。
環境にEMを定着させるためには、畜舎の構造も重要となります。コンクリートの畜舎ではEMが定着しにくく、効果が出にくいため、敷料を入れた方が管理しやすいでしょう。平飼いなら地面にEMが定着するように、土やオガクズを敷いてEMを定着させれば散布の回数を減らすことができます。かえって毎回散布するよりも、地面にEMが定着してくれた方が効果が出る場合もあります。
豚舎の場合は敷料を使用後に掻きだしてEMで発酵させ、再び戻すことでEMの定着した敷き料とすることができます。
鶏の場合は水を嫌がるため、平飼いの場合は散布するよりも地面にEMを定着させる方法が有効と言えます。ケージ飼いの場合は体内にEMが定着するように工夫することがポイントです。
また、し尿を堆肥として活用する場合は、鶏や豚の場合は植物材料を加えて発酵させるとバランスの良い堆肥となります。また、通常の残留農薬や抗生物質が問題となるようなし尿でも、EMで処理すると作物に影響の出にくい堆肥となります。牛糞は畜舎から取り出して積み上げ、EMをかけておくと堆肥化できます。EM3点セットで飼育している牛の場合には、糞にEMをかけなくてもそのままの状態で発酵します。
EMを使用することによって、結果として家畜のストレスが減って、本来の健康を取り戻し、抗生物質のいらない管理が可能となります。また、成長が速く途中で死ぬ個体が少なくなる、病気が少なく密飼いができるなどから、EMの導入は経済的にも効果が高いと言えます。
その他、EM農家から生産される肉や牛乳、タマゴの品質は非常に優れ、アトピーの人が食べても症状がでないなどの報告も多数あり、付加価値の高い健康食品として市場で取り引されています。
●畜産におけるEMの基本
飲ませる:水にEMを1千〜1万倍で希釈して与える。
食べさせる:エサに1〜3パーセントのEMボカシを添加(質の良い物)
散布する:EMと糖蜜の1パーセントの希釈液を散布する。
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