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'12/8/12

取り戻せ大麻草の文化 生産者や職人らで振興会発足


 「麻薬を作り出す大麻草」ではなく、天皇の即位儀礼に使われる織物や大相撲の横綱が締める綱の素材にもなる麻の文化的な活用方法を広めたい―。生産量日本一の栃木県で7代目麻農家大森由久おおもり・よしひささん(63)が呼び掛け、日本麻振興会が発足した。全国の麻工芸職人や生産者ら約1500人が参加。大森さんは「産業用大麻草の文化と伝統を取り戻す第一歩」と意気込む。

 振興会がこの夏、栃木県で開いた初の催しでは、麻の活用例として、白鵬関が締める綱や新潟県の大凧合戦で24畳のたこを支える綱、長野県の畳糸、愛知県の和太鼓が紹介された。「麻は日本文化と密接な関係を持つ作物。栽培に誇りを持っているが麻薬ばかり連想されるのは悔しい」と大森さん。

 栽培は毎年免許の更新が必要で、麻薬密造を防ぐため新規参入は認められにくい。厚生労働省によると2010年の免許保持者は全国でわずか54人。このうち麻薬成分をほぼ含まない品種を開発した栃木県の農家が23人を占めるが、高齢で生産量も年々減っている。

 「このままでは日本の麻も伝統も残らない」。大森さんの危機感が振興会発足の出発点だった。「麻薬との切り離しが重要」と考え、大麻取締法違反者は即除名との規定も設けた。長野県のNPO法人理事長の風間俊宣かざま・としのぶさん(74)は、かつて地場産業を支えた信州麻の復活に05年から取り組んできたが、麻薬の悪印象が活動の障害に。「行政の意識は取り締まりに向くので栽培するにもハードルが高い。振興会を通じ技術を継承していきたい」と期待する。

 大森さんの下には、栽培法や精製を学びたい人、切れにくい高品質の麻を求める工芸家らが訪れる。「栽培を途絶えさせず、日陰の存在ではない、本来の価値を伝えたい」と力を込めた。




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