7月28日、ゲーム業界に衝撃が走った。任天堂が「ニンテ ンドー3DS(3DS)」の価格を、8月11日より現行の2万5000円から1万5000円に引き下げると発表したのだ。
まだ発売から半年もたっていないのに……いったい、なぜ? 人気ゲームブログ『オレ的ゲーム速報@ 刃(じん)』管理人のjin氏はこう分析する。
「売り上げ好調なゲーム機の場合、生産コストを抑えられるようになった1、2年後に値下げすることはよくあります。でも、3DSはそうではない。発売から半年弱での値下げなんて前代未聞ですよ。ほとんど利益度外視の値下げでしょう。3DSの6月末時点の国内販売台数は約130万台。でも、その数字は任天堂の予想を大幅に下回るもの。それだけ焦っているということでしょう」
かつて、ゲームキューブ(任天堂)が発売から約9ヵ月、ドリームキャスト(セガ)が発売から約7ヵ月で値下げしたが、3DSはそれらの記録を塗り替え、最速値下げ記録を更新したことになる。
「値下げ前の購入者からすれば、たまったもんじゃない(苦笑)。ファミコンやゲームボーイアドバンスの過去作品を無料で20本ダウンロードできるようにしてフォローするそうですが、個人的には、そんなレトロなゲームをいくつもらえたところで1万円分の価値はないと思う」(jin氏)
それにしても、嵐のテレビCMが大量に流されるなど、鳴り物入りで発売された3DSが販売不振なのはなぜか?
「買いたいソフトがない。これが一番の理由ですよ。任天堂は『マリオカート』など100万本をラクに狙えるシリーズを有しているのに、まだそれらが発売されてないですからね。『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』や『レイトン教授と奇跡の仮面』(レベルファイブ)は30万本ほど売れたようですが、そのほかはパッとしたソフトが見当たらない」(jin氏)
ライバル機と目されているソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のPSP(プレイステーシヨン・ポータブル)の後継機、「PS Vita(ヴィータ)」は年内中に発売とされているが、その価格が2万4980円(Wi-Fiのみのモデル)だと発表された影響もありそうだ。
「この価格は6月に発表されたんですが、SCEは完全に3DSをツブしにきていますね。PS3と同程度のスペックのPS Vitaがこの安さとは……。3DSとしては、PS Vitaが発売される前に少しでも販売台数を伸ばしておかなければという危機感があり、苦肉の策としての1万円値下げでしょう」(jin氏)
その任天堂の決算資料によれば、3DSは今年6月末までに全世界で430万台を販売済みとあり、さらに来年3月末までに累計1600万台販売という強気の予想を立てている。確かに、値下げは未購入者にとって朗報だが……。
「世界各国で日本と同程度の値下げを発表していますが、達成は難しいと思います。ニンテンドーDSやWiiは爆発的ブームを起こしましたが、3DSがそこまで売れるとは考えにくい。確かに、値下げは英断だと思いますし、状況が好転する目はあります。でも、最大のウリである裸眼3Dがユーザーからさほど求められていなかったことがわかってしまったので……」(jin氏)
そんな苦しい状況から王者・任天堂がどう巻き返してくるのか。人気シリーズはいつ投入されるのか。さらなる一手に期待だ。
(取材・文/昌谷大介)