鉄道運行に伴う2030年の消費電力量を10年比で2割削減へ――。国土交通省が7月末に新たに掲げた目標数値に対し、国内の鉄道事業者から反発が相次いでいる。ブレーキをかけた際に生じた電力を別の列車の加速に利用するシステムなど、鉄道各社は省エネに向けた様々な施策は積み上げてきている。ここにきて政府の「協力要請」は唐突にみえ、疑問の声が渦巻いている。
7月30日。国交省が開いたJR7社と私鉄16社が参加した「エコレールラインプロジェクト推進検討会議」。鉄道事業の省エネ化に向けた取り組みを議論するこの初会合で、30年に鉄道の消費電力量と二酸化炭素(CO2)排出量をそれぞれ2割、削減する目標値が示された。
これに面食らったのは参加した鉄道事業者たちだ。「すでに環境配慮の取り組みを進めており、厳しい数値だ」「技術革新がないと達成は困難だ」「相当な投資が必要で、採算性が疑問だ」。反発が相次いだのは、突然の要請だったことに加え、目標値が「10年比」で設定されていることも大きい。
各社は10年までにも省エネや環境配慮の施策を地道に進めてきているが、そこをスタート点とされては、その努力が数字上は水泡に帰してしまうからだ。
電気事業連合会の統計では、全国の鉄道の電力使用量は大口の産業が使う電力量の約6%を占める。機械(26%)、鉄鋼(13%)、化学工業(10%)に次ぎ、食料品(6%)と肩を並べる水準だ。国交省はこの部分に切り込み「鉄道路線を丸ごとエコにする」と掲げる。しかし、運行本数の維持や、安全を最優先とする対策も必要な鉄道事業者にとって、たやすくクリアできる目標数値ではない。
京王電鉄が力を入れる電車のモーターを効率良く動かす「VVVFインバーター制御装置」を例に挙げよう。走行用消費電力の削減につながるこの装置を、京王は9月7日付ですべての営業車両に導入を完了するが、実は採用を開始したのは1991年度のことだ。
車両の新造時などに順次、導入を進め、20年以上をかけてようやく、京王線・井の頭線の合計843両がVVVFインバーター制御車両化されることになった。整備率100%は国内の鉄道大手では初めて。例えば京王線の「7000系」の10両編成を改造し、同制御装置を搭載する際の費用は約2億5000万円とされる。投資負担などを考えた長期的な戦略によって、この省エネ対策をトップで実現できた。
東京電力、東京ガス、小田急電鉄、京王電鉄、JR、東京急行電鉄、東武鉄道、エネット、NTT、西武鉄道
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