日本プロ野球選手会は、未来の日本プロ野球の発展のために、ワールドベースボールクラシック(WBC)について、主催者であるWBC, Inc.(アメリカのMLBとMLB選手会の共同設立会社)に対して、
オリンピックや、FIFAワールドカップのような通常の国際スポーツイベントにおいて、参加国の
当然の権利として認められている代表チームのスポンサー権、代表グッズのライセンシング
権(商品化権)を、参加国に認めること
を求めています。
選手会では、このような代表チームのスポンサー権、日本代表グッズのライセンシング権(商品化権)が日本に認められることにより、次世代のプロ野球選手の育成や日本野球のさらなる普及、発展につなげることを目指しています。
では、何が問題なのか、Q&A型式で、ご説明します。
1.いったい「何」が問題?不合理なの?
2.どうして不合理になったの?
3.WBCにとって日本代表がもたらしているものは?
4.他の国際スポーツイベントはどのようになっているの?
5.今まで選手会としてどのような交渉をしてきたの?
6.アメリカのMLBとMLB選手会はどのように主張しているの?
7.日本の選手はどう思っているの?
8.これからどのように交渉していくの?
先行きが見えない大会設立当初、MLBの選手が多く出場してくれない可能性がある状況、大会収支が成り立つか見えない状況から、当初から盛り上がりを見せる可能性が高かった日本マネーを大会収支の中核に据えた戦略がとられたと推測します。
実際、東京ラウンドについては読売新聞事業部に売却され、放映権やスポンサーシップの販売については電通に売却され、2006年には大会売上の約半分に及ぶ金額がこの2社から事前に約束されて提供されました。
つまり大会の収支リスクをなくすために日本マネーを先に確保したわけです。
ある意味MLBのビジネスセンスが優れているという部分にもなるわけですが、この中に本来NPBがその価値を保有するべき日本代表に関する価値がどさくさにまぎれて含まれてしまいました。
振り返ってみると、MLBは日本代表の価値で大会運営リスクを担保したわけです。
しかし、2つの大会を経て大会の収益構造は安定したものとなっています。チケッティングや放映権収入だけでも十分に収益を生み出すものとなっています。
仮に大会設立当初はこのような異常なことが許されても、このような状態で日本代表の価値を強奪される理由があるとは思いません。
実際は、日本や韓国はトッププロが出場し、全力で戦ってきましたが、アメリカは必ずしも多くのトッププロが参加しない大会となっています。
この姿勢は収支にも現れており、アサヒビールや日本マクドナルドなど、日本の大きな企業がスポンサーになり大会を支えていますが、アメリカは、MLBのレギュラーシーズンへのスポンサーの影響を考えるからか、大会のスポンサーは多くは獲得していません。実に大会の非常に多くのスポンサー収入が日本からということになっており、結果、日本マネーに大きく依存した大会となっています。
実質的にはアサヒビールや日本マクドナルドは日本代表スポンサーであるとも言えますから、事実上日本代表に依存した大会となっているとも言えます。
にもかかわらず、大会利益の分配は、アメリカのMLBとMLB選手会が大会収益の66%を独占する形となっており、日本は代表スポンサー権など、本来認められている権利が認められないことにより、優勝賞金があって初めて黒字になるというようなギリギリの運営を迫られています。
誤解を恐れずいえば、本気で参加して価値を提供している日本代表の価値を本気で参加していないMLBに利益として差し出している大会とみることすらできるわけです。
WBCは、設立当初、新しい国際スポーツイベントであり、選手会としても、まず、この国際的な野球イベントを成功させ、真の野球世界一を決める大会として尊重するため、これまで協力してきました。
第1回大会前から、大会時期、収益分配の不平等、参加国の対戦方式などに問題があったものの、初期段階だったということもあり、このような不合理な条件が適用されてきたのです。
しかし、既に二つの大会を経て、WBCは日本代表ライツがなくても十分に収益力のある構造になっています。
実際、第二回大会は、チケッティングや放映権の収入も大きく増加し、1800万ドルの利益を生んでいます。この金額は日本代表ライツがなくても大会が十分に利益を生み出すことが出来ることを示しています。
これ以上日本代表ライツをWBCに強奪されるという構造を正当化する理由はありません。
代表チームが競う、オリンピックや、FIFAワールドカップのような通常の国際スポーツイベントにおいては、参加国に対して、代表チームのスポンサー権、代表グッズのライセンシング権(商品化権)が、参加国の当然の権利として認められています。
例えば、サッカーの代表スポンサー権を有する、JFA(日本サッカー協会)は、キリングループ、アディダスなどの企業から、合計年間数十億ものスポンサー収入を得ており、これによって代表チームの強化や育成に多くの費用が充てられ、代表チームの発展につなげています。
2010年のFIFA男子ワールドカップ南ア大会でサッカー男子代表が躍進し、2011年FIFA女子ワールドカップドイツ大会でサッカー女子代表(なでしこジャパン)が優勝したのも、このような代表スポンサー権に基づく収入が大きく貢献しています。
<主張その1> WBCは国際貢献が目的
アメリカのMLBとMLB選手会は、WBCはIBAF(国際野球連盟)への分配を行っていたり、また野球が盛んでない地域の代表を招待したりするというような、野球振興、普及の国際貢献を行っているわけで、日本も代表ライツを差し出してこれに協力するべきだと主張しています。
しかし、本来、国際貢献を行うのであれば、参加国の経済規模に応じて行うべきであり、アメリカは、日本の5倍とも7倍とも言われるアメリカのメジャーリーグの経済規模で国際貢献を行うべきです。
実際、WBCは、日本マネーに大きく依存した大会となっているわけですから、アメリカは国際貢献を果たしているとはいえず、逆にその意味での国際貢献を代表ライツで大きな価値を提供している日本に押し付けているという構造になっているわけです。
WBC問題に関し、2011年7月22日に開催された選手会臨時大会では、もちろん日本の野球ファンのために、選手としてWBCに参加し、大会を盛り上げたいという意見がありましたが、現状の不合理な条件では、参加したくても参加できないとの意見が多数を占め、全会一致で、現在のWBCにおいて参加国に課せられている不合理な参加条件を、主催者であるMLBとMLB選手会が変更するまでは、WBCには出場しないことが決議されました。
臨時大会後の記者会見での新井会長のコメントは、以下のとおりです。
「今回の大会では、WBCの問題を重点的に話し合いました。その結果、今のままの不合理な条件では、参加したくてもできない、日本野球の発展のためを考えればするべきではない。そういう意見で一致しました。WBCが本当の意味での国際大会として発展していくために、選手会でも話し合いを重ねていきたいと思います。」
選手会では、代表チームのスポンサー権、代表グッズのライセンシング権(商品化権)が日本に認められることにより、次世代のプロ野球選手の育成や日本野球のさらなる普及、発展につなげることを目指しています。
2011年7月に開催されたNPBオーナー会議でも、この問題に関して、NPB12球団が交渉団を結成し、アメリカのMLBやMLB選手会と交渉を行うことが決議されていますので、今後、選手会は、NPB12球団とも協力して、交渉にあたります。
選手会は、これまでと同様、定期的に開催されるWBC運営委員会での交渉のほか、アメリカのMLBやMLB選手会との個別交渉において、今後も交渉を続けていきます。