[いじめ総合対策]社会全体で子の命守れ

2012年9月7日 09時50分
(27時間47分前に更新)

 大津市で中2男子が自殺した問題などを受けて、文部科学省がいじめ問題の総合対策をまとめた。すでに打ち出していたスクールカウンセラーの増員などを含み、学校や児童生徒を支援する専門家組織の設置を目玉に、包括的な取り組みが並ぶ。

 平野博文文科相は、学校や教育委員会まかせだった従来の対応について「踏み込みが足りず、対症療法的な対策に終わっていた。国も受け身になっていた」と陳謝、国主導でいじめ問題に取り組む決意をあらためて表明した。

 出はなをくじくつもりはないが、国主導の対策は、遅きに失した感が否めない。20年を超える教育課題であり、社会問題で、命を自ら絶った子供たちも少なくない。今更反省されても、いじめで苦しむ当事者の傷は癒えない。政府は猛省の上、子の命を守る責任を肝に銘じてほしい。

 いじめは、単なる子ども同士の問題ではなく、教師や学校との関係、子どもの家庭環境など複雑な要素が絡み合っている。それだけに、対策も一筋縄ではいかず、複合的な対応が重要だ。

 今回発表されたいじめ対策は大別して、外部の人材を活用した支援体制のほか、早期発見・早期対応、未然防止策、教員研修の充実が柱だ。

 特に、外部専門家による支援チーム(全国200地域)の設置や各種カウンセラーの拡充など、教師や学校、教育委員会を孤立させない工夫が目立つ。依然、教育現場の責任は重いが、新たに弁護士や元警察官らの専門的知見を総動員する体制を敷いている。

 政府が今回、重い腰を上げた背景には、若年者の自殺増加がある。国内の自殺者は、中高年男性の自殺死亡率が低下する半面、20歳未満は2011年に622人となり、わずか1年で約11%、70人増加している。

 こうした状況に政府は8月、自殺総合対策大綱を見直し、いじめ自殺の対応を主要な取り組みに格上げした。若者の自殺が社会全体の損失と重く受け止め、今回の総合対策に結び付いている。

 今夏、全日本教職員組合が開いた教育研究全国集会では現役高校生が「いじめをなくしてと、無理なお願いはしません。いじめられている子を見つけるセンサーの感度を上げて」と訴えた。

 保身から、いじめを見て見ぬふりしたり、報告しない現場であってはいけない。学校現場、政府と責任を押し付け合う悪癖を改め、社会全体の責任として若い命を守る取り組みを広げるときだ。

 県教育庁による2010年度の統計では、県内小中高校でのいじめや暴力行為は前年度より減少している。一方、県立高校の11年度暫定値では暴力行為が増加。県警に寄せられた12年7月末のいじめは前年同期より増えている。

 いじめの認知は容易ではなく、統計の数値だけが現状を示していると考えるのは早計だ。県も国の施策を積極的に取り入れ、きめ細かに子どもたちの現状を把握できる学校現場と、子どもの健やかな成長を促す支援体制を築けるよう努力してほしい。

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