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“プラチナバンド”開始から1か月、ソフトバンクモバイルは何が変わったか
2012年7月25日、ソフトバンクモバイルは同社の通信回線で新たに 900MHz 周波数帯、いわゆる“プラチナバンド”の運用を開始。あれからおよそ1か月が経過した。「繋がりにくい」という利用者の通信品質への不満を解消する同社の目玉施策として、運用開始前から大きな注目を集めたが、ソフトバンクの通信環境に変化は起きているのだろうか。
● ソフトバンクモバイルが社運を賭けた目玉施策
まず、改めて“プラチナバンド”についておさらいしてみよう。ソフトバンクが今回運用を開始した“プラチナバンド”とは、NTTドコモや KDDI が利用している700〜900MHz 周波数帯の一部で、従来ソフトバンクが運用してきた周波数帯(2GHz)よりも通信品質が良いと言われている。同社は、700〜900MHz 周波数帯の免許を持っていない点を他の2社に対する大きなハンデとして、この周波数帯の免許の取得を長年熱望してきたという背景があり、2012年2月に 900MHz 周波数帯の免許をついに獲得。同社にとって、“プラチナバンド”は念願の電波なのだ。
今年の夏商戦、ソフトバンクは広告や店頭などで“プラチナバンド”を全面に押し出したプロモーションを展開。「繋がりやすくなる」という“プラチナバンド”のメリットの訴求は多くの消費者の関心を呼んでいるようで、家電量販店の売り場の活気などを見ると関心度の高さを実感できるほどだ。
● インフラ整備は進んでいるのか 電波の改善は実感できず
しかし、この“プラチナバンド”の運用によって通信品質を向上させるためには、900MHz 周波数帯に対応した通信施設を整備するための巨額の設備投資が必要になり、そのメリットをユーザーに実感してもらうためには施策のスピード感も求められる。1か月で“プラチナバンド”の通信環境はどれほど整備されているのだろうか。
“プラチナバンド”に対応した端末を使用する筆者が、東京都港区にある編集部や、歩いてわずかの距離にある汐留エリア、新橋駅周辺、銀座などでネットを利用してみたが、残念ながら“変化”を実感できるほど通信電波の改善は体感できなかった。特に、ウェブの閲覧や YouTube の再生を試みたところ、ダウンロード速度そのものよりもダウンロードを開始するまでの遅延やダウンロード中に生じる待機時間は相変わらずという印象で、「以前のまま何も変わっていない」というのが実感だ。
では、実際に試した地点において端末は“プラチナバンド”に繋がっていたのか。iPhone 4S の電話機能で特定のコマンドを入力すると利用することができる“隠しメニュー”として知られている「フィールドテストモード」を使用して調べてみたところ、上述の4地点において、iPhone はいずれもソフトバンクが従来から提供している「2GHz」の電波を捉えており、結局どの地点でも“プラチナバンド”の電波を捉えることはなかった。
本来であれば、“変化”をユーザーに実感してもらうためには、繁華街など利用者が多く集まり電波がひっ迫するエリアから整備を進めるものだと考えたいところだが、残念ながらそういうわけではないようだ。販売店などでのプロモーションで感じた期待と、街中で電波の改善が実感できないという現実に、大きな矛盾を感じてしまう。
● インフラ整備は計画通り進むのか ソフトバンクの大きな課題に
ソフトバンクは“プラチナバンド”のインフラ整備の進捗について、“計画通り”なのか“遅れている”のかは、現在のところ明らかにはしていない。しかし、同社のウェブサイトによると、9月末までの間に首都圏の大部分で“プラチナバンド”のインフラ整備が完了する予定だとしている。
しかし、現時点で東京都心の更に中心部でも“プラチナバンド”による電波の改善が確認できていないという状況で、あと1か月足らずの間にこれだけの広範囲でエリア整備が完了するとは考えにくい。少なくとも、“プラチナバンド”と呼ばれる700〜900MHz 周波数帯を長年研究・整備してきた NTTドコモや KDDI に対して、わずか2か月程度で同等の品質の広範囲なインフラを整備していくという計画自体に無理があるのではないだろうか。
●新しい iPhone は“通信への不満”を解消しないままの船出か
“プラチナバンド”の開始から1か月。筆者を含めて、電波の早期改善を期待していた多くのユーザーは、“何も起きていないこと”に対して失望しているのかもしれない。そして、間もなく発表されると噂されている“次期 iPhone”についても、(公式なアナウンスはないが)順当にいけばソフトバンクから発売されると予想すると、同社は iPhone シリーズを利用する多くのソフトバンクユーザーが抱いていた“通信環境への不満”をついに解消することなく、新しい iPhone を提案していくことになる可能性が高い。時間を掛けて“プラチナバンド”を成熟の域まで整備してきた NTTドコモや KDDI が、既に次世代高速通信サービスの普及を進めている一方で、もしもソフトバンクのインフラ整備が遅々として進まないままであれば、今後ソフトバンクの通信環境に対するユーザーの不満はますます大きくなっていくに違いない。
だが、多くのソフトバンクユーザーの電波の改善に対する期待は依然として高く、ソフトバンクはまさに“社運”を賭けた通信インフラの整備を急ピッチで進めていく必要がある。ユーザーの期待値が高い分、その期待に応えなければ失望も大きくなる。今後ソフトバンクには、明確な“変化”を生み出すことが求められることになるだろう。
ソフトバンクが運用を開始した「プラチナバンド」の紹介ページ |
● ソフトバンクモバイルが社運を賭けた目玉施策
まず、改めて“プラチナバンド”についておさらいしてみよう。ソフトバンクが今回運用を開始した“プラチナバンド”とは、NTTドコモや KDDI が利用している700〜900MHz 周波数帯の一部で、従来ソフトバンクが運用してきた周波数帯(2GHz)よりも通信品質が良いと言われている。同社は、700〜900MHz 周波数帯の免許を持っていない点を他の2社に対する大きなハンデとして、この周波数帯の免許の取得を長年熱望してきたという背景があり、2012年2月に 900MHz 周波数帯の免許をついに獲得。同社にとって、“プラチナバンド”は念願の電波なのだ。
今年の夏商戦、ソフトバンクは広告や店頭などで“プラチナバンド”を全面に押し出したプロモーションを展開。「繋がりやすくなる」という“プラチナバンド”のメリットの訴求は多くの消費者の関心を呼んでいるようで、家電量販店の売り場の活気などを見ると関心度の高さを実感できるほどだ。
● インフラ整備は進んでいるのか 電波の改善は実感できず
しかし、この“プラチナバンド”の運用によって通信品質を向上させるためには、900MHz 周波数帯に対応した通信施設を整備するための巨額の設備投資が必要になり、そのメリットをユーザーに実感してもらうためには施策のスピード感も求められる。1か月で“プラチナバンド”の通信環境はどれほど整備されているのだろうか。
“プラチナバンド”に対応した端末を使用する筆者が、東京都港区にある編集部や、歩いてわずかの距離にある汐留エリア、新橋駅周辺、銀座などでネットを利用してみたが、残念ながら“変化”を実感できるほど通信電波の改善は体感できなかった。特に、ウェブの閲覧や YouTube の再生を試みたところ、ダウンロード速度そのものよりもダウンロードを開始するまでの遅延やダウンロード中に生じる待機時間は相変わらずという印象で、「以前のまま何も変わっていない」というのが実感だ。
では、実際に試した地点において端末は“プラチナバンド”に繋がっていたのか。iPhone 4S の電話機能で特定のコマンドを入力すると利用することができる“隠しメニュー”として知られている「フィールドテストモード」を使用して調べてみたところ、上述の4地点において、iPhone はいずれもソフトバンクが従来から提供している「2GHz」の電波を捉えており、結局どの地点でも“プラチナバンド”の電波を捉えることはなかった。
本来であれば、“変化”をユーザーに実感してもらうためには、繁華街など利用者が多く集まり電波がひっ迫するエリアから整備を進めるものだと考えたいところだが、残念ながらそういうわけではないようだ。販売店などでのプロモーションで感じた期待と、街中で電波の改善が実感できないという現実に、大きな矛盾を感じてしまう。
● インフラ整備は計画通り進むのか ソフトバンクの大きな課題に
ソフトバンクは“プラチナバンド”のインフラ整備の進捗について、“計画通り”なのか“遅れている”のかは、現在のところ明らかにはしていない。しかし、同社のウェブサイトによると、9月末までの間に首都圏の大部分で“プラチナバンド”のインフラ整備が完了する予定だとしている。
赤く塗られたところが9月末までに“プラチナバンド”に対応する予定というエリアなのだが・・・ |
しかし、現時点で東京都心の更に中心部でも“プラチナバンド”による電波の改善が確認できていないという状況で、あと1か月足らずの間にこれだけの広範囲でエリア整備が完了するとは考えにくい。少なくとも、“プラチナバンド”と呼ばれる700〜900MHz 周波数帯を長年研究・整備してきた NTTドコモや KDDI に対して、わずか2か月程度で同等の品質の広範囲なインフラを整備していくという計画自体に無理があるのではないだろうか。
●新しい iPhone は“通信への不満”を解消しないままの船出か
“プラチナバンド”の開始から1か月。筆者を含めて、電波の早期改善を期待していた多くのユーザーは、“何も起きていないこと”に対して失望しているのかもしれない。そして、間もなく発表されると噂されている“次期 iPhone”についても、(公式なアナウンスはないが)順当にいけばソフトバンクから発売されると予想すると、同社は iPhone シリーズを利用する多くのソフトバンクユーザーが抱いていた“通信環境への不満”をついに解消することなく、新しい iPhone を提案していくことになる可能性が高い。時間を掛けて“プラチナバンド”を成熟の域まで整備してきた NTTドコモや KDDI が、既に次世代高速通信サービスの普及を進めている一方で、もしもソフトバンクのインフラ整備が遅々として進まないままであれば、今後ソフトバンクの通信環境に対するユーザーの不満はますます大きくなっていくに違いない。
だが、多くのソフトバンクユーザーの電波の改善に対する期待は依然として高く、ソフトバンクはまさに“社運”を賭けた通信インフラの整備を急ピッチで進めていく必要がある。ユーザーの期待値が高い分、その期待に応えなければ失望も大きくなる。今後ソフトバンクには、明確な“変化”を生み出すことが求められることになるだろう。
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