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アップル vs. サムスン特許訴訟の東京地裁判決(2012年8月31日)に関する解説 by 弁理士・松倉秀実
( 2012-09-06 06:00:00 )

2012年8月31日に、アップルとサムスンの知財訴訟判決について、多くのニュース報道がありました。

その報道をいくつか確認したものの、具体的な訴訟の内容(他国での訴訟内容や結果との違いなどを含む)は言及されておらず、結果としてはミスリードを誘い、Twitter・FacebookなどのSNSで誤認識されている点が多いように感じていたところ、松倉秀実先生(秀和特許事務所 弁理士慶應義塾大学 特任教授)より、本ケースに関する解説を寄稿頂いたので、掲載致します。

※本ケースの解説は、東京地方裁判所の判決に基づくものです。

 

平成23年(ワ)第27941号 損害賠償請求事件

判例検索システムによる本知的財産裁判例
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82524&hanreiKbn=07

  • 事件番号 : 平成23(ワ)27941
  • 事件名  : 損害賠償請求事件
  • 裁判年月日 : 平成24年08月31日
  • 裁判所名 : 東京地方裁判所  
  • 権利種別 : 特許権
  • 訴訟類型 : 民事訴訟
  • 全文   : http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120905110711.pdf
     

 

本件特許情報

本件係争の特許権は、以下の通りです。

  • 特許出願番号 特願2003-538957
  • 特許登録番号 4204977

 

※工業所有権情報・研修館(INPIT)の特許電子図書館(IPDL)にて、登録された特許についての参照が可能です。 特許・実用新案公報DBにアクセスし、文献種別に「B」、文献番号に登録番号「4204977」を入力して「文献番号紹介」ボタンを選択して表示された「 1.  特許4204977」を選択して下さい。

1. はじめに

PCとの同期技術についての判決です。

注意しなくてはいけないのが、iTunesとKiesを単純に比較してはいけないことです。

対象となるアップル特許は第4204977号「メディアプレーヤーのためのインテリジェントなシンクロ操作」でアップル特許がどのよう特許なのかを明らかにして、そのアップル特許と侵害製品であるシンクロソフトの「Kies」(サムスンのGalaxyに付属しているPCとのリンクソフト)を対比しなければなりません。

そしてアップル特許(方法特許)は直接侵害ではなく、間接侵害(特許法第101条5号:つまり間接的な侵害)を主張している点が重要なのです。

結論から簡単にいうと、今回の東京地裁の判断では、

1)Kiesにはアップル特許の構成要件(下記のE1およびF1)が欠如していた

2)そのため文言侵害(直接侵害)を前提とする間接侵害を否定した 

ということになります。
 

2. 請求項の解釈

ここでは、請求項1だけを解説します。

<本件発明1の構成要件>

  • A1 メディアプレーヤーのメディアコンテンツをホストコンピュータとシンクロする方法であって,
     
  • B1 前記メディアプレーヤーが前記ホストコンピュータに接続されたことを検出し,
     
  • C1 前記メディアプレーヤーはプレーヤーメディア情報を記憶しており,
     
  • D1 前記ホストコンピュータはホストメディア情報を記憶しており,
     
  • E1 前記プレーヤーメディア情報と前記ホストメディア情報とは,前記メディアプレーヤーにより再生可能なコンテンツの1つであるメディ アアイテム毎に,メディアアイテムの属性として少なくともタイトル名,アーチスト名および品質上の特徴を備えており,
     
  • F1 該品質上の特徴には,ビットレート,サンプルレート,イコライゼ ーション設定,ボリューム設定,および総時間のうちの少なくとも1つが含まれており,
     
  • G1 前記プレーヤーメディア情報と前記ホストメディア情報とを比較して両者の一致・不一致を判定し,両者が不一致の場合に,両者が一致するように,前記メディアコンテンツのシンクロを行なう方法。

この構成要件中の主にE1F1の要素がKiesに含まれているかが争われたわけです。

判決の詳細を読むと、どうやらKiesはファイル名とファイルサイズが同一であるか否かだけでシンクロするかどうかを判断しているようです。

裁判所は、音楽プレーヤーとPCをシンクロするために比較する「メディア情報」とは、「曲目、アルバム名、および/またはアーチスト名」に限るとし、「品質上の特徴」とは、特許明細書に例示されている「ビットレート、サンプルレート、イコライゼーション設定、ボリューム設定、スタート/ストップおよび総時間」に該当すべきものとして、従来のテキストファイルの同期とは異なる特徴があるが故に特許として意味があるとしたわけです。

従って、このようなE1およびF1の構成を備えていないKiesはアップル特許を侵害していないと結論付けたわけです。

その他、「総時間」や「ファイルサイズ」が「品質上の特徴」、「メディア情報」に該当するか等も争われていますが、ここでは省略します。
 

3. 私見と今後の見通し

要するに、本件のアップル特許は、出願段階で特許を取得するために文言を限定せざるを得なかった結果、単純な仕組みでシンクロを行うサムスンのKiesを侵害とすることができなったということになるでしょう。

日本で成立しているアップル特許にはもっと強力な権利があるはずなので、今回はアップルは行使する権利を誤ったといえるかもしれません。

ただ、この事件は高裁(知財高裁)に上がるでしょうから、そこでプロパテント寄りの判断(文言の拡大解釈)がなされればアップル逆転勝利もあるでしょう。

※短い時間で判決文を速読したため、間違っている部分もあるかと思いますので、ご容赦下さい。
※情報を下さった大坪さん、ありがとうございました。

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