最後の言い訳
一匹の小さな犬が 今すやすやと
穏やかに眠っている
もしかしたら このなんでもないこの穏やかな一瞬のために
彼女はこの5年間生きて来たのでは ないだろうか・・
プードル 5才 雌
ブーリーダー放出犬
この度28頭の犬たちが とどこおりなく
保護預かり 里親さんが決まっていった中
文字通り(行き場の決まらなかった)犬がいた
悲しき兵士・・
そんな言葉が思い浮ぶほどこの子は(違っていた)
人が近づくと延々と吠え叫び
手が延びると泣きじゃくりながらガブッガブッと噛みつく・・
やせ細り今にも倒れこみそうなガリガリの体で
彼女は生きるために、我が身を守らんばかりに人間の(手)を噛む・・
体重わずか1.8キロ
骨と皮だけになり 皮膚は赤くただれ毛は半分以上脱毛状態
足は数年分の糞尿がこびり付き 真っ黒だ・・
この(体の履歴書)と 人間に対しての狂暴性が
彼女の過去を全て表しているかのようだ
人間への憎しみ・・
人間への悲しみ・・
この二つの言葉がこの5年の中で培った彼女の(深い想い)なのだ・・
おそらく50匹は生んだであろう この母が
一匹残らず無造作に我が子を取り上げられ
それ以外は糞尿まみれの狭いケージでの生活を強いられた
(その時間)は 哀しみと苦しみ以外なにものでもない
この1800グラムしかない体の中にあるものは
人間への憎悪と そして恐怖でしかないことは容易に想像がつく・・
好きでこんな姿に なったんじゃない
選んでこんな想いに なったんじゃない
この言葉の奥に 悪魔の人間に授かった全ての行為への
チャコの言い訳がある
最初で最後の言い訳がある・・
吠える・・ 噛む・・ 皮膚病がある・・
今回
この三悪の要因のあるチャコは 預かり保護対象にもならず
まさに圏外ともいえる(29番目の子)で 奥の部屋で隔離されていた
キレイごとでもいい いい人ぶっててもいい
チャコを 見捨てるわけにはいかない・・
どぶの中を這いつくばって 頑張って生きてきた小さな戦士チャコを
私は連れて帰った
不安と期待 そして希望という言葉を詰め込みながら・・
チャコの最後の言い訳が消えて なくなるまで
心の傷が癒え 体が普通になるまでやってみようと思う
銭なし時間なしの私で申し訳ないが
がんばりたい・・
このぶかぶかの首輪に誓いを込めながら。。
(名前はチャコ でんまろさん命名)2012 3 20
ganman