「RAILWAYS 愛を伝えられない人たちへ」(蔵方政敏初監督)の
主役三浦友和さんが演じた滝島徹役は、
定年を一ヶ月後に迎えた富山地方鉄道の運転士。
今年一月に60歳=還暦になった友和さんにとって
年齢的には等身大の作品だ。
リラックスした演技で実に説得力があった。
実直で真面目、だが、ちょつとだけ後輩からすると謎があり、
妻からすると昔ながらの頑固な男のイメージ。
そんな普通の男をフツーの雰囲気で
味わい深く演じるのは流石この道40年を越えたベテラン。
70年代二枚目の青春スターとして登場し
映画デビューは74年「伊豆の踊り子」で山口百恵さんと共演。
以後名コンビとしても数多の作品がある。
80年代、90年代と現代にいたるまで
コンスタントに映画やテレビ等に出演。
(仕事ぶりをピックアップしてもきりがないので省略させていたたいて)
団魂世代にとっては、ずっと見慣れている存在で、
ともに年を重ねている自分たちの鏡のような役者だ。
勿論いろいろな役をこなして楽しませてくれているが。
大きな違いは80年にあの百恵さんを結婚を期に引退させてしまった
ファンにとっては罪深き男でもある。
一方、美男美女好きは口をそろえて
「彫刻のようでジャン・マレーのような美男! 」と讃える。
その美しさを鼻にかけず
むしろ三枚目風な抜いた雰囲気をいつもさりげなく醸し出す。
それも魅力。
「ALWAYS 三丁目の夕日64」の町医者の役も
出番は少なくても品よくインパクトがある。
将来はきっとカッコいいお爺さんになるんだろうなァ。
世代を代表して頑張って欲しい!
大竹しのぶは、新藤兼人監督の同志でパートナーだった乙羽信子の亡き後、
「生きたい」「ふくろう」
「石内尋常高等小学校 花は散れども」のヒロインとして、
献身的に新藤作品を支えてきた。
それだけでも賞賛に値するが、
新藤監督が人生最後の作品と公言した「一枚のハガキ」では、
戦争未亡人の悲しさや切なさを見事に演じ切り、戦争の愚かさを訴え、
女性の生命力を讃美してきた新藤映画の集大成ともいえる感動作になった。
戦争末期に召集された松山啓太(豊川悦司)は、
戦友の森川から一枚のハガキを託される。
戦争が終わって運よく生き残った啓太は、ハガキを持って、
戦死した森川の妻・友子(大竹しのぶ)を訪ねていく。
啓太をもてなす友子は、ハガキを受け取って後ずさりし、
柱を叩きながら
「あんたは、どうして生きとるん。なんで死なないんじゃ」と、
夫を奪った戦争の不条理を訴える。
その演劇的な長回しの緊迫感と、
友子が憑依したような大竹しのぶの熱演に胸が痛くなるほど圧倒された。
大竹しのぶは、1975年に公開された浦山桐郎監督の「青春の門」で
不幸な少女・織江役に抜てきされ、大型新人として脚光を浴びた。
その後の活躍はここで詳しく触れるまでもないだろう。
映画は演技賞の常連だし、
日本を代表する女優の1人としてテレビや舞台でも実力を発揮。
あどけない表情や、独特のおっとりした口調の反面、
内に秘めている強さや激しさに見る者の感情移入を誘う魅力があり、
聖女も悪女も大胆にこなす演技力が際立っている。
これから円熟期に入ってどんなキャラクターを見せてくれるのか、
大竹しのぶから目が離せない。
藤沢周平原作8作目の映画化である『小川の辺』(篠原哲雄監督)で、
主演の東山紀之と2度に渡って格調高い大立回りを演じた片岡愛之助は、
大阪府出身の人気歌舞伎俳優。
9歳で先代の片岡仁左衛門の部屋子となり京都南座で初舞台をふむ、
平成4年に当代の片岡仁左衛門の兄・片岡秀太郎の養子となって
六代目片岡愛之助を襲名した。
平成6年には名題に昇進。
今や毎月、東京、名古屋、大阪、京都の各劇場で立役から二枚目、
そして時には女方までこなす活躍ぶり。
ファンからも“らぶりん”と呼ばれてる人気者だ。
映画出演はまだ少ないが、
『小川の辺』では東山ふんする主人公・戌井朔之助の親友で、
妹・田鶴(菊池凛子)の夫でもある
同僚の海坂藩士・佐久間森衛という剛直な侍の役。
正義一筋の佐久間は藩主のずさんな農政を
真っ向から批判して藩主の怒りをかい、
処分を待つ前に夫婦で脱藩し姿を消した。
藩は何度か討手を送るが誰も佐久間には歯が立たない。
そこで互角の腕を持つ朔之助に非情な藩命が下ったのだが、
勝気な妹は兄と共に剣を学び腕も立つ。
いざとなれば夫の為に兄にも刃を向けるだろうと悩む朔之助に、
父(藤竜也)は主命に従うのが武士の道だという。
江戸までの100里の旅のあと、妹夫婦が隠れ住む小川の辺をつきとめた。
幸い田鶴は留守だったが「やはり……おぬしだったか」と、
佐久間は病床から起き上がって外へ出てくる。
小川の辺での決闘シーンは一見静かだが
気迫にみちみちて観客に固唾を飲ませ、迫力満点。
共に舞台経験が多く、洋と和の違いはあっても
踊りの素養のある二人の動きは流れるように
美しく格調高く観客をひきつける。
これからもまた“らぶりん”の姿を
スクリーンの中でぜひ見たいと願っている。
片道15分のローカル線阪急今津線を舞台にした
ヒューマンドラマ「阪急電車」。
7人の女性の乗客と1人の男性乗客を描いたもの。
車内の人々の人間模様が巧みに描かれていて
日常の一風景として見られるのが良い。
彼女が演じるのは、うざいおばちゃん世代の一人で、
中谷美紀扮する婚約者を寝取られた女の話をきてあげる。
この役を気張らずにきっちりと演じていて素晴らしい出来栄えである。
1963年文学座の「日本春歌考」でデビュー、
84年には伊丹十三監督の「お葬式」で
日本アカデミー賞の主演女優賞を受賞した。
87年にも伊丹作品「マルサの女」で再び受賞、
その高い演技力は絶賛された。
その他主な作品として、
「眉山」「あ・うん」「あげまん」
「ミンボーの女」「スーパーの女」「マルタイの女」と
夫でもあった伊丹作品が多い。