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震災がれき受け入れ拒否 青森市

2012年09月04日

 青森市の鹿内博市長は3日、東日本大震災で発生したがれきの受け入れについて、「とうてい考えられない」と表明した。がれきに含まれる放射性物質の扱いを巡り、市民の安全が確保できない、と判断したという。県によると、安全性を理由にした受け入れ拒否は県内初という。

 県によると、宮城・岩手両県で発生した震災がれきの広域処理はこれまで、県内では八戸市、三戸町、東北町、六ケ所村、東通村が受け入れている。青森市議会は3月、安全性確保を条件に「全力で努力する」と決議。これを受け、市は市営一般廃棄物処分場での処分の可否を検討してきた。

 処分場の焼却能力に余裕がないため、検討では、がれきの直接埋め立てを想定。受け入れるがれきは放射性物質が計器で検出できないレベルとした。

 青森市によると、放射性物質の検出限界は1キロあたり30ベクレル。国の基準で一般廃棄物として処分できる廃棄物は、1キロあたり8千ベクレル以下なので、市が検討したがれきの放射性物質濃度は、国の基準の200分の1以下になる。

 鹿内市長は会見で、「埋め立て地から(地下水などに)放射性物質が浸出する可能性はゼロとはならない」と説明。しみ出た場合、放射性物質を水中から吸着する資材についても、国が経費負担をする方針を示していないと指摘。市が受け入れる上で必要な「市民の安全と、国の役割の明確化が確保されていない」と結論づけた。

 環境省の担当者によると、震災がれきの受け入れ拒否を表明した自治体は西日本に多く、東北地方では「無いと思う」という。

 震災がれき受け入れの決議案に名を連ねた大矢保・青森市議は「国の基準をかなり下回るのに、安全が確保できないというのは理解しがたい。最初から拒否ありきの検討だ」と鹿内市長の方針を批判した。

【解説】判断基準、明確に語るべきだ

 「受け入れ想定は1万3600トン」

 鹿内市長は会見で、そう繰り返した。放射性物質の濃度は低くても、掛け合わせれば大量で、環境に放出される懸念は残る、という意味だ。

 しかし、これは理由になるだろうか。余分な被曝(ひ・ばく)を避けたいのは誰しも同じ思いだ。だが、がれきを受け入れるなら、完全なゼロにはなり得ない。

 受け入れを検討する以上、負担である健康への影響が「許容、もしくは無視できるほど小さければ受ける」としなければ議論にならない。どの程度なら許容するのか。鹿内市長の発言から、判断基準は伺えなかった。

 国は、市に健康への影響を説明している。

 青森市の想定の千倍以上、国基準の5倍以上となる1キロあたり4万6千ベクレルのがれきを埋め立てた場合でも、周辺住民の被曝量は自然界からの被曝量の100分の1以下。実際のがれきはずっと放射性物質が少なく、「影響は無視できるレベル」とした。

 がれきの放射性物質濃度を定める国の基準は、国の判断した許容レベルだ。従う必要はないが、従わないなら、独自判断はすべきだ。

 三戸町は、がれき周辺の放射線量が「自然界の標準以内なら受け入れる」とした。八戸市も、がれきで作るセメントの放射性物質が国の製品基準を下回るよう、受け入れ基準を設定した。いずれも、国より厳しい独自の受け入れ基準だ。

 鹿内市長は会見で「復興で役割を果たしたい」と語った。そのために、どの程度の負担なら市民が理解できると考えるのか。明確な判断基準が語られなければ、市民も議論のしようがない。
(長野剛)

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