特集ワイド:大飯原発 必要だったのかなぁ、再稼働 火力発電止め、余裕調整 そんな本末転倒さえも…
毎日新聞 2012年09月03日 東京夕刊
◇「根拠」操作の疑念噴出−−(1)電力需要(2)融通電力量(3)揚水発電量
世論の反対を押し切って野田佳彦首相が決めた関西電力大飯原子力発電所3、4号機の「再稼働」。まだ残暑は厳しいが、夜の風に涼しさを感じ始めた今になっても「正解だった」という声はあまり聞かない。それどころか、専門家からは「根拠自体が怪しかった」と疑問が噴出しているのだ。【藤田祐子、写真・後藤由耶】
「足りることは分かっていたんですよ、最初から」
原発再稼働の必要はなかったと強い語調で語るのは、NPO法人環境エネルギー政策研究所所長で大阪府市特別顧問の飯田哲也氏。実際、この夏の供給と需要の数字を振り返ってみると、再稼働が必要だったかどうかは疑問だ。
「原発ゼロ」の段階で関西電力の供給力は2500万キロワット以上あったが、そこに大飯原発3、4号機の計236万キロワットが上乗せされ、さらに他電力会社から融通可能な分などを加えれば3000万キロワット以上に達する。一方、同社が節電要請を始めた7月2日から8月23日までの53日間のうち、使用量のピークは8月3日の2682万キロワット。2500万キロワットを超えたのは17日間に過ぎなかった。大飯3、4号機分を差し引いても、数字の上ではかなりの余裕がある。
もちろん、だからといって個々の節電努力が無駄だったということにはならない。政府は関電管内で「2010年比10%以上の節電」という目標を掲げたが、7月2日から8月17日までの平均電力消費量は約11%(310万キロワット)減った。内訳は▽工場などの産業用約12%(約115万キロワット)減▽企業オフィスなどの業務用約11%(約130万キロワット)減▽家庭用約11%(約65万キロワット)減。「特に6月末に計画停電の可能性が報じられてから、一気に節電意識が高まった」と、大阪府市エネルギー戦略会議の担当者は話す。