緊急連載［いじめ問題を考える　よみがえれ学校］（２）

　「息子はなぜ自殺したのか。いじめがあったのではないか」。男子生徒が自殺してから２日後の２０１１年１０月１３日。遺族は複数の保護者から聞いた情報を基に学校に訴えた。遺族は、自殺当初は「家族の問題」だと心にとどめていたが、周囲から「いじめがひどかった」との話を何度も聞かされ、真実を知りたいと思い行動を起こした。

　事件発生時「自殺の原因は見当たらない」としていた学校や市教委だが、遺族の意向を受け１０月１７～１９日までの３日間、８８０人の全校生徒を対象にアンケートを行った。そして、学校は、ようやく深刻さに気づく。回答したのは３３０人。全部で３００件以上のいじめの情報が寄せられた。

　アンケートでは、情報の確度を選別するため、記名されていて自ら見たことが書かれているものを「Ａ」、記名はあるが伝聞情報を「Ｂ」とした。記名はないが直接見聞きしたことを「Ｃ」、記名なしの伝聞情報を「Ｄ」と分類した。

　学校や市教委は「Ａ」を中心に聞き取りを行った。こうして、鉢巻きで体を拘束され粘着テープを貼られていた体育祭での出来事など、いじめの実態が浮かび上がった。男子生徒の父は、考えていた以上にせい惨ないじめの実態を突きつけられ、吐き気を催したという。しかし、「全容が解明されていない」として再調査を求めた。

　翌１１月１～４日に、学校は追加アンケートを実施する。そこには「『自殺の練習』と言って首を絞めた」「葬式ごっこをしていた」などの内容が書かれていた。しかし、学校側は伝聞情報と判断し、踏み込んだ調査をせず、市教委も見落とした。そして、事件発生から３週間で早々と調査を打ち切った。追加アンケートを実施したことは、遺族にも公表していなかったことも後に判明する。こうした一連の対応が、現在まで「隠ぺい体質」「ずさんだ」と批判を受けることになる。

　市教委はこれまで何度も「調査の限界」と繰り返してきた。加害者とされる同級生３人の保護者の同意を得た上で、同級生３人からも事情を聞いているが、保護者からは２回以上の聴取を断られている。そして「いじめがあった」と公表されたことで、意思疎通は完全に途絶えてしまう。同級生３人は事件後、不登校となったが、遺族への説明や謝罪もなく、仏壇にお線香を上げに来ることもなかった。遺族側の代理人弁護士は「友達と言うなら…」と言葉を詰まらせた。

　３人は「遊びの範囲だった」として市教委の調査でも、訴訟でもいじめを否認している。

　時間が経過すればするほど、生徒らの記憶は薄れ、いじめの実態は見えにくくなる。そんな今年７月１１日夜、事態は急変する。

　滋賀県警による学校や市教委への強制捜査―。極めて異例とも言える対応だった。本格的な捜査が始まった。

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（2012年9月5日12時12分スポーツ報知）