からすけ まだ少ないね。
イチ子 横浜(よこはま)市や神戸(こうべ)市などほかの政令市が目指しているのは「特別自治市(とくべつじちし)」という制度(せいど)よ。これは、今は国や都道府県が担当している職業紹介やパスポートの発給(はっきゅう)などを自分たちでするの。アメリカのニューヨーク市みたいに警察の仕事も自分たちでするそうよ。
からすけ みんな「このままじゃいけない」と思ってるんだね。
イチ子 ほかにも、都や府県をなくしてもっと広い地域で分ける「道州制(どうしゅうせい)」という考えもあるわ。都構想もそうだけど、最近は大都市をどうやって強くするかに注目が集まっているの。大都市が発展(はってん)すると国全体が引っ張られて魅力を増すといわれているのよ。韓国のソウルやドイツのベルリンなどは州と同じ力を持つ「特別市」だわ。
からすけ 国の仕組みってすぐに変わるのかな?
イチ子 すぐには難(むずか)しいけど、例えば広島県と広島市は制度は変えずに観光(かんこう)PRなどを協力(きょうりょく)してやっていくことを決めたの。今の形のままでもできることは進めながら、都市や地方の発展する方法をじっくり考えたいわね。
■「福岡」か「博多」か、名称も大事
千代田区立九段中等教育学校の荒川美奈子先生の話
「都構想」では特別区の名称(めいしょう)をどうするかも課題(かだい)の一つですが、明治時代には福岡(ふくおか)県で名称を巡(めぐ)る争(あらそ)いがありました。九州最大(さいだい)の都市は福岡市ですが、その福岡にある駅名は博多(はかた)。福岡と博多にはどんな関係(かんけい)があるのでしょう。古代、今の博多湾沿岸部には、外交使節(がいこうしせつ)の接待所、鴻臚館(こうろかん)が置(お)かれ、遣唐使の経由地(けいゆち)でした。その後、港周辺は博多と呼(よ)ばれ、室町時代には日明貿易(にちみんぼうえき)の拠点(きょてん)として栄(さか)えました。一方、江戸時代、黒田長政(くろだながまさ)はゆかりの深い備前(びぜん)(現在(げんざい)の岡山県)福岡にちなんだ福岡城(じょう)を築(きず)いて城下町をつくり、商人の町博多と武士の町福岡が2つ並(なら)んだ町が生まれます。
明治時代、市制(しせい)がスタートするときにこの2つの地名が大きな問題になります。博多側が博多市を強く主張(しゅちょう)したにもかかわらず1889年に県が福岡市と定めたときには、博多独立論(どくりつろん)まで出ました。この仲裁策(ちゅうさいさく)として、市制施行(しこう)と同時に開通した鉄道の駅名は博多になったのです。
ニュースなテストの答え 1=特別区、2=200万人以上
[日本経済新聞朝刊ニュースクール2012年9月1日付]
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