風知草:慰安婦論争史を読む=山田孝男

毎日新聞 2012年09月03日 東京朝刊

 その秦がこう言っている。90年代以降、慰安婦問題が先鋭化する原因は日本がつくった。旧日本軍による慰安婦募集を裏づける資料を日本人の研究者が発掘、朝日新聞(92年1月11日朝刊)が1面トップで報じ、大反響を巻き起こした。

 他のマスコミも追随して両国の世論が沸き立つ中、直後に訪韓した宮沢喜一首相は謝罪を余儀なくされ、「真相究明」を約束して帰国する。日本政府は実際に調査し、それを踏まえて公表されたのが93年の河野洋平官房長官(後に自民党総裁、衆院議長)談話である。

 談話のミソは、戦時中、日本兵の相手をした慰安婦(植民地支配下の朝鮮半島出身者が少なくなかった)に対する旧軍の責任を認めて謝罪し、その「気持ちを表す方法を検討する」という決意表明にある。

 だが、対韓戦後賠償は日韓基本条約(65年)で「完全かつ最終的に解決された」と確認を交わしている。新たな補償はしないと決めたにもかかわらず、勢いに押されて相手に期待を抱かせる表現を盛った。

 そこで日本は半官半民の「アジア女性基金」を設けて元慰安婦に「償い金」を渡す一方、歴代首相が謝罪を重ねたが、評価されず、補償要求はエスカレート。今年5月の首脳会談で李明博(イミョンバク)大統領が慰安婦問題の解決を求め、野田佳彦首相が「知恵を絞ろう」とソフトに応じたところ、かえってこじれたというのが目の前の現実だ。

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