(cache) 月刊 現代農業2012年10月号 「ヤマカワプログラム」誕生物語
月刊 現代農業
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●巻頭特集 畑の耕盤攻める守る

巻頭写真

水はけが悪い原因とされる畑の耕盤。
なくそうとして攻めるか、
それとも、むしろ守るか。

耕盤が消える!?
「ヤマカワプログラム」誕生物語

帯広市愛国町・藪田秀行さん

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 約2町歩の畑で年間約100品目の野菜を、無農薬・無化学肥料でつくる帯広市の藪田秀行さん。自然栽培の世界では知る人ぞ知る農家なのだが、じつは藪田さんは「ヤマカワプログラム」の名付け親だ。

耕盤層の土を煮たスープ。
これを「土のスープ」と名付けたのも藪田さん 藪田秀行さん(55歳)。手に持っているのが耕盤の土
耕盤層の土を煮たスープ。 これを「土のスープ」と名付けたのも藪田さん 藪田秀行さん(55歳)。手に持っているのが耕盤の土

「チッソ肥料と耕耘をやめれば、病害虫も雑草も、それほど問題にはならない」という藪田さんだが、唯一困っていたのが畑の排水性だった。栗山町のように粘土質の土壌ではないが、厚い耕盤層があって、雨が降ると停滞水が発生した。化学肥料と耕耘をやめて土も軟らかくなったが、赤土のところは耕盤層が厚かったのか、水はけが悪いままだった。棒を刺しても20〜30cmで必ず止まったという。

 3年前、サブソイラなどで物理的に改善するしかないと指導されていた矢先に、山川さんから提案されたのが3点セットの散布だった。

 その提案はあまりに突飛だった。最初はわけもわからず、指示されるがままに山川さんと耕盤の土を掘り出して、3点セットを散布したそうだ。

 ところが散布して5日後、試しに棒を挿してみるとスーっと入っていく。そしてその2日後、研究機関で土壌の物理構造を検査してもらうと、耕盤層のマクロ間隙が大幅に増えていることがわかった(図)。「いったい何をしたんだ」と驚かれたという。

藪田さんの畑の物理的構造の変化
耕盤層のマクロ間隙が増えていることがわかる。耕盤がやわらかくなった!?
藪田さんの畑の物理的構造の変化

 それから、近くの畑が水没するような雨が降っても、藪田さんの畑では数時間で水が抜けるようになった。約40坪のハウスでは、試しに毎時1t以上の水を30時間かん水し続けたことがあるが、すべて抜けていった。以前、かん水するとしばらくハウスに入れなかったのとは大違いだ。

 今では、自分の体験談として、講演会などに呼ばれるたびにヤマカワプログラムを紹介している。栗山町の島田さんが聞いたのも藪田さんの話だ。

 ヤマカワプログラムは「堆肥などで微生物を増やしてきた畑では結果が出やすいが、微生物が少ない畑では結果が出にくい」と、山川さんは成功率を約7割だとみている。藪田さんはというと、「信じてやれば効果はある」と思っている。たとえ効果がなかったとしても何十万もする機械を買うわけではない。本当に困って藪田さんを訪ねてくる人には、やり方を丁寧に教えている。

「ヤマカワプログラム」とは…

材料は、耕盤の土を煮出した液と酵母エキス、光合成細菌。この3点セットを3000倍に薄めて10a100リットル散布することで「耕盤が消える」(正確には、硬く締まった耕盤に微少な隙間ができる)という方法。北海道を中心に実践する農家が増えつつある。酵母エキスは、酵母菌を培養してアミノ酸やミネラルを抽出したもの で、微生物の培養によく使われる。光合成細菌も特別な菌ではないので、3点セットは自分で手作りすることもできる。

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2012年10月号
この記事の掲載号
現代農業 2012年10月号

特集:畑の耕盤攻める守る
ヤマカワプログラムの現場/土ごと発酵で耕盤はどうなか/液肥を自分で作る2/苗に亜リン酸/太陽熱処理/ミミズ糞/緑肥活用でここまで減肥/肥料をうまくまく機械・道具/小ウネ立て播種/共生菌で、病気に強くなる、増収する/家畜糞+αで売れる堆肥・肥料/放射性セシウムとカリ肥料 ほか。 [本を詳しく見る]

光合成細菌とことん活用読本 光合成細菌とことん活用読本』農文協編

熱帯魚屋さんなどで目にする水質改善などと書かれた赤い液体,それが光合成細菌の菌液だ。高価な菌だが,田んぼや沼などの泥から採取でき,自分で培養できる技術が広がるようになって,液肥に堆肥つくりに,消臭などに広く,その菌液パワーが大きな話題を呼んでいる。最近,光合成細菌が放射性物質を吸着するや海までも浄化する力をもっていることが報告され,これまでの農業や廃水浄化などの分野を超えて注目を集めている。この本は,光合成細菌の素顔,高価な元菌を自分で採取・増殖する技,使い方まで集大成。巻末論文は必見! [本を詳しく見る]

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