現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. 社説

社説

朝日新聞社説のバックナンバー

 大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去90日分の社説のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。

2012年9月9日(日)付

印刷用画面を開く

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

防災基本計画―脱原発と歩調あわせて

国の中央防災会議が、福島第一原発の事故を踏まえて防災基本計画を修正した。これを受けて、原発周辺の各自治体や電力会社は、それぞれの防災計画の見直し作業を本格化する。[記事全文]

スペイン支援―ギリシャ危機を教訓に

政府債務とユーロの危機にまつわる難問の山をバカンス明けに先送りしてきた欧州に、「試練の9月」がやってきた。差し迫った課題は、国債金利が高止まりしているユーロ圏第4の大国[記事全文]

防災基本計画―脱原発と歩調あわせて

 国の中央防災会議が、福島第一原発の事故を踏まえて防災基本計画を修正した。

 これを受けて、原発周辺の各自治体や電力会社は、それぞれの防災計画の見直し作業を本格化する。

 一方、野田政権は今週中にも将来の原発ゼロを目指すエネルギー戦略を正式決定する。今後は、危険度やコストを見計らいながら、閉める原発を選別していく作業となる。

 防災計画は、こうした脱原発への工程と整合性をとって進めていくことが必要だ。

 新たな防災基本計画は、国会などの事故調査委員会が指摘した問題点を反映させた。

 複合災害や過酷事故が起きることを前提に、広域避難に必要な手順の詰め▽役割分担の明確化▽訓練やチェックの徹底、などをさだめている。

 緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)の分析結果についても、新しくできる原子力規制委員会が速やかに公表することが明記された。

 いずれも当然の措置であり、むしろ決定が遅かったほどだ。

 対策を準備しておくべき地域は、原発の8〜10キロ圏内から30キロ圏内へと拡大される。

 問題は、現実的な防災計画が立てられるかだ。

 東海第二原発(茨城県)の周辺人口は約107万人、浜岡原発(静岡県)は約94万人に及ぶ。一斉避難は不可能だ。

 かたや過疎地も、幹線道路が1本しかなく、地震や津波による遮断や冬季の凍結が懸念される地域が少なくない。

 こうした地域についてはむしろ、廃炉を考えるべきだ。

 原発の運転期間は稼働から40年を厳守することも決まっており、ここ数年で寿命を迎える原発もある。

 ただでさえ、防災を名目にした公共事業予算の膨張が懸念されている。

 多大な負担を強いて防潮堤や道路をつくるより、原発依存から脱却した後の地域の立て直しや新しい産業の育成に力を注いだほうが効果的なケースも出てくるだろう。

 もちろん運転を止めても、当面、燃料棒や核汚染物質は残る。施設や設備が完全に撤去されるまで事故のリスクがある。油断は禁物だ。

 だが、危険の種類や度合いが変われば、対策の立て方も違ってくるはずだ。

 政府は脱原発政策の具体化として、古い原発や危険のある原発を仕分けする作業を急ぎ、防災計画を実効性のあるものにしなければならない。

検索フォーム

スペイン支援―ギリシャ危機を教訓に

 政府債務とユーロの危機にまつわる難問の山をバカンス明けに先送りしてきた欧州に、「試練の9月」がやってきた。

 差し迫った課題は、国債金利が高止まりしているユーロ圏第4の大国スペインの危機が本格化するのを防ぐことだ。

 欧州中央銀行(ECB)はスペインなどの問題国を対象に、返済期間1〜3年の国債を無制限で買い入れることを決めた。当事国が欧州金融安定化基金(EFSF)や、その後継組織の欧州安定メカニズム(EMS)に、財政再建を約束して支援を求めることが条件だ。

 ドイツは「中央銀行による加盟国の財政支援につながる」と反対した。しかし、欧州では信用力の高い北の国々で金利が低い一方、苦境にある南欧諸国の金利が高い。この乖離(かいり)が広がれば金融政策が効かなくなる、という理屈でドラギECB総裁が押し切った。

 これは、対象国債の利回りを一定限度内に抑えるよう買い支える含みを持つ。

 ギリシャ処理が失敗した最大の要因は、国債相場の暴落で政府の調達金利が高騰し、いくら緊縮財政に取り組んでも実体経済が収縮するばかりで、財政再建につながらない悪循環を許したことにあった。

 スペインはギリシャの5倍の経済規模を持つ。炎上すれば、スペインの1.5倍あるイタリアへの延焼も避けられない。ギリシャ支援のような行き当たりばったりの失敗を繰り返すわけにはいかない。

 これまでギリシャやアイルランドなどの小国は、政府の資金繰りがつかなくなって欧州連合(EU)に助けを求めたが、大国の場合は追いつかない。

 今回、ECBとEFSFなどが連携して、問題国の国債消化を助けながら財政再建につなげる選択肢を整えたことは評価できる。

 スペインは銀行救済でもEUから1千億ユーロ(約10兆円)規模の支援を取り付けている。支援する側の資力も限られる以上、問題を整理して迅速な対策を打ち、最大の効果を引き出すように工夫したい。

 国債市場が安定すると、問題国の改革努力が緩む危険性がある。今回の枠組みが、国内で不人気な緊縮財政や経済構造の改革を支援の条件にしているのはそのためだ。

 スペイン政府は、早急に国債買い入れ支援を要請すべきだ。足元の危機の広がりとギリシャのような悪循環に陥った場合の惨状を考え、先手を打つべく国民を説得してほしい。

検索フォーム

PR情報

朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介