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2012年9月5日(水)付

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関西の節電―大飯を止めて検証を

夏の電力需要がピークを越えつつある。とくに逼迫(ひっぱく)が心配された関西電力管内も、計画停電なしに乗り切れそうだ。8月17日までの関西の電力使用量(ピーク時)を10年[記事全文]

民・自の党首選―政策論争を聞きたい

通常国会の会期中だというのに、民主、自民両党の党首選びの動きが早くも活発だ。予算執行に必要な赤字国債法案や、違憲状態が続く衆院の「1票の格差」是正など、本来なら8日の会[記事全文]

関西の節電―大飯を止めて検証を

 夏の電力需要がピークを越えつつある。とくに逼迫(ひっぱく)が心配された関西電力管内も、計画停電なしに乗り切れそうだ。

 8月17日までの関西の電力使用量(ピーク時)を10年夏と比べた節電率は約11%だった。今月7日までの節電期間中、政府や関電が要請した「10%以上」の目標を達成する見込みだ。

 家庭の節電率が、昨年の3%から11%へと拡大したことが大きい。節電の習慣をぜひ定着させたい。

 関電の供給力は連日250万キロワット以上余裕があり、計算上は大飯原発3、4号機(計236万キロワット)を再稼働しなくても乗り切れたことになる。

 もちろん古い火力発電所を急きょ復旧させたことや、他社からの電力融通があってまかなえた部分はある。関電は「大飯の再稼働で計画停電のリスクを低減できた」と説明する。

 しかし、企業から節電分を買いとるネガワット取引など、逼迫時に準備している対応は一度も発動されていない。

 政府の需給検証委員会は5月、関西の電力が15%不足するとしていた。節電の努力を過小評価していなかったか。水力や揚水発電の供給見込みは妥当だったか――。電力会社の情報をもとに、不足分を過度に見積もっていなかったかどうかを、徹底的に検証すべきだ。

 このままでは、原発の再稼働のために需給予測を厳しく算出したとみられても仕方ない。

 政府は、原子力規制委員会の発足を待たず、暫定的な安全基準をつくって駆け込み的に大飯の再稼働に踏み切った。

 夏の需要に対応して再稼働した以上、ピーク期を過ぎれば停止させるのが筋だ。

 関西広域連合は先月、原子力規制委員会がつくる新たな安全基準のもと、大飯の安全性を再審査するよう求めた。

 橋下徹大阪市長のブレーンでつくる大阪府市エネルギー戦略会議も、節電期間終了後の速やかな大飯の停止を求め、政府に声明文を送る方針だ。

 こうした声に政府や関電は真剣に耳を傾ける必要がある。

 電力需要が高まる季節は冬と夏に周期的にやってくる。需給検証委員会を常設化して精緻(せいち)な需給予測を立てるとともに、根本的な電源対策に取り組むことが、コスト面でも不可欠だ。

 大阪府・市は脱原発社会実現への提案を練っている。関電や経済界も、客観的なデータを出して議論に加わってはどうか。電力供給を安定させ、安全で持続可能な社会を実現させることは、共通の目標のはずだ。

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民・自の党首選―政策論争を聞きたい

 通常国会の会期中だというのに、民主、自民両党の党首選びの動きが早くも活発だ。

 予算執行に必要な赤字国債法案や、違憲状態が続く衆院の「1票の格差」是正など、本来なら8日の会期末までに処理すべき課題は多い。

 それらをほったらかして党首選に熱中する議員たちには、あきれるほかはない。

 党首選びの基準にも首をかしげざるをえない。

 ともに9月の党首選で選ばれる2大政党のリーダーは、次の首相候補である。

 ところが、近づく総選挙を前にして、政策や手腕より、もっぱら「国民受けするかどうか」に終始しているのはいかがなものか。

 自民党では、ベテラン、中堅議員が続々と名乗りをあげ、候補者乱立の様相だ。

 かたや、谷垣禎一総裁の再選が厳しくなっている。出身派閥・古賀派の古賀誠会長が「若い人を支持したい」と谷垣氏に伝え、森喜朗元首相も不支持に転じた。

 谷垣執行部は民主、公明両党とともに、社会保障と税の一体改革関連法を成立させた。一方で3党合意を否定する首相問責決議に賛成するなど、危ういかじ取りが目に付いた。

 そうした国会運営のあり方や3党合意の是非をめぐって争うなら、まだ分かる。

 だが、実際は「地味な谷垣氏では選挙に不利だ」というのが多くの議員の本音ではないか。

 派閥の会長や古参議員の動きも気になる。

 自分の意中の議員を総裁候補にしようと、党内調整に乗り出している。それによって自身の影響力を強めようとしているなら、筋違いもはなはだしい。

 民主党では、野田首相(党代表)に対抗して、41歳の細野豪志環境相を擁立しようという動きがある。

 だが、細野氏は野田内閣の閣僚だ。原発・エネルギー政策でも、一体改革でも、首相と足並みをそろえてきた。細野氏を代表にして、党の路線をどう改めようというのか、さっぱりわからない。

 そもそも、与党の党首は政権を運営し、野党党首は党を鍛え直して、その実績を総選挙で問うべきなのだ。

 選挙が迫ってから党の「顔」を取り換えるというのでは、有権者に対するめくらましに等しいではないか。

 課題をどう処理して、日本をどんな方向に導くのか。その大局を争うのでなければ、党首選をやる意味はない。

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