【社説】サムスンとコーロンの敗訴から得る教訓

 韓国のコーロンインダストリーが米国デュポン社と争ったアラミド繊維技術をめぐる損害賠償訴訟で、米バージニア州連邦地裁は8月30日(現地時間)、コーロン製品の販売禁止を含む原告勝訴の判決を言い渡した。この結果、コーロンは今後20年間、米国など他国でアラミド繊維の生産・販売が禁止されることになった。米裁判所は昨年11月にも、コーロンがデュポンの営業秘密を侵害したとして、コーロン側に対し過去5年間に米国に輸出した額の300倍を上回る9億2000万ドル(約720億円)の賠償を命じる判決を下している。アラミド繊維は防弾服や光ケーブルなどに使われるハイテク化学繊維で、コーロンは26年にわたり研究を重ね、2005年にようやく生産に成功した。ところがデュポンはコーロンに対し「コーロンは元デュポンの社員とコンサルティング契約を結び、デュポンが1971年に世界で初めて開発したアラミド繊維の営業秘密を盗んだ」として、裁判所に訴えを起こした。

 今回の裁判を担当した裁判長は、デュポンと他社との間で争われたアラミド繊維関連の訴訟で、これまで何度もデュポン勝訴の判決を下した人物だ。そのため先日サムスンがアップルに敗訴した裁判と同様、今回も非常に後味の悪い結果を残してしまった。このように最近になって米国企業が韓国企業を相手取り相次いで特許訴訟を起こしているのを見ると、1980年代に日本企業に同じような訴訟を相次いで起こしていたときのことを思い起こさせる。同種の訴訟はここ2-3年の間に急増しており、昨年の時点で米国の裁判所では計117件が審理中だ。

 今後、韓国企業は特許問題に対する発想の大転換が必要になった。米国企業は特許や営業秘密などの知的財産権を、次世代の戦略分野の一つとして位置付けているからだ。これを受けて米国での知的財産権保護の範囲も、以前に比べて範囲が大幅に拡大している。最近はチアガールの衣装、レストランのメニューといったものまで商標法で保護されているほか、特定の製品にのみ使われる独自の色にまでデザイナーの権利が認められた。

 世界知的所有権機関(WIPO)の統計によると、韓国の2011年の国際特許出願件数は1万447件で、米国、日本、ドイツ、中国に次いで世界5位だ。しかし韓国企業が国内で出願した特許が無効とされる割合も毎年60-70%に達しており、世界でも最高水準だ。一方で特許権者が裁判で勝訴する割合は20%と世界最低水準で、発明家が裁判で勝った際、特許を侵害した人物から受け取る賠償額も平均5000万ウォン(約345万円)と最も低額だ。「特許はタダ」という認識が法律関係者や企業関係者はもちろん、社会全般に定着しているからだ。

 かつて世界最強のエレクトリック企業だったソニーは、技術開発の勢いが衰えると同時に衰退の道を歩み始めた。政府はソニーの事例を教訓に、独創的な技術の開発を後押しする国家戦略を進めていかねばならない。また、企業も社員が新技術を開発した場合には破格の待遇を約束するなど、時代の変化に見合った特許戦略を打ち立てていかなければならない。

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