2012-07-06
理系修士のモチベーションの話
前略
理系学部在籍の僕が自大の院進学を決心したのは,
学部三年時の夏頃に大学で実施された進路説明会とか何とかいうセミナーで,
学部長だか学科長だかの偉い人が以下のようなことを言っていたことに起因している.
- 全国の理工系学部生の50%くらいは当然のように院進学している.
- 理工系は学部生よりも院生の方が断然就職に強い.
- だから是非とも院に進学してください!
実際,これらの謳い文句は紛れもなく真実だったと現在も理解している.
片や,大学教員が稀にこんな正論を口にする.
学部生は講義が主体だけれど,院生は研究するために居るのだから―.
なるほど,確かに講義三昧の学部生とは違い,
負担分量が比較的少ない院生には,それだけ研究に没頭する余裕があるはずだし,
まして大学院修士課程という身分に付いた以上は,
少なからずアカデミックな領分に足を踏み入れる覚悟があって然るべきだと言えそうな気もする.
でもそういえば,その辺りの話は前述の進路説明会では全く触れられていなかった.
正直なところ僕は,現在もなお,大学院が小学校中学校高校大学の延長線上に単純に存在するものとして認識している.
学内で頑張ることの意義について
海外留学,長期インターンシップ,ボランティア活動,etc.
いわゆる「意識の高い学生」の方々は,往々にして大学の外側で思うままの活動を行っていると聞く.
また,僕らのような「意識の低い学生」の面々ですら,主に就職活動などで有利に立ち回るために,
資格試験への挑戦やアルバイト経験の蓄積,あるいはサークル活動や趣味の掘り下げなど,
やはり学外で,様々な物事に手を伸ばしている.
片や,大学や大学院の講義の成績,あるいは就活時点までの研究実績なんていうものは,
就活などでは殆ど意味を成さないし,むしろ勉強なんてせずに遊ぶべきだ,などという話を頻繁に耳にする.
体感的にも,就活で学術論文の完成度や新規性などが話題にのぼることは殆ど皆無に近く,
高々,簡単なアブストラクトの紹介と,学会発表経験くらいだったと記憶している.
そういえば先日,こんな記事が一部で話題に上がっていた.
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35548
東大どころか地元の国立大に入る地頭すら持ち合わせていない僕には,
この記事で槍玉に挙げられている学生の心情や思考回路は正直あまりにも想像に難い.
ただ,それはさておき,筆者の言うように,
まずは目の前を自分自身でよく見、そこでものごとを感じ、
自分自身のアタマで考え、試行錯誤し、一段一段、正解に向かって近づいていく、
という能力は大学生くらいの年齢になれば誰しもが持っておくべきだ,という主張には個人的にも同意する.
そして,そういう能力を少なからず持ち合わせてる学生の多くは,
目の前の現実を受けて,自分なりに考えて,試行錯誤した末に導き出した最適解として,
学内で真面目な良い子ちゃんに終始することを辞め,他の,より妥当なアテを探し始めている.
それは間違いなく本人のためであり,そして察するに学内を除く社会全体が求めている姿勢そのものでもある.
誰が為に研究するのか
昨年12月1日から今年の5月中旬頃までの期間,
僕は研究活動を100%完全に放棄して,全身全霊をもってして就職活動に打ち込んだ.
その結果として,5月中旬頃に無事就職活動を終えることができ,
多少の静養気分を交えながら研究再開に着手しつつ現在にまで至り,
ぼちぼち本気を出して修士研究に勤しもうかという次第である.
これに関して,正味半年ほど完全に研究を中断していたことには,
僕としても担当教員や大学関係者に対して良心の呵責がないでもなかった.
幸いなことに,僕の上に付いている教員は当時の僕の姿勢に理解を示してくれていたけれど,
どうであれ自分の所為で物事が停滞している状況がそこにあるのだから,決して良い気分ではなかった.
片や,僕が完全に研究活動を放棄していた期間,
研究室内外問わず,就活と並行して研究にもしっかり勤しんでいた立派な同級生も多く居た.
そして,その中の正味半分ほどのヒト達が,結果として現在も就活を終えることができずにいる.
何の所為だとか,何がいけなかったとかいう野暮なことは殆ど誰も口にしないけれど,
そんな彼らに対して,大学教員の面々が取る言動というのは,
まあ,就活も頑張ってね.
高々,こんな一言を口にするくらいだ.
実際のところ,大学教員なるものは自分自身が就活を経験していない割合が高く,
まして現代の就活云々の話となると,当事者である就活生の方がよほどプロフェッショナルであるため,
主観的なアドバイスを不用意に口にするよりは,上記の一言で済ます方が適切だとは思う.
しかし,このあたりの一連の流れを実際に見てきて,僕はこうも思っている.
就活中に研究を完全放棄して,本当に良かった.
内定者懇親会で直面する現実
システムインテグレータなどに代表される理系院生の普遍的な就職先には,
実際には全然理系ではないところの学生もそれなりに入社しており,
つまりは学生最後の年を現在進行形で存分に遊び呆けている未来の同期が少なからず存在する.
その現実を受けて,学生最後の年をひたすら研究に費やすことに疑問を覚える院生は,きっと少なくはない.
数ヶ月後には同期になる面々がまさに今,存分に遊び呆けているというのに,
何故,僕らは,大金を払って,貴重な時間を割いて,研究活動なるものに勤しんでいるのだろう.
まして,就職で有利に立ち回るために進学し,念願の内定を獲得してしまった現在において,
学会発表経験がノルマ化され,奨学金減免対象者への競争も随分熾烈化してしまった現状で,
修士研究で少しでも高いクオリティを目指す動機が,いったい何処にあるのだろう.
修士研究の立ち位置
さておき,修士研究に対するスタンスは,研究室レベルで予め明確にしておくべきだと思う.
- 卒業研究と同じように,なるべく真面目に打ち込んでくれさえすればそれでいい.
- 博士研究と同じように,死ぬ気でやるか,さもなくば死ね.
どちらであっても,それが前々から大々的に告知されていればそれで構わないのだけれど,
実際的には前者に該当する研究室の方がマジョリティなのではないかと思う.
卒業研究・修士研究時の悪循環を防ごう - 発声練習
http://d.hatena.ne.jp/next49/20081019/p2
まず第一に「卒業研究・修士研究はあくまでも試験であり、これの出来、不出来で人生が左右されることはない」という事実を
教員と学生の両方が認識する必要があると思う。
「卒業研究ができなかったら、自分の人生がおしまいだ。」なんて思う必要はない。どうにでも、リカバリーはできる。
そうではなくて、「一生に一度しか経験しない、卒業研究で何か学べたら良いな。」ぐらいの心持で取り組む方が前向きだ。
教員も「一生に一度しか経験しない、卒業研究で何か学びとれたら良いね。」ぐらいで指導するのが適当だと思う。
最初から全力をかけてしまうと、学生の方がついて来れないのではないかと思う。
そういうものであると研究室レベルで予め明確にしておいてくれれば,
学生側としても,例えば就活時に研究を放棄するという選択がし易くなるし,
鬱病などを含む様々なイレギュラーも低減させたり,フォローしたりがし易くなる.
ここでの最悪なケースは,実態は前者なのに,学生が後者だと解釈し,諸々を犠牲にして空回りすることで,
それだけは全力で回避されるべきだし,回避するための努力が不可欠である.
百凡な院生にモチベーションを維持させるために
ここまで長々と,修士研究へのモチベーション低下に関する理屈を並べてきたけれど,
実際のところ,別に僕は,修士研究が嫌で嫌で仕方ないと思っているわけではない.
むしろ,概ね要望した通りの面白い研究を割り当てて貰えたので,平時より多少テンションが高いくらいだ.
ただ,それはそれとして,今の理系修士を取り巻く今のご時世には,
いちいち無駄にモチベーションを低下させてくるような事象があまりにも多すぎる.
そもそもの実態として,概ね就活で有利に立ち回ることを目的に修士に進学した僕らが,
修士研究で及第点以上の,少しでも高い水準を目指す動機なんて,
- お世話になっている教員方の恩義に報いるため
- 自分自身が取り組んでいて楽しいため
多くの場合で,この二点くらいしか存在しない.
そんな環境の中で,特に頭一つ抜けるほどのスペックを有しているわけでもない僕らが,
大学教員が理想とするような姿勢でひたむきに継続的に研究に打ち込んでいくのは,本当に難儀なことなのだ.
大学教員の方々はせめてその点だけでも認識するべきだし,
その上で学生たちのやる気を少しでも向上させ,少しでも立派な研究成果に到達させたいと考えるならば,
それを実現するために可能な限りの創意工夫を教員側からも行い,
学生たちに働きかけていくように努めた方が,お互いのためだと思う.
理想論と上から目線を振り翳すだけでは,もう殆どの学生は付いてこない.
- 40 http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&ved=0CFUQFjAA&url=http://d.hatena.ne.jp/kirii/20120524/1337858809&ei=gXj2T6mfNKyOiAe8m5TWBg&usg=AFQjCNG_GjxCwHAxRtN-_4Zw_iFOPSDC_A&sig2=t7vZzmuv8PorCRAJyEmvXw
- 22 http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=2&sqi=2&ved=0CF4QFjAB&url=http://d.hatena.ne.jp/kirii/20120524/1337858809&ei=YYv2T-G0H6n6mAW40rGCBQ&usg=AFQjCNG_GjxCwHAxRtN-_4Zw_iFOPSDC_A&sig2=pj50mUJdMwwrHFGxKASEAQ
- 21 http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=5&ved=0CGMQFjAE&url=http://d.hatena.ne.jp/kirii/20111001/1317440413&ei=U3r3T8TSIanYigfxh_jrBg&usg=AFQjCNEfiMXk6_eWedPJiMVkRx_LZ0PELA
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- 14 http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=4&ved=0CFkQFjAD&url=http://d.hatena.ne.jp/kirii/20111004/1317699550&ei=5of2T-TICJDKmAWPiqGUBQ&usg=AFQjCNHgOMfqiK9onULQy-m1rCEIHaVvcw&sig2=D4pLd20uvQbczuvpSgqyHA
- 9 http://d.hatena.ne.jp/next49/20120716/p2
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- 5 http://t.co/NJWTadnV
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