風知草:慰安婦論争史を読む=山田孝男
毎日新聞 2012年09月03日 東京朝刊
当然の帰結として、いま日本では、河野談話の見直しが盛んに議論されている。私自身、見直しに賛成だが、擁護論も根強いようであり、河野談話の存廃だけを争って国論の分裂を招くことは避けたい。
外務省による慰安婦の英訳はcomfort womenだが、海外報道は、日本の慰安婦をsexual slavery(性奴隷)と表現した記事が多い。そもそも国連人権委報告書(96年)がそうだった。なぜか。「慰安婦と戦場の性」は翻訳をめぐる問題も実証的に論じている。
問題の根は日本にある。韓国の出方待ちではなく、日本自ら誤解を解く。まずは秦の労作を的確、良質な英訳で世界に発信したらどうか。(敬称略)(毎週月曜日掲載)