PV1596481、ユニーク234004、お気に入り2205、ありがとうございます。
今回はフランスです。多脚ちゃんはまた今度で。
sec.24/スキャンダル
十二月のフランス。三人とときどき一緒に寝るようになって一ヶ月ほどが過ぎ、冬季休暇に入るとアンソレイエの特殊操縦補助システム『NEXUS』のアップデートのためにフランスに帰省することになった。
「今までは操縦のほとんどをネクサスに依存してたけど、今度のはIS側が必要依存度を適宜修正するようにプログラムしといたわ。これで二次移行もするはず」
IS部門のチーフであるエラ・ルジャンドルが言う。
「と言っても、二次移行したISはいまだ確認されてないけど」
「まあ、束が言うんだからするんだろうさ」
そう、二次移行したISはまだ存在が確認されていない。各国は束の言を信じて試行錯誤してるらしいが、それも芳しくない。束曰く絆が必要なんだとか。
すると端整な顔にニマニマした笑みを張り付けながらエラは言った。
「ふーん、若いっていいわねー」
「何だよ気持ち悪い」
何か鬱陶しいので睨み返すが、エラは気にした素振りも見せずに続けた。
「だってぇ、ボス今絶賛ハーレム中なんでしょ? やっぱりセレブは違うわねー。でも私は応援してるから。ボスが束ちゃんを選べば、それだけでデュノアへの投資が増えて悲願達成に一歩近付くの」
「……」
相変わらずがめつい。他人の色恋に私利私欲で口を挟むなと。
俺がしらーっとした目で見るのを察知して、エラは話を戻した。
「……えっと、操作性に影響出ると思うけど、そこは慣れるしかないわね」
「大丈夫だ。センスなら自信ある。それで、BT兵器の方はどうなんだ?」
センスだけなら千冬をも凌ぐと自負してるからな、数日で慣れてやるさ。
俺は夏に束に貰ったBT兵器関連のデータを思い出して、ふと聞いてみる。確か唐沢博士率いるBT兵器信者たちが新兵器開発に充たってたはずだ。
「テストも含めて、世界大会には間に合いそうね。高出力で安定させるのにてこずってたみたいだけど、束ちゃんのくれた不確定エネルギーと量子変率についてのデータを解析して解決したようよ」
BTレーザーは設定によって趣きをガラリと変えるから、高出力で安定したジェネレータを造るのは至難の技なのだ。しかし千冬との戦闘で使用した試作型のデータもあって技術的な壁はだいたいクリアしただろうから、後は本体だな。資料によるとかなり大きな武器になるらしい。楽しみだ。
「第二世代機も順調みたいだな」
「ラファール・リヴァイヴね。ブロック構造で後から強化型にカスタマイズできる拡張性を持った機体にしてる。まあ、第三世代でようやく完成形になる予定だけど、市場拡大のためにも換装システムは重要ね」
デュノア社、キサラギが開発する次世代ISラファール・リヴァイヴは、素体となるISを周辺パーツでカスタマイズすることで、各国が導入を進めるパッケージ・システムを大きく上回る柔軟性を発揮し、あわよくば他のISを食ってしまおうという驚異のコンセプトを持つ機体だ。後々の強化型への転換も可能なので軍用としてロングセラーが期待される。シールド・アームとリニア・パイルは標準搭載で、もちろん換装も可能だ。
「にしても、ゲームの有料ダウンロード・コンテンツみたいな意地汚さだな。お前の性格がよく表れてる」
本体を買った後もやれ強化パーツだのバージョンアップだのと、金づるにする気満々の仕様だな。しかもネクサスはブラック・ボックスだから他では真似できない機能だし。
「世界大会でいろんなタイプの機体が見れれば楽しいじゃない」
「それは否定しないけどさ」
圧倒的拡張性でラファール・リヴァイヴは全機がワンオフ機になる。モンド・グロッソで各国代表がそれぞれ考え抜いたアセンブリの機体が登場するわけだからな、大会もデュノアの懐も盛り上がるだろう。
「そうそう、空中要塞だけど、動力で困ってるの」
「言わなくても分かる」
「アンオブタニウムの量子変率波を利用できれば、ISコアみたいなエネルギー増幅機関が造れそうなんだけど」
アンオブタニウムとはISコアに使われていると思われる特殊なレアメタルである。アンオブタニウムは絶えず量子変率波という波を発していて、伝導するエネルギーが微細ながらプラスマイナスに往復変動するという性質を持つのだ。この本来持っているはずのエネルギーとの差を不確定エネルギーと内では呼んでいる。
「量子変率波を流動波干渉の理論で増幅して、プラスの不確定エネルギーだけせしめようって腹か」
「そゆこと。でも内の機材だと実験できないし、波形パターンを観測する機器もないしでお手上げなのよ。取り敢えず束ちゃんと結婚してデュノアの株価上げてちょうだい」
「結局それか……って、待てよ……確かこの前」
IS学園の地下実験場でいろいろやってたときの実験レポートを送ったはずだが……。
束が講義するISの原理についての有志のための授業で、気になったことを学園の機材を借りて調べてたときのレポートに、流動波干渉による量子的確率の増大と減少について記述した気がする。
「エラ、この前送ったレポート見たか?」
「ごめんなさい、ボスが女の子とイチャイチャしてるせいで忙しかったから見てないわね」
悪びれずにしれっと嫌味を言うエラ。PDAを操作して情報を呼び出す。
俺は今学生なんだからいいんだよ。仕事よりも優先すべきことがあんの。そう言って据え置きモニターのある方向に向かって画面を指でなぞると、大型モニターにPDAと同じ内容が表示される。
「なになにぃ?……こ、これは!」
モニターを操作してレポートを閲覧するエラは急に固まり、そして肩を震わせてから高笑いを始めた。
「フフ、フフフ……アァァッハッハッハッハッハッハ! これぞ発見のエクスタシー! 最強よっ! 社長を脅して組んだ予算でしてる極秘研究と合わせれば、神の領域に到達できる!」
何か壊れたっぽい。手を腰に当てて狂ったように意味不明な内容をしゃべくるエラを気にしないようにしつつ、取り敢えず大変なことを聞いた気がするのでツッコミを入れてみる。
「……親父を脅したってのは俺の聞き間違いか?」
「これでエネルギー保存則に捕われない変率機関を……ん? ああ、それね。実はボスには腹違いの妹がいるっていう話」
「……は?」
いやいやいや、ちょっと待て。妹? 腹違い? 聞いたことないぞ? それってつまり……。
「何か予算せびれるいいネタないかと思ってとある伝手で調べたら、とんでもないスキャンダル見つけちゃったのよ。奥様に知れたらどうなることかって囁いてみたら、二つ返事で了承してくれたわ」
「あああああ」
親父ィ! 浮気とか、しかも隠し子とか何やってんだぁぁぁ! ただでさえ元ハリウッド女優娶ってるってのに、他に女作るとか! いや、俺が言えた義理じゃないかもしれんけど!
エラは本当に楽しそうに笑いながら俺を見る。その顔は素晴らしく醜悪に見えた。
「フフフ、驚いてる驚いてる。惚れっぽいのは親の遺伝なのねぇ。ちなみに、その愛人の名前はシュゼット・フランセル。妹はシャルロット・フランセルで今は一○歳のロリっ娘よ。光源氏するなら今のう――」
「するかぁ!」
俺はあらんかぎりの声量で叫ぶと、大きくため息をついてからエラから件の二人の住所を聞き出すのだった。
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シャルロットの姓はフランセルにしました。フランスをイメージしやすいので。
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