ワシントン条約で絶滅のおそれのある野生動植物やその製品は、許可なしに輸入することはできません。これに違反した場合、空港や貿易港の税関は、「関税法」に基づいてその輸入を差止めることになっています。このようなケースは毎年1500件前後にもなります。海外旅行のおみやげにといって、ワシントン条約違反とは知らずに装飾品や漢方薬などを持ち帰るケースもありますが、日本での販売を目的に業者密輸するケースも少なくありません。
象牙の国際商業取引はワシントン条約で原則禁止されています。それにもかかわらず日本への象牙は後を絶ちません。密輸象牙はほとんどアフリカゾウの牙で、多くはアジアの国々を中継して飛行機や船で運ばれます。つまり一件の密輸事件の背後には、アフリカでの密猟に始まり、アジアの国々を中継して日本にいたる、犯罪組織の連携が存在しているのです。とくに未加工の象牙は、おみやげなどとして違法と知らずに持ち込んだのではなく、日本で印鑑や装飾品に加工して販売することが目的と考えられます。
たとえ、税関によって輸入が差し止められても、刑事事件として処罰するために告発される割合は大変少ないのです。ゾウの保全とワシントン条約の遵守のためにも、犯罪組織の資金源を断つためにも、厳しい法の執行が望まれます。
日本でペットとして人気が高いスローロリスが、ワシントン条約COP14により国際取引が禁止になりました。取引禁止に尽力したスローロリス研究者・アンナ・ネカリス博士と、博士とともにアジア各国の違法取引の拠点で取り締まり強化のための研修会を開催しているトリシア・パリシュ氏を招き、2009年2月に国際シンポジウムを開催。スローロリスを守る取り組みを事例に、野生動物と人間の関係を考える会になりました。スローロリスを通じて日本での密輸ペットの現状が見えてきます。
現在、条約上の例外を主張して捕鯨をしているのは、調査捕鯨をしている日本866頭、商業捕鯨停止に異議をし、調査捕鯨をしているアイスランド68頭の3国だけ。(2006、2006-2007年)。そのなかでも自国から離れた南極海で捕鯨をしているのは日本だけです。
ただし、先住民捕鯨・生存捕鯨として、小規模な捕鯨(各国合計374頭2006、2006-2007年)はIWCで認められています。また小型のクジラ・イルカは今のところ捕獲規制の対象外です。
1988年に日本の商業捕鯨が停止して20年以上が経ちます。クジラの保全となると議論が熱くなりますが、論点を整理します。
特集:クジラ保全の論点
捕鯨問題と水産庁の政策誘導の歴史(森川 純 酪農学院大学教授・アデレード大学客員研究員/JWCS理事
ポスト3・11の日本において調査捕鯨の堅持を選ぶことに政策的妥当性はあるのか
―周到に用意された結論と「鯨類捕獲調査に関する検討委員会」の関係―(森川 純)
国益論から見た日本の捕鯨政策 ―中曽根内閣による政策仕分けの試みと挫折―(森川 純)
2006年秋はクマの大量出没が問題になり、ツキノワグマは4340頭(2006年度環境省)が有害鳥獣区除で捕殺されました。ツキノワグマの推定生息数は1万5000頭程度、もしくはもっと多かったのではないかと考えられています。クマ類の繁殖率の低さから考えると、今後の対策が重要です。そこでJWCSは、クマの保護と人間との軋轢(あつれき)についてどのような対策がらるれているかを2005度に引き続き調査したところ、自治体によって温度差があることが浮き彫りになりました。
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