トップページ > なっとく法律相談 > 仕事中、作業車を破損。修理費を給料から天引きできる?
なっとく法律相談 2005年12月13日 更新
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造園会社に勤務しています。先日、元請けの会社から依頼された仕事で、移動式クレーン車を運転していたところ、クレーンのブームが折れてしまいました。クレーンの先に吊るした擁壁が重すぎたようです。
クレーン修理代金として、勤務先に70万円が請求されました。そして、会社は私に半額の35万円を請求してきました。「来年の給料から分割で天引きする」というのですが、私に支払義務があるのでしょうか?
(30代:男性)
請負契約に伴い、元請会社が下請会社に仕事に必要な工具を提供した場合、当該仕事に適した工具が適切に提供されていたか、すなわち故障や瑕疵のないものが提供されていたかが、まず問題となります。
元請会社が下請会社に貸し与えた工具が、元請会社の故意・過失により不十分な性能しか備えていなかったものであった場合、そもそも下請会社に責任は発生せず、したがって、あなたが会社から請求を受けることもありません。かえって、元請会社が下請会社に損害を賠償しなければならない可能性があります。
一方、工具に仕事の遂行に十分な性能があり、かつ瑕疵もなかったが、下請会社の使用方法が不適切で工具が破損した場合には、下請会社は損害を賠償しなければなりません。
今回のご相談では、それが70万円だということですが、その一部分を労働者に求償することは、原則としてできない、と考えます。
労働者と使用者は雇用契約を結んでいて、その契約に従って、あなたは労務を提供し、会社は労働環境を整え、賃金を支払います。契約当事者としての権利義務を負うことは、普通の契約と同じであり、不法行為により相手方に損害を与えた場合に不法行為責任を負うことも同じです。
しかし、労働者が正当な方法で労務を提供したにもかかわらず、結果的に損害が発生した場合にまで労働者に責任を追及できるとすると、社会的弱者である労働者は、安心して労務の提供をすることができなくなります。
したがって、会社はあなたに賠償責任の半分を負担させることはできないと考えます。
また、会社があなたに損害賠償責任を追及できるような場合でも、損害金を給料から天引きすることは許されません。
労働基準法は「全額支払いの原則」を定めており(労働基準法24条)、労働者の生活の資である賃金は、その期間分(月給制なら1ヶ月分)を全額労働者に支払わなければならないとされています(ただし、税金や、労使協定で定められたものについてはこの限りではありません)。
その場合、会社は一旦賃金を支払い、損害については労働者に別途請求するか、労働者の同意を得て賃金から差し引くことになります。
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