ダブル党首選 自民、ちらつく首相の座 民主、首相一転ピンチに
産経新聞 9月7日(金)7時55分配信
「次の首相」につながる2つの党首選挙をめぐる動きが激しくなってきた。混戦模様の自民党総裁選(14日告示、26日投開票)では合従連衡の動きが活発化。野田佳彦首相の再選は動かないとみられていた民主党代表選(10日告示、21日投開票)は、細野豪志環境相の登場で風雲急を告げている。
■安倍・石破氏「同床異夢」 谷垣氏 推薦人確保、石原氏は…
今回の自民党総裁選は、単に党の代表者の座をかけた戦いにとどまらない。次期衆院選で自民党が比較第一党になれば、新総裁が「内閣総理大臣」に指名される可能性が高まる。それだけに、各立候補予定者とその支持者たちに安易な妥協は許されない。
6日、国会内で開かれた領土や安全保障に関する勉強会には安倍晋三元首相と石破茂前政調会長がそろって出席した。外交・安保政策に関するスタンスが近い2人の連携の可能性を探る会合だったが、両氏への質疑応答が始まると、会場は一瞬のうちに凍りついた。
「石破先生はその時その時で発言を変えていないか。大局観があってのことか極めて疑問だ!」
安倍氏の側近、衛藤晟一参院議員が、集団的自衛権行使をめぐる石破氏の発言を聞くやいなや、激しくかみついた。
石破氏が靖国神社への参拝について「非常に微妙な問題だ。天皇陛下がご心配なさっていることがある」と持論のA級戦犯分祀(ぶんし)論をにおわせた際も、安倍陣営の出席者の間に不穏な空気が流れた。連携への布石どころか、両陣営の同床異夢の実態が浮き彫りとなる結果に。勉強会の実現に奔走した石破陣営の幹部は「会合の出来は50点だ」と肩を落とした。
もう一つ、連携の可能性を模索しているのが、現執行部の谷垣禎一総裁と石原伸晃幹事長だ。
石原陣営は5日夜の両陣営幹部の協議で「安倍氏や石破氏を当選させるわけにいかない。総裁が出るなら必勝態勢が必要だ」と、暗に谷垣氏の出馬辞退を要請した。しかし、谷垣陣営は「出馬に必要な推薦人20人は集めた」と反発。協議は平行線をたどった。
最大派閥も揺れている。町村派の実質的なオーナーでもある森喜朗元首相は6日午後、衆院本会議場の出口で安倍氏を呼び止め、重く低い声でこう忠告した。
「首相までやったあなたが、2位や3位になったら格好がつかないぞ」
そこに通りかかったのが、派閥会長で総裁選出馬に意欲を示している町村信孝元官房長官。森氏は2人に「明日にはきちんと話をつけろ!」と命じた。2人は「わかりました」と応じるほかなかった。
古賀派の総会では、中谷元政調会長代理や小里泰弘衆院議員が「総裁を降ろす理由がない」と、谷垣氏への援護射撃を試みた。小里氏は、同派に所属する林芳正政調会長代理が出馬に意欲を見せていることを念頭に「林先生も尊敬しているが本筋を見極めてほしい」とも訴えたが、古賀誠元幹事長は「はい、終わります」と不快感をあらわにした。
いずれの連携話も成就の見通しは立っていないが、混戦のままでは勝機は見通せない。ある幹部は「勝つことより参加することに意義がある」という近代オリンピックのスローガンを引き合いにこうぼやいた。
「オリンピックになっちゃいけないしな」(小島優、水内茂幸)
■“選挙のイケメン”どっち 41歳の細野氏、最年少首相狙う
無風から一転、首相交代の可能性すら出てきたのが民主党代表選だ。細野豪志環境相という現職閣僚が出馬の意向を固めたことで、野田佳彦首相は寝首をかかれかねないピンチに陥っている。ただ、2人には政策的な違いはほとんど見当たらない。「いろんな意味で唯一の争点は『顔』」(中堅)と揶揄(やゆ)する声も上がる。
「最も重要なのは福島のために何ができるかに尽きる。慎重な気持ちは今も変わっていません…」
細野氏は6日、有志議員からの出馬要請を自らの衆院議員会館の事務所で受け、慎重な受け答えに終始した。だが、この言葉を額面通りに受け取る向きは少ない。実際、細野氏はあえて報道陣を入れて「民主党は苦しい立場にある」とも発言。自らが「選挙の顔」にふさわしいとの自負をにじませた。
細野氏の強みは敵の少なさ。かつては小沢一郎・現国民の生活が第一代表の側近と言われていた時代もある。6日の出馬要請も、前原誠司政調会長グループの小川淳也政調副会長、菅直人前首相グループの阿久津幸彦衆院議員、鹿野道彦前農林水産相グループの中山義活元経済産業政務官らから受け、党内各グループを網羅する勢いを見せる。
41歳と若い細野氏には、55歳の首相からの「世代交代」という旗印もある。
これに対し、ベテラン勢は巻き返しに懸命だ。
「(細野氏は)原発対応という重要な役目を担っている。けじめをつけるべきだ」。城島光力国対委員長は6日、記者団にこう語った。前原氏も自らのグループ会合で、「民主党で4人目の首相はあり得ない。私は首相を支える」と訴えた。
細野氏に死角があるとすれば、野田内閣の一員ながら、出馬の意向を固めたことへの批判だ。細野氏は首相とともに原発再稼働を主導、消費税増税や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)でも首相と共同歩調をとってきた。
結局、細野氏の出馬は、次の選挙に不安を抱える中堅・若手議員が細野氏の「見た目の良さ」にすがろうとする思惑と、「史上最年少首相」を狙う細野氏の思いが一致した結果にすぎないともいえる。首相の再選を支持するある議員は今回の代表選をこう嘆く。
「選挙で一人でも多く生き残るために現職閣僚が代表選に出るなんて大義がない。結局は顔なのか…」(斉藤太郎)
【用語解説】自民党総裁選
総投票数は500票。内訳は衆参両院の副議長を除く国会議員200票、地方票300票。地方票は全都道府県連に基礎票として3票ずつ付与し、残りの159票を所属党員・党友数に応じて配分。これを都道府県連の事前投票の得票に応じて各候補に比例配分する。1回目の投票で過半数を得る候補者が出なければ、上位2人が国会議員だけで実施される決選投票を戦う。
【用語解説】民主党代表選
1231ポイントを争う。衆参両院の国会議員(1人2ポイント)に672ポイント、党員・サポーターに409ポイント、地方議員に141ポイント、公認候補予定者に9ポイントが割り振られる。党員・サポーター票は都道府県別、地方議員票は全国集計で、それぞれドント方式により候補者に配分。過半数を得る候補者がいなければ、上位2人が国会議員各2票、公認候補予定者各1票による決選投票で争う。
最終更新:9月7日(金)10時1分
- 野田佳彦(のだよしひこ)
-
- 所属院 選挙区 政党:
- 衆議院 千葉県4区 民主党
- プロフィール:
- 1957年5月20日生 初当選/1993年 当選回数/5回
- (写真提供:時事通信社)
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