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原子力規制委員会 何より人選が重要課題


 原子力安全規制を一元的に担う新組織として、原子力規制委員会の設置が決まった。

 東京電力福島第1原発事故から既に1年3カ月余り。新組織は当初、4月発足の予定だった。あまりに遅すぎるが、原発事故で完全に失われた原子力の安全規制に対する国民の信頼を本当に取り戻せるのか。責任は極めて重い。

 最大の課題は、これまで原発を推進してきた「原子力ムラ」の影響力をどう排除していくかにある。

 今回の事故で明らかになったのは、わが国の原子力の安全規制のお粗末さだ。

 実質的に安全規制を担ってきた原子力安全・保安院が原子力を推進する経済産業省の下に置かれ、担当者は原発に関する知識が不十分で、多くの専門知識を電力会社に依存していた。保安院の規制をダブルチェックするはずの原子力安全委員会も保安院の結論を追認するだけの「お飾り」にすぎなかった。

 その点では新組織を、政府案にあった環境省の外局に置くのではなく、野党案に沿って独立性の高い第三者委員会としたのは評価できる。

 また、事故時の原子炉への対応は規制委が技術的判断を行うとし、首相の指示権による介入を排除した。

 それだけに委員会の人選が課題になる。外部からのチェックが難しい独立性の高い委員会だけに、曲がりなりにもメンバーが「原子力ムラ」に影響されるようなことがあってはならない。委員は国会同意人事であり、国会の責任は重い。人選には慎重のうえにも慎重を期してほしい。

 関西電力大飯原発の再稼働問題にみられるように、今後のエネルギー政策や原子力政策の議論の中で、旧態依然とした議論で安全規制をおざなりにして原発を再稼働させ、長期的にも原発の存続を目指そうという動きが鮮明になっている。

 規制委設置法に盛り込まれた、原子炉運転の期間を原則40年に制限する「40年ルール」も、与野党協議の中で異論が差し挟まれ、規制委員会発足後に見直すことになり「骨抜き」にされる恐れが出ているのはその一例だろう。

 40年ルールは、最新の科学的知識に基づく安全基準を既存の原発にも適応する「バックフィット」制度とともに、リスクの大きい原発の運転をずるずると続けることを防ぎ、原子力依存からの脱却を明確にするうえでも重要だ。

 今回の設置法では、原子力基本法の中に「わが国の安全保障に資する」との文言が加筆された。核保有に対して誤解を招きかねない表現であり、政府は原子力利用を民生用に限る「平和原則」をあらためて国内外に表明し、懸念をぬぐい去る必要がある。

(2012.6.22)

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