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尖閣有事とイデオロギーの戦争 - 拡大は止められない
尖閣有事、毎日が薄氷。マスコミは日中を衝突へと煽るばかりで、国民の多くは何も気づいていないが、現在、日中の外交当局が有事回避のために水面下で懸命の交渉をしている。ウラジオでの日中首脳会談が成るかどうか、中国の「尖閣に関する対日3条件」の要求を受諾するかどうか、ここが日中が有事に向かうかどうかの瀬戸際だ。私は、去年からずっと日中戦争の危機を訴え続けてきた。今が正念場だ。従来の「領土問題は存在しない」の立場を変え、どう中国と妥協して合意を作ることができるか、平和的関係を維持する態勢を築けるか、真剣勝負の局面に来ている。日本による尖閣国有化を中国が事実上容認すること、それと引き換えに「3条件」の要求を日本が受け入れること、そこで纏まらなければならない。東郷和彦の尽力に期待したい。ここで決裂すれば、戦争の危機へと一歩近づく。石原慎太郎は大喜びで尖閣に上陸し、反日デモを煽り、日中国交正常化40周年をぶち壊し、中国による報復外交を招き込むだろう。右翼が対中外交を掌握する。中国は対抗措置として、2010年に中露で発表した「歴史認識の共同声明」の中韓版へと動き、日本への外交圧力を強めるだろう。歴史問題と領土問題の対日要求で中韓は双方の立場を支持するという声明(=同盟)だ。これが締結されれば、中露韓3国による対日包囲網が出来上がる。東アジアでの日本の孤立は決定的になる。
 

今日(9/4)の朝日の3面には、「米、尖閣対立に危機感」の見出しがあり、クリントンが今日からの訪中時に尖閣の事態沈静化を中国に要請すると記事にある。テレビ報道は、元日本財団の右翼で石原慎太郎の子分の山田吉彦を出演させまくり、尖閣開発の必要性と正当性をプロパガンダさせ、世論を対中強硬論のナショナリズムへ誘導する一方だが、新聞(朝日)の方は比較して冷静な論調を維持し、政府の外交を支持して見守る姿勢になっている。報ステの三浦俊章も同じ。石原慎太郎に与していない。その朝日の3面の記事の中で、米国の2人の外交専門家が登場して尖閣問題を語っている。非常に興味深い。米外交問題評議会の上席研究員のシーラ・ラミスはこう言っている。「中国政府は、これ以上何かの事件が起こることを防ごうとしているように見える。日本についてはやや心配だ」。率直で的確な見方であり、私も同感だ。もう一人、アメリカン・エンタープライズ研究所の日本部長のマイケル・オースリンはこう言っている。「もし中国が尖閣諸島を占領しようとすれば、米国はおそらく関与するだろう。ただ(略)米国は中国と戦争する危険を冒すとは思わない。日本は少なくとも(有事の)初期段階は、自国の領土は自ら守って欲しいというのが、ワシントンの見方だと思う」。朝日は、ラミスをリベラルの論者の代表として出し、オースリンを保守の論者の代表として出している。

オースリンの議論は見逃せない。尖閣有事について、米国の方針をストレートに語っている。二つある。一つは、米国は中国と戦火を交える意思はないということ。もう一つは、尖閣有事は日本は独力で中国と戦えということ。通常、言われているところの、尖閣防衛は日米安保条約適用の範囲だという説明は、米国は尖閣について日本の安全保障の側に立つが、それは中国軍に対して米軍が作戦行動するという意味ではないということである。尖閣について、日中有事となったとき、米国は現在の外交戦段階のように中立の立場は採らず、同盟国である日本を支持して中国と対峙する。しかし、それは直接の軍事発動を意味しない。オースリンは米国の本音を吐露している。われわれが注意して観察しなくてはならないのは、すでに米国の外交専門家は日中の軍事衝突をリアルに想定しているという事実と、尖閣有事を契機とした日本の軍事力強化(改憲と核武装)を方向性として期待しているという事実である。今日(9/4)からの訪中で、クリントンは戴乗国と会談する。当然、尖閣の「対日3条件」とAPECでの日中首脳会談の問題が焦点になるだろう。戴乗国は、クリントンに日本が「対日3条件」を呑むよう働きかけを依頼するに違いないが、米国が日中関係を改善方向に助力するかどうかは怪しい。クリントンの表面上の言葉は、日中の平和的関係を歓迎し要請するものだが、米国の裏の本音は、日中を軍事衝突に導くナイの戦略にある。

さて、Twitterでも論じたが、日中が尖閣で有事となった場合、この衝突は全面戦争に発展する可能性が高い。そして、サイバー戦で国民総動員する総力戦から、さらに核戦争に繋がって行く危険性が高い。私はそう予想している。そうなる理由の一つは、この戦争がイデオロギーの戦争の性格を濃くするからだ。米国が思惑するような、限定的な衝突(小競り合い)で止まり、日本が改憲と核武装する体制に移行して終わりというような、そういうスタティックでコントローラブルな戦争にはならない。有事が発生し、どちらの軍が尖閣を確保しても、必ず相手側の世論が沸騰して奪還作戦の発動となる。想像すればいい。尖閣が中国軍に占領されたとき、日本の世論がそれを認めるだろうか。その事情は中国でも同じだ。仮に自衛隊が一戦に勝利したとき、人民解放軍は間髪を置かず雪辱戦に出ざるを得ず、そうしなければ共産党政権は民衆に倒されてしまう。尖閣有事はエスカレートが必至で、戦争が拡大しないと予想する者は一人もいないだろう。中国軍が大規模攻勢に出て来れば、当然、自衛隊も投入戦力を増大させて応戦、犠牲を払って尖閣を防衛死守となる。その間に経済制裁の応酬と過激化のプロセスが挟まり、マスコミによる憎悪扇動と戦意高揚のプロパガンダのヒートアップがある。マスコミが戦争報道を仕切るから、国民意識的には瞬時に総力戦になる。日本国内の中国人、中国国内の日本人は、嫌がらせを受けて平常の生活権利状態を失う。

私の予想では、日中戦争は、大きな戦闘の度に米国の調停が入って停戦状態になり、暫時的講和で領土の線引きが行われ、一時的に平穏状態になり、またそれが破られて大きな戦闘が勃発し、徐々に激化し拡大すると共に戦線が北上する経緯を辿る。戦争が終結するまで、5年か10年はかかるだろう。日本でこの戦争を指導するのは、石原慎太郎や橋下徹のような右翼政治家だ。政権は完全に右翼の手に握られ、右翼が悲願としていた法制度体系が地上に実現する。それは、具体的には維新の八策に構想として書かれているもので、加えて、治安維持法が復活する。反戦左派勢力は非合法化され、国家反逆罪容疑で指名手配された者は、公安(特高)に逮捕されて尋問中に拷問死させられる。徴兵制が敷かれ、靖国神社は国営化され、戦死した日本軍兵士は英霊として祀られる。自衛隊は正式に日本軍(国軍)となる。核武装は改憲と同時に行われ、一気にハイテクの核ミサイルが量産され装備される。有事と改憲の後の日本は、ワイマール・ドイツがナチス・ドイツに変貌したように、瞬く間に強大で凶暴な軍事国家に姿を変える。中国との戦争を続けながら。戦争を指導する極右(石原・橋下)は、戦争に勝利する戦略目標として敵国の共産党政権の打倒を目指す。この判断と戦略は、イデオロギーの論理と動機で導出され措定されるものだが、同時に、軍事的な見地からも当を得たものではある。共産党政権が打倒されれば、中華人民共和国が崩壊するからだ。

中華人民共和国が崩壊し、ソ連のように国家が解体されれば、この戦争は日本の勝利となる。すなわち、戦争勝利の近道のウイニング・ストラテジーだ。日本は、尖閣有事が勃発して改憲して以降、すぐさまチベットやウイグルの独立勢力を公然と支援し、自衛隊や民間右翼の諜報要員を送り込んで破壊工作を活発化させる。中国国内の反共分子に資金と武器を与え、謀略と攪乱で共産党政権を揺さぶる動きに出る。戦前の右翼が中国大陸でやったことと同じことをする。一方の中国にとって、戦争の最終目標は靖国神社の殲滅と日本の右翼勢力の一掃になる。なぜなら、靖国神社と反共右翼を野放しにしておくと、何度中国軍が南西方面で勝利して停戦しても、必ず次の大きな戦争に繋がるからだ。日本の中国への侵略戦争は、靖国神社を巣窟とし起点とするイデオロギーによってドライブされる。根元を断たないと戦争は止まず、中国の国家百年の安全保障のため、靖国解体を軍事目標とせざるを得ない。一つは、日本が劣勢になり敗色が濃厚になる中で、日本で反右翼・反靖国・親中国の政治勢力が台頭し、右翼政権を転覆させて中国と講和するという道がある。しかし、この想定の現実性はあり得ず、日本は太平洋戦争時と同じく、最後まで一億玉砕を選んで軍(右翼)と運命を共にする可能性が高い。そうなると、中国としては全土占領と無条件降伏が目標になるのである。戦況を優勢に進めた場合、戦争の終盤、中国は韓国とロシアを引き入れて連合軍を形成し、日本に無条件降伏を迫るだろう。

尖閣有事から発展するこの戦争で、日本は、共産党政権の打倒と中華人民共和国の解体をめざす。中国は、靖国神社の殲滅と日本の右翼勢力の一掃をめざす。今、尖閣で揉めている時点で、来るべき戦争がイデオロギーの戦争である性格的事実は十分に察知できることだ。石原慎太郎や橋下徹が中国と戦争し、韓国を屈服させようとするのは、右翼の理想を地上に実現するためである。「ヤルタ・ポツダム体制の打破」のためだ。


 
by thessalonike5 | 2012-09-04 23:30 | Trackback | Comments(0)
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