核物質防護とは、核物質を盗もうとする者や、原子力施設を破壊しようとする者から核物質や施設を守ることです。核物質防護は盗んだ核物質を原料にして核兵器が作られるのではないかというシナリオを想定しているため核不拡散を確保するための手段の一つと言われています。
施設内の核物質あるいは輸送中の核物質が盗まれるケースは日本では一度も発生していませんが、世界的に見た場合、いくつかの事件が発生しています。最近の例では、ドイツやチェコで発覚した密輸核物質の例が有ります。
核物質を盗み出す行為は、2つ想定され、外部から侵入して盗む場合と、内部の者が外に持ち出す場合とが考えられますが、いずれの場合も内部状況の詳細を把握していないと成功しないと考えられています。
わが国の場合、十分な防護措置がなされているため、欧米で発覚したと同様の事件がわが国において発生する可能性は極めて低いと考えられています。
核物質防護(PP)でも、取り扱う核物質の形態や量、施設の性格や立地条件などが異なる各施設での防護措置の実施にあたっては統一的な考え方に基づいて行うことが重要であるとの認識のもとPP基準の体系化を図っています。
輸送に関しても、安全輸送の確保を第一の目的に、より確実な防護措置を目指し、輸送情報の適切な管理、通信連絡体制の充実を図っています。なお、核物質防護に関する詳細な情報の管理については、核物質防護の観点から必要最低限の範囲に限定することが、原子力の理解を得るための広報活動との関係から重要であるとの認識のもと、施設公開および輸送終了後のプレス対応などに努めています。
昨今、情報公開が時代の流れになっていますが、情報を公開しない理由の一つに核物質防護があります。核物質防護の目的は、簡単に言うと「泥棒対策」ですから、どのような防護を行っているかという情報や、盗んでやろうという出来心をもたせるような情報はきちんと管理しなければなりません。
そこで、原子力の理解を得るために必要な情報で、核物質防護に影響を及ぼさない情報を積極的に公開し「透明性」を上げることが重要になってきています情報公開を進めるうえで重要なことは、核物質防護の名を借りて不必要に情報を隠さないことです。
核物質防護は社会状況とのバランスが重要ですが、更に国際的な状況も加味しなければいけません。他国が非公開にしている情報をわが国が公開すると他国に迷惑がかかります。このような意味で、国際社会とのバランスをも十分考慮して進めています。