先週、北京で日本大使の公用車が襲われ、尖閣諸島付近で東京都が調査を行っていた頃、ヒラリー・クリントン米国務長官は南太平洋のラロトンガを訪問していた。ラロトンガと聞いて、これがクック諸島の国際空港のある島だと分かる人はかなりの国際通だろう。
世界一多忙な外務大臣・クリントン長官がこの絶海の孤島を訪れる目的は、もちろん夏季休暇ではない。今回はクック諸島訪問の後、中国訪問を経て、APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議に出席する米国務長官の動きを横目に、改めて「中国の台頭」の規模の巨大さを検証したい。
国務長官出席は史上初
南太平洋には「太平洋諸島フォーラム(PIF、Pacific Islands Forum)」と呼ばれる地域組織がある。
PIFは太平洋の島嶼国が政治・経済・安全保障等幅広い分野の共通関心事項を討議する地域国際機関だ。
加盟国・地域は豪州、ニュジーランド(NZ)、パプア・ニューギニア(PNG)、フィジー、サモア、ソロモン諸島、ヴァヌアツ、トンガ、ナウル、キリバス、トゥバル、ミクロネシア連邦、マーシャル、パラオ、クック諸島、ニウエ。恥ずかしながら、筆者にも耳慣れない国名がある。
PIFは2000年まで「南太平洋フォーラム(SPF、South Pacific Forum)と呼ばれていた。第1回SPF首脳会議がNZのウェリントンで開催されたのは1971年だから、もう40年以上の歴史を誇る国際機関だ。本部はフィジーのスヴァにある。
今回クリントン長官が出席したのは、PIFの域外国対話(PFD、Post Forum Dialogue)と呼ばれる会合だ。PFDとは、PIF年次総会後に日米英仏中など援助国を中心とする域外国を招いて閣僚級の対話を行う場であり、1989年以来毎年開催されている。
PFDは一応閣僚級会合だが、これまで米国はあまり関心がなく、通常は局長級の次官補あたりを派遣していた。
ところが、去年はトム・ナイズ国務副長官が参加、今年は遂にクリントン長官自身が国務長官として初めてPFDに出席したのだから、大いに注目されたのだ。
こうした米国の動きは最近の「中国の台頭」と米国の「アジア回帰政策」抜きには語れない。東京からはあまりよく見えないが、今回の米国務長官クック諸島訪問は、「中国の台頭」が東シナ海、南シナ海だけでなく、南太平洋全域にも及んでいる不都合な現実への対応である。
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