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焦点−大震災から1年半/義援金配分、市町村の対応/手厚い内陸、少ない沿岸
東日本大震災では、大津波により沿岸部で甚大な住宅被害が出たほか、激しい揺れで内陸部でも全半壊した家屋が多い。調査では、自治体が住宅被害に対して、1世帯当たり義援金をいくら支給しているかも聞いた。
◎被災住宅への支給/全壊世帯/盛岡71.2万、石巻1.5万円
義援金を支給している72市町村のうち、全壊世帯を対象にしていたのは56市町村。県別は岩手15、宮城22、福島19だった。1世帯当たりの支給額は、盛岡市71万2000円が最も多い。次いで福島県広野町50万円、同県川俣町40万円、岩手県洋野町35万円の順だった。 内陸部で比較的、支給が手厚い自治体が見られた一方、津波による住宅被害が大きかった沿岸部の石巻市(1万5000円)や岩手県大槌町(2万円)は、支給額が少なかった。石巻市財政課は「被災規模に比べて義援金が少なく、被災者の満足いく支給ができていない」と説明する。 大規模半壊世帯には54市町村、半壊世帯には56市町村が義援金を支給。大規模半壊は5万円以上10万円未満が16市町村、半壊は3万円未満が17市町村でそれぞれ最多だった。全壊も含め、津波浸水区域内に住宅があったり、高齢者、要介護者が在宅していたりする場合の住宅被害に加算措置を取った自治体もあった。 国、県の義援金では対象外となる一部損壊には、奥州市、宮城県加美町などが義援金を支給した。 義援金を集めていない自治体も、寄付金を活用した住宅被害への救済策を講じている。福島県会津坂下町は住宅被害に一律3万円を支払う事業を実施。同県鏡石町は一部損壊への修繕支援金制度を設けた。理由について「震度6強の揺れで約7割の世帯が被災したが、一部損壊は国、県の義援金では支援されないため」(総務課)としている。
◎支給事務/内陸部は大半終了
自治体は直接寄せられた義援金を国、県分に上乗せする形で被災者に届けている。内陸部を中心に、大半の自治体は支給事務を終えている。 72市町村のうち、6月末に支給をいったん完了しているのは少なくとも53市町村。残りの自治体の多くも被災者の申請は一段落しているが、調査時点で週平均90件を扱ういわき市、62件の石巻市のように、大量の支給業務に追われているところもある。 宮城県大和町、同蔵王町、南相馬市は既に義援金の受け付けを終了した。23市町村がことし9月や来年3月に終える予定。半数以上の自治体は期限を設けておらず、引き続き協力を呼び掛けている。一部は受け付け状況に応じて、追加支給を検討している。 国、県分の義援金支給額は県ごとに決定している。全壊世帯当たりの支給額は基本的に岩手県が計162万円、宮城県が計100万円、福島県は1次配分が40万円で2次配分は市町村ごとに異なる−となっている。 56市町村が実施している全壊世帯への支給額を国、県分に加算すると、県別の平均支給額は岩手180万9533円、宮城107万7404円、福島122万3114円だった。
◎独自策/国・県対象外の被害にも/震災孤児・重傷者・酪農家・漁船…
義援金・寄付金について、自治体は支給対象や使い道を決められる。調査では自治体の独自策についても質問した。国、県の義援金が行き渡らない被害を支給対象に選ぶ自治体が多かった。 震災で両親を失った震災孤児を対象に義援金を支給しているのは16市町。宮古市や名取市は孤児1人当たり30万円を配分した。震災で父親か母親が死亡した世帯には10市町、震災前からの母子父子世帯にも9市町が支給した。 要介護者や障害者が在宅する世帯を選んだのは、それぞれ5市町。岩手県大槌町と釜石市などは両方とも対象にした。 福島第1原発周辺では、避難者に一律の金額を支払う例が目立つ。 経済的支援では、岩手県田野畑村や久慈市など7市町村が事業所の被害に支給。酪農家(福島県小野町)や半壊以上の店舗(宮城県女川町)、漁船や養殖施設の被害(岩手県田野畑村)などが対象になっていた。 栗原市や宮城県松島町などは重傷者を対象に加えた。須賀川市は、8人の死者・行方不明者を出した藤沼ダムの決壊により全半壊した世帯に義援金を支払った。 宮城県利府町は義援金全額を日本赤十字社に寄付している。 寄付金の主な使途は宅地災害復旧の補助(白石市)、小中学校の備品購入(東松島市)、農地・農業用施設の復旧補助(一関市)など。陸前高田市、岩沼市などは復興事業の基金として積み立てている。宮城県利府町、福島県三春町のように、義援金同様に被災者に配る「見舞金」に活用する例もあった。
2012年09月03日月曜日
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