「サービス業としての意識を高めるためで労使は一致しており、協力してバッチ方式を運用する」と報道されています。
顧客である私たちに職員の接客水準がすぐに分かるようにするための制度だそうです。
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「職員の接客力を☆の数で格付け」
☆
基本的なあいさつや身だしなみ、言葉遣い、電話対応ができ、顧客に迷惑をかけたら言い訳せずに素直に謝れる。
☆☆
ビジネスマナーの筆記試験に合格必要。商品やサービスの内容が正しく説明でき、苦情に対し適切な初期対応ができる。
☆☆☆
業務改善点を上司に提言でき、苦情に対しては臨機応変に自分で解決まで導ける、上司相手の実技試験あり。
☆なし ???
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この記事を読んで本当に悲しくなってしまいました。
私だけではなく、サービス業にかかわる多くの指導監督職の方々もおそらくそう感じたことと思います。
いきなりテンションが上がりますが、
「一体これは何ですか?」
職員の方々にも聞いてみたい、
「恥ずかしくないですか?」と
私は、愛知万博のコラムでもお役所が行った仕事の出来ばえを厳しく評価してきました。
もちろん公務員の職場が非生産的で不効率であることは知っていましたが、ここまで非創造的組織であるとは思いませんでした。
「開かずの踏み切り」問題が騒がれていた頃、小泉首相は役人に対し「もっと知恵を出せと叱責した」と報道されました。
総理大臣から「知恵を出せ」と言われなくては知恵を出さない公務員の世界、本当に非創造的職場なのでしょう。
この施策の根本的な間違いは「接客は仕事そのものである」という重要な観点が抜け落ちていることです。
サービス業としての意識を高めることは良いことですが、サービスを「おまけ」のように考えてはいけません。
この格付け方式を郵政行政局の官僚が思いついたのか、それとも郵政公社の上層部が考えたのかは分かりませんが、いずれにしても「接客の仕事とは何か」が分かっていないのでしょう。
「接客は仕事そのものである」ということは「職員は接客という仕事をすることによって給料をもらっている」ということを意味します。
当たり前ですよね。スチュワーデスやマクドナルドのスタッフ、ディズニーランドのキャストも同じです。
接客が仕事そのものであり、目の前にいらっしゃる「接客をしているお客様」からスタッフは給料を頂いているのです。生活がかかっているといっても良いでしょう。
郵政公社(民営化されれば会社)は、☆1つにも値しない、つまり接客するだけの能力を有していない職員を雇用し給料を払っているということです。
公社職員は現在公務員です。いくら税金を投入していないとはいえ、本当にこれで良いのでしょうか。
民間企業でしたらどうでしょうか。この厳しい競争社会において、☆1つにも値しない社員の働く場などないことだけは確実なことです。
視点を変えます。
☆がない職員は、基本的なあいさつや身だしなみ、言葉遣い、電話対応ができないということです。
顧客に迷惑をかけたら言い訳をし、素直に謝れないということです。
裏を返せばこういうことです。
「このように低レベルの職員もいます。お客様からひと目で職員の能力レベルが分かる仕組みになっています。このことを理解したうえでサービスを受けてください。」
このように郵政公社が宣言していることと同じなのです。
一方、この制度に対する職員の「気持ち」「受け取り方」も気になります。
いくら労使で合意したとはいえ、格付けされたうえ、能力の程度がわかる☆印を付けられ、客の前に出される。
JR西日本のあの教育方法を彷彿させます。
☆なし職員への接客業務外しは「罰」であり、☆3つは「褒章」である、そのように考えるのは私だけでしょうか。
郵政公社職員だけの問題ではありません。これは相当頭の良い人が考えた公務員改革の「実験」ではないでしょうか。能力のない公務員をふるい落としていくための・・・
そうです。現場で働く全ての公務員にこの「接客能力格付け制度」が適用されていくことも「想定」しておかなければいけないのです。
公務員の皆さん、次はあなたの職場かもしれません。
話を戻します。
スチュワーデスやディズニーランドのスタッフに同じような格付け印が付いていたらどうでしょう?
お客様は怒りますよね。
低レベルである☆1つのスタッフからサービスを受けているのか、緊急事態に対応できるのか、と考えるでしょう。
ちなみにディズニーランドでもネームタグやコスチュームに、教育担当者と分かるバッジやグッドサービスぶりを示すバッジを付けることができます。
しかし、これらはキャストのサービスレベルを格付けしているものではありません。
あくまでも高い評価を勝ち取った自分への「プレゼント」であり、顧客であるゲストに見せ付けるためのものではありません。
この格付け制度はこのようにも受け取れます。
「サービスの良し悪しは職員個人の能力の問題であり、公社としては職員全員を☆3つのレベルにまで引き上げることは考えておりません」
そもそも格付け2位の☆2つのレベルは、ディズニーランドでいえば一般のキャストのレベルです。ディズニーのキャストとしての「試験」にも合格しています。苦情の初期対応もできます。
さて、お客様とじかに接する現場職員は、サービス業の最前線で働く人たちといえます。
民間のサービス業では当たり前の「鉄則」ですが、サービス業の最前線で働く人は「命令や報酬だけでは決して動かない」ということです。
このことを大前提とした上で企業は「どうすれば良いサービスを提供できるスタッフに育てることができるか」を考えるのです。
答えは1つではありません。
そして、「どうすれば他社より・・・」を競い合っているのが民間企業なのです。
他社に学び、全員が知恵を出し合い、社員一丸となって良いサービスを提供し続けている会社こそが「好感度が高い会社」「成功している会社」と言えるのです。
サービスに関しての考え方は「会社もいろいろ」でも良いのですが、公務員は「職員もいろいろ、接客力もいろいろ」では困ります。
郵政公社の「上司」の指導力が不足しているため、このような職員の格付け制度が考えられたとすれば、組織全体のモチベーションも上がることはないでしょう。
「上司」が最高のサービスや最高の接客(接遇)を学び、部下である職員を自ら教育していく、そして郵政公社が民間会社に移行したその日には、全ての職員が☆3つのバッジを付けている、その位大きな目標を掲げる。
民営化に向けては、このような「向上意識」が必要不可欠なのです。
改革は止めてはなりませんが、この改悪は止めるべきです。
「バッジで格付け」は決定されたものであるという報道ですが、今からでも遅くありません。
別な改善策を取り入れたほうが郵便局の窓口のサービスは確実に良くなる。そのことだけは間違いありません。
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2005年10月10日
郵政職員「バッジで格付け」は逆効果
posted by 株式会社外部の専門家 at 16:11 | メルマガ紹介