帰化した元在日韓国人に国家賠償命じる=ソウル中央地裁

 日本国籍を取得した元在日韓国人Hさん(69)が「1970年代、中央情報部(KCIA)=現・国家情報院=に連行され、拷問を受けた」として、韓国政府を相手取って起こした訴訟で、ソウル中央地裁民事25部(李元中〈イ・ウォンジュン〉裁判官)は4日「政府はHさんに対し、慰謝料3000万ウォン(約210万円)を支払うように」との判決を下した。

 外国の国籍を取得した人への、韓国国籍を保持していた当時の韓国政府による違法行為に対し、裁判所が国家の賠償責任を認めたのは、今回が初めてだ。

 政府側は「Hさんは2006年、日本国籍を取得し『外国人』となっており、外国人に対する国家賠償は、該当する国家と相互の保証がある場合だけに適用される。日本と韓国は国家賠償についての相互の保証がないため、Hさんが起こした訴訟は適法ではない」と主張したが、地裁はこれを受け入れなかった。

 地裁は「Hさんに対する国家の違法行為は、Hさんが韓国国民だったときに発生した。Hさんが韓国国籍を喪失したからといって、国家賠償請求権が喪失したとはいえない」と判断した。さらに地裁は「国家権力による拘禁や拷問が組織的に行われたという点、Hさんが無罪判決を受けた後、刑事補償を請求していない点、通貨の価値の変動などを考慮し、慰謝料を3000万ウォンに設定した」と付け加えた。

 Hさんは1943年に日本で生まれ、大阪大学に通った後、73年にソウル大医学部に入学したが、75年にソウル大病院の寮(ソウル市鍾路区蓮建洞)から、中央情報部の捜査官らによって令状もないまま連行された。捜査官らはHさんを棒で殴り、Hさんはうその自白を余儀なくされた。検察は同年12月、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)から資金援助を受け、対南(韓国)赤化統一のために活動する「韓国民族自主統一連盟」に加入して、韓国の国家機密を収集し、外部に漏えいしたとして、Hさんを起訴した。

 一審でHさんは実刑判決を受けたが、大法院(日本の最高裁判所に相当)で無罪が確定した。

ソン・ウォンヒョン記者
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