[尖閣と日米中]複雑化への対応誤るな

2012年9月3日 09時40分
(26時間40分前に更新)

 尖閣問題が複雑化しつつある。三つの側面が複雑に絡み合い、相互に影響し合って、解決をいっそう難しくしている。冷静に問題を解きほぐし、何がいま重要なのかを日中双方で確認することが重要だ。

 第一の側面は、対抗措置が対抗措置を呼ぶ「負の連鎖」が次第に現実のものになりつつあるという点である。

 東京都の尖閣諸島調査団は、国に提出していた上陸許可申請が許可されなかったため、魚釣島など3島を洋上から調査した。

 日本政府が上陸を許可しなかったのは中国への配慮からだ。対立をエスカレートさせないという意味では賢明な判断である。

 中国の国営テレビはさっそく、この事実を「不法調査」だと報じたが、日本政府が上陸を認めなかった事実にも繰り返し触れている。日本政府の配慮に中国側が応えたとみられる。

 ただ、国有化を認める条件として石原慎太郎東京都知事は、尖閣への漁船退避施設整備などを求めている。これを受け入れれば中国が反発し、拒否すれば国内から反発が予想される。

 日中双方ともかじ取りは容易でない。

 複雑化の第二の側面は、当事国の日中だけでなく、米国も、身動きが取れない状態になってきた、という点だ。こと尖閣問題に関して浮上しているのは、「日米VS中国」の構図ではない。米国を自分の側に引きつけようと日中双方が綱引きをしている構図なのだ。

 8月下旬、米国務省の定例記者会見で、尖閣をめぐってヌーランド報道官と中国人記者が激しいやりとりを交わした。

 米国での尖閣の呼び方は「尖閣諸島か釣魚島か」と問われた報道官は「尖閣」だと答える一方で、「領土問題に関しては日中どちらの立場も取らない」と補足した。

 記者から矛盾を指摘された報道官は「アメリカは領土問題に関して特定の立場は取らないが、日米安保条約が適用される」と、苦しい説明に終始した。

 領土問題に関して中立的立場を表明する米国は、あちら立てればこちら立たず、の板挟みにあっているのである。

 複雑化の三つ目の側面は、米垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの沖縄配備を尖閣問題と絡める議論が広がっていることだ。尖閣が危ない、だからオスプレイが必要、だという議論である。

 米国が尖閣防衛のため中国とことを構えるという事態は考えられない。安全保障面で深い結びつきを維持する台湾も尖閣諸島の領有権を主張しているだけになおさらだ。

 米国頼みの冷戦時代の思考を引きずりオスプレイに尖閣防衛の「助っ人役」を期待するのは、現実のリアルな認識を妨げかねない。

 尖閣は領土問題として、オスプレイは、普天間飛行場の危険性除去の問題として、切り離して考えるべきだ。複雑化する現状を軍事問題に単純化し、軍備増強で解決しようとするのは危険である。

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