「課長 島耕作」で印象に残るシーン
今も連載している「社長 島耕作」はストーリーの緊張感を失って
だいう魅力が薄れているように思うけど、課長や部長の時代は まだ作者自身の体験などに基づいたものがあるようで、臨場感がある。 僕は社会人の7年目ぐらいに初めて「課長 島耕作」を読んだのだが、 おそらく学生時代なら感じえなかったであろう、しっくりとしたものがあった。 そんな課長時代の中で、おそらく作者自身の思いを
登場人物に述べさせている珍しいシーンがあり、 おおいに共感するところがあるので引用してみる。 以下は、課長の島耕作が、直接の上司である部長の中沢に相談をしているシーンである。
島と同じハツシバのある社員がプライベートの問題をネタに暴力団におどされているが、
その社員自身は会社の力を借りずなんとか自力で解決するといっている。 しかし、暴力団が要求している内容はハツシバにもかかわることであり、 一概に個人の問題とも言いきれないため、どう対処すべきか島は悩んでいる。
中沢は理想の上司として描かれており、ご都合主義的な展開も多いこの漫画の中で、
この場面では珍しく気骨のある言葉を聞ける。 もちろんこの場合は個人だけの問題ではなく会社に影響のあることだから、
会社の都合を優先させるなら、強引にでも介入するというのも一つの手だと思う。 その判断はその判断で間違いだといえないだろう。 しかし、心からその社員のことを思いやるのなら、
会社に何か悪影響があったときは自分が責任をかぶる覚悟で その社員に対処を任せるのがよいと思う。 もし相談されたとしたらできる限り力になった方がよいが、 相談するかしないかも本人の意思が最大限に尊重されるべきだろう。 そういう意味で、中沢の対応には好感が持てる。 「心配している」とさえいえば人の都合など関係なしに口出しをしても許され、
しかも感謝されて当然だと思っているかのような人が多い昨今の風潮には、 個人的に違和感を覚えることが多い。 時には図々しさや下品さを感じてうんざりすることもある。 相手が精神的にも経済的にも自立した人間であるならば、 「心配してもらえるのはありがたいですが特にあなたの助けは必要ありません」と はっきりと意思を示されたなら、あとは自己責任なのだから、 口出しを控える遠慮が大事だと思うけどね。 |