2009年07月13日

●「オバマ大統領は何をしているか」(EJ第2611号)

 ラクイラ・サミットが終わりましたが、G8首脳の中では在職
日数が最短のオバマ米大統領はどうだったのでしょうか。果たし
て、リーダーシップを発揮できたのでしょうか。
 テレビ報道だけで見ていると、何となくかつての米大統領より
も影が薄かったように感じた人が多かったのではないかと思いま
すが、結構がんばっているのです。
 オバマ米大統領は、初日の夕食会で「核安保サミットの開催計
画」を発表して各国首脳を驚かせ、主要国経済フォーラム――M
EFでは自ら議長を務めて、温暖化問題に消極的な米国のイメー
ジ転換を図って次のように述べるなど、なかなか指導力を発揮し
ているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 米国は温室効果ガスの主要排出国としての責任を果たしてこ
 なかったが、そうした日々は終わりだ。――米オバマ大統領
―――――――――――――――――――――――――――――
 実はオバマ米大統領は、国内の状況があまりにひどい状態なの
で、どこかの首相と同じように外交で点を稼ごうとしているとい
われているのです。
 米国のマスコミは、大統領就任後100日間は「ハネムーン期
間」と称し、その期間中に大統領がやったことについてはあまり
厳しい批判をしない慣習になっています。それでも現下の米国の
金融・経済は厳しい状態であるので、大統領のやり方によっては
ハネムーン期間であっても厳しい評価をすることがあります。
 2009年4月29日――この日はオバマ氏が大統領に就任し
てちょうど100日目に当たるのです。米調査機関のピュー・リ
サーチ・センターは、米主要新聞、3大ネットワーク、『ニュー
ズウィーク』誌や公共放送7社による1261本の報道内容を調
査した結果を次のように発表しています。パーセンテージは、報
道のうち大統領に肯定的な内容の数字をあわわしているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     オバマ現大統領   ・・・・・ 42%
     ブッシュ前大統領  ・・・・・ 22%
     クリントン元大統領 ・・・・・ 27%
―――――――――――――――――――――――――――――
 ギャラップ社の世論調査では、オバマ大統領の就任以来の平均
支持率は63%であり、非常に高いのです。しかし、この数字を
上回った米大統領がいるのです。それは、1977年のカーター
大統領の69%です。
 注目すべきはこのカーター政権の米国なのです。このカーター
大統領の異常に高い高支持率はどの後どうなったでしょうか。そ
れは大きな失望に変わったのです。どうして、そのようなことが
起こったのでしょうか。カーター政権については、ひとつの事例
研究として検証してみたいと思います。
 振り返ってみると、昨年の11月4日に行われたオバマ候補に
よる大統領選勝利演説で彼は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 今こそが大切な時なのです。今こそ、われわれは人々をもう一
 度職に就け、子どもたちのために機会の扉を開け、繁栄を取り
 戻し、平和という大義を推進し、アメリカン・ドリームを再生
 すべきなのです。そして、再確認すべきなのです、基本的な真
 理を。すなわち、多数からひとつへであり、われわれは一つな
 のだということを。息をし続ける限り、われわれは希望を持ち
 続けるのだということを。われわれが冷笑主義と疑いで応じら
 れる場所や、われわれにはできないと言ってくる人たちに対し
 て国民の精神を端的に表す不朽の信条でわれわれは応じます。
 大丈夫、われわれにはできる、「Yes,we can.」と。
  ありがとう。皆さんに神の祝福を。そして神がアメリカ合衆
 国を祝福しますように。
       ――2008年11月4日大統領選勝利演説より
               『オバマ演説集』朝日出版社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 とても見事な演説です。しかし、「われわれはできる」といい
ますが、一体何ができるのでしょうか。
 最近は、現実の世界とネットの世界では、世論が180度違う
ことがよくあります。民主党の小沢問題にしても現実世界の新聞
紙上では「説明責任を果たしていない」とする人が80%となっ
ているのに、ネットの世界では逆転しています。
 『ウォールストリートジャーナル』誌がウェブサイトでブログ
を使って実施している調査によると、オバマ大統領の支持率はさ
んざんなのです。
 最高ランクは「A」ですが、それは10%に達しておらず、最
下位の「F」は76.6 %にもなっているのです。これも逆転の
調査結果です。
 もっとも『ウォールストリートジャーナル』誌の調査ですから
一般的なイメージでの人気ではなく、オバマ政権による金融危機
への対応に不満が高まっているものと考えられます。これは、オ
バマ大統領の責任というより、前任者の責任に帰すべきですが、
国内の大統領に対する評価は低迷気味なのです。
 ところで、オバマ氏とは何者でしょうか。
 政治のリーダーとしてどのような思想を持ち、どのような政策
を実践しようとしているのでしょうか。
 このように問われると、オバマなる人物について、米国人でも
あまりにも不明部分が多くてわからないという人が多いのです。
大統領選のときから、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポ
スト、ロサンゼルス・タイムズという大手新聞、そしてCBS、
NBC、ABCの3大テレビネットワーク、CNNテレビなどは
民主党側に立った報道が多く、オバマ候補の影の部分については
ほとんど報道が行われていないのです。
 明日から、少しずつバラク・オバマなる人物の正体に迫ってい
きたいと考えています。     −―[オバマの正体/01]


≪画像および関連情報≫
 ●オバマ大統領/ハネムーンは終わった
  ―――――――――――――――――――――――――――
  今週水曜日に発表されて調査によると、特にここ数ヶ月間に
  行った自動車産業での救済、政府の急激な出費、その他の経
  済政策について、オバマ大統領の資質に国民が疑問符をつけ
  始めている。今年の1月から大統領としての仕事を始めた彼
  だが、今まで比較的安定した支持率を保っていたが今回の調
  査では前回より5%支持率を落とし56%という数字になっ
  ていると、NBCニュースとウォール・ストリートは伝えて
  いる。
  http://amefuji.blog22.fc2.com/blog-entry-112.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

ラクイラでのオバマ大統領.jpg
ラクイラでのオバマ大統領
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2009年07月14日

●「オバマ出自には疑惑がある」(EJ第2612号)

 オバマ米大統領には、その出自をめぐる疑惑があるのです。こ
の疑惑をもとに大統領に立候補するに当たって、「大統領立候補
無効」の訴えが、各地で十数件起こされているのです。
 実は、米国憲法の第2条第1項には米国大統領になるための基
本的な資格条件として次のことが定められているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     1.本人が米国で生まれているか
     2.両親がともに米国国籍である
―――――――――――――――――――――――――――――
 この場合、両親のうち一人が外国籍の場合は、米国籍の所有者
は10年以上米国に住んでいること、しかも、そのうち少なくと
も5年間は16歳以降であることという条件になっています。
 オバマ氏自身は「自分の出生地はハワイ州のホノルルである」
と主張しているのですが、それに疑いが持たれているので、訴訟
が起こされるのです。
 オバマ氏は、ケニア人の黒人留学生を父に、カンザス州出身の
白人女性を母に、1961年8月にハワイで出生している――こ
れは公式にいわれていることです。
 オバマ氏の父は「バラク・オバマ」といい、オバマ氏は父の名
前をそのまま受け継いだことになります。さて、オバマ氏の名前
は、ミドル名まできちんと書くと、次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
        バラク・フセイン・オバマ
―――――――――――――――――――――――――――――
 この「フセイン」というミドルネームは、ケニア人のイスラム
教徒だった祖父であるフセイン・オニャンゴ・オバマからの継承
なのです。
 オバマ氏は、イスラム教徒をあらわす「フセイン」というミド
ルネームを徹底的に隠しています。イスラム教徒に別に罪がある
わけではありませんが、キリスト教が絶対多数の米国ではそれは
明らかにマイナスなのです。
 なぜなら、イスラムは往々にして非民主主義的価値観や、最悪
の場合、テロリズムに結びつけて考えられることが少なくないか
らです。それにイラクのフセイン元大統領を連想されることもマ
イナス要因であったのです。
 しかし、大統領選ではこの「フセイン」というミドルネームは
ほぼ完全に伏せられたのです。それは民主党寄りの大手メディア
が協力したからです。もし、共和党陣営で「フセイン」を口にす
ると、オバマ陣営は「人種や宗教の差別である」として、激しい
反撃が浴びせられたので、オバマ氏のミドルネームを口にするこ
とはタブーとなったのです。
 しかし、もし共和党側の候補者が、「フセイン」というミドル
ネームを持っていたとすると、ニューヨーク・タイムズをはじめ
とする大手メディアは、その政治家のルーツを検証する調査報道
を徹底的にやったであろうことが予測されるのです。ところが、
オバマ氏の場合は、大手メディアはこの件に関しては一切報道し
なかったのです。大手メディアが民主党寄りとはいえ、これも不
思議な話であるといえます。
 オバマ氏に関しては、ハワイに母親であるアン・ダナムさんの
両親が住んでいたことから、オバマ氏は実際にはケニアで生まれ
たにもかかわらず、ハワイで出生届を出したのではないかと疑わ
れているのです。
 仮に生まれたのはハワイであることが事実だとしても、オバマ
氏が生まれたとき母親のアンさんは18歳であったので、10年
以上米国で住んでいる――少なくともそのうち5年以上は16歳
以降という条件に抵触し、子供に米国国籍を与える手続きができ
ないはずなのです。
 そういう疑惑があるので、米国の100万人近くの有権者は、
オバマ大統領の出生地に疑惑があるとして、ハワイ州政府に対し
て、オバマ大統領の出生記録のコピーの提出を要請しているので
すが、ハワイ州政府はこれに応じていないのです。
 2008年の夏には、ニュージャージー州の弁護士レオ・ドノ
フリオ氏は、次の趣旨の訴訟をニュージャージー州の裁判所に起
こしています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 オバマ氏は父親がケニアの宗主国のイギリス国籍であり、母親
 のアメリカと二重国籍だったので、『アメリカ国内で生まれた
 アメリカ国籍の人間』という要件を満たさない。
 ――古森義久著、『オバマ大統領と日本沈没/知られざる変幻
                と外交戦略』/ビジネス社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 この訴訟とほぼ同時期に、ペンシルベニア州の弁護士フリップ
・バーグ氏は、同州の裁判所に対して、次の趣旨の訴訟を起こし
ているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 オバマ氏は実際には父親の祖国ケニアで生まれ、ハワイ州の出
 生証明書は偽造である。  ――上記古森義久氏の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 これ以外にも数十件の訴訟が起こされていますが、ドノフリオ
弁護士の訴えは、2008年12月4日に最高裁で却下されてい
るのです。しかし、事実は何一つ明らかになっていないのです。
 また、奇怪なことに、この手の訴訟騒ぎは大統領をめぐる疑惑
であって、大きなニュースであるにもにかかわらず、大手メディ
アでの報道は一切行われていないのです。一体どうなっているの
でしょうか。
 出自などは、間違っていないのであれば、きちんと証明できる
事柄です。しかし、なぜ、オバマ大統領はそれを進んでやらない
のでしょうか。それどころか、オバマ大統領は有力な弁護士を多
く雇い入れ、何とか事実を隠ぺいしようと、必死になっていると
いうのです。          −―[オバマの正体/02]


≪画像および関連情報≫
 ●書籍『オバマ国家』にはオバマ出自に詳しく書いている
  ―――――――――――――――――――――――――――
  『オバマ国家』の筆者は、ジェローム・コーシ氏。自ら哲学
  博士の肩書をつけている。4年前の大統領選の際には、民主
  党大統領候補だったジョン・ケリー上院議員のベトナム戦歴
  にいちゃもんをつける本を出して、物議をかもした人物だ。
  ケリー陣営は当初、この本を全く無視していたが、選挙戦後
  半で響いてしまったのは記憶に新しい。2007年、ヒラリ
  ー・クリントン上院議員ら民主党政治家が次々と大統領候補
  に立候補するや、コーシ氏は全米各地で講演し、「ビル・ク
  リントンをホワイトハウスに近づけるな。やつが大統領の時
  には連続レイプ事件が全米に蔓延したからだ」「マケインも
  ダメだ。やつは麻薬組織とつながりのあるイスラム過激派を
  支援するロビースト団体から政治資金を得ている」などとぶ
  ちまくった。そしてオバマ氏が正式に民主党候補に指名され
  るタイミングを待っていたかのように、本書を世に問うたと
  いうわけだ。
  http://blogs.yahoo.co.jp/yoshimizushrine/55334396.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

オバマの出自に詳しい「オバマ国家」.jpg
オバマの出自に詳しい「オバマ国家」
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2009年07月15日

●「なぜ、出自をそこまで隠すのか」(EJ第2613号)

 オバマ大統領の出自に関する有権者からの訴訟に関しては、国
際政治経済学者の浜田和幸氏の著書に詳しく記述されています。
この事実を知ると、オバマ氏のイメージが大きく変わると思うの
で、ご紹介することにします。
 オバマ大統領は、自分の出自を探られるとよほど困ることがあ
るのでしょう。しかし、自分の出生証明などの出自記録をすべて
隠すのはかなり大変なことなのです。生まれた病院や出生地の記
録、学校関係の記録、パスポートの記録など――これらの情報が
一切外に出ないようにするには有能なスタッフと強い権力が必要
になるのです。
 そこでオバマ氏は、ワシントンやロサンゼルスの有力な弁護士
を多く雇い入れ、現在もそれらの記録を外に出さないようにして
いるのです。これには多額の資金がかかりますが、これに関して
浜田和幸氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 2009年4月に公開された選挙管理委員会の資料を見ると、
 オバマ選対本部が大統領選挙が終わった後も、集めた選挙資金
 のなかから100万ドル以上を使い、これらの弁護士を雇い続
 けていることがわかる。なぜ、そこまで隠そうとするのであろ
 うか?また、多くの有権者からの疑問を受け、オバマ大統領の
 出生記録を入手しようとした別の弁護士に対して、オバマ大統
 領の代理人というロサンゼルスの弁護士集団が圧力をかけた。
 彼らは、必要書類申請を取り消さなければ、弁護士活動に支障
 が生じると言っているという。実に、不可解である。そのうえ
 ウィキペディアでオバマ氏の出生に関する疑惑について書き込
 みをしようとると、すべて消されてしまうという。
     ――浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 自分の出自の記録をここまで徹底して隠そうとするのは、本当
のことがわかると自分の立場が危うくなる――具体的には、大統
領職を降りなければならなくなるからです。そうでないなら、出
自について世間の疑惑が生じたら、その記録を隠すのではなく、
積極的に開示すれば疑惑は簡単に晴れるはずだからです。
 レーガン時代に国連大使をしていたことのある黒人のアラン・
ケイズ博士は、自分が大統領選に出馬した経験もある立場から、
この問題ははっきりさせる必要があると考えて、自ら最高裁判所
にまで出かけて行き、必要な情報開示についての手続きを行った
のです。2008年12月11日のことです。
 その申請書類一式は、ジョン・ロバーツ主席判事によって受理
され、その内容は最高裁のウェブサイトで誰でも見られるように
なったのです。しかし、それがどうなったのかについては、浜田
氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ところが、オバマ大統領の就任式の直後、1月21日には、そ
 の申請書類の情報が最高裁のネット閲覧から突然削除されてし
 まったという。明らかに、オバマ大統領の側からなんらかの圧
 力が加えられたしか思えない。民主主義を標ぼうする国アメリ
 カにおいて、このような情報操作が行われるとは、にわかには
 信じがたい。しかも、ケイズ博士の代理人の弁護士に対し、オ
 バマ氏が雇ったワシントンのロバート・バウアー弁護士から文
 書が送られてきている。その内容は「ただちに申請を取り下げ
 なければ、重大な事態に直面するだろう。いっさいの訴訟費用
 はそちらの負担になることを覚悟するように」というものだ。
 これは、まさに脅迫状である。
     ――浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 1月20日までネットで見れたものが、次の日の21日には見
れなくなっている――ご存知のように1月20日にオバマ氏は大
統領に就任しているのです。大統領権限で情報開示を中止したと
いわれても仕方がないと思います。
 オバマ氏の選挙管理委員会の報告書によると、2009年1月
〜3月の3ヶ月間に950万ドルのお金が支出されており、これ
は弁護士などへの資金であるといわれています。何しろ10億円
近い金額なのです。その中には、副大統領ジョー・バイデン氏の
息子であるハンター・バイデン氏の法律事務所にも支払いが行わ
れているのです。
 オバマ大統領というのは、クリーンな政治家というイメージが
あり、多くの日本人はそう思っていると考えます。しかし、この
事実を知ると、イメージが違ってくると思います。
 『オバマ国家』という本――EJ第2612号の添付ファイル
参照――があります。2008年のはじめに出版されると、たち
まち全米ベストセラーとなったのです。著者は、ジェローム・コ
ルシ氏というハーバード大学で政治博士号を取得した学者です。
 コルシ氏によると、オバマ氏の父親は、ハワイに留学してきた
ときは、既にケニアでケジアさんという女性と結婚し、子供が2
人いたのです。そして、そのハワイでアンさんという米国籍の女
性と出会って結婚し、オバマ氏を出産するのです。したがって、
母親アンさんとは事実上の重婚になるのです。
 しかし、オバマ氏の父親は、アン母子を捨てて、アメリカ本土
にわたってしまうのです。さらに母親のアンさんは、オバマ氏の
誕生から4年後の1965年にインドネシアの留学生のロロ・ソ
エトロ氏とハワイで再婚しています。
 しかし、継父となったソエトロ氏が当時、誕生したばかりのス
ハルト政権に呼び戻されることになって、一家はインドネシアに
移住するのです。ソエトロ氏は他のインドネシア人と同様、イス
ラム教徒だったのです。
 インドネシアは米国と違い、二重国籍を認めていない国なので
す。そのため、母親のアンさんはインドネシアで生活するために
オバマ本人の米国籍を放棄していることになります。これは大統
領就任条件に抵触します。    −―[オバマの正体/03]


≪画像および関連情報≫
 ●ホット・ニュース/岸井成格『激論激場』より
  ―――――――――――――――――――――――――――
  オバマの出自は人種、民俗から言えば黒人の血が流れている
  だけでなく、ケニアからの留学生の血で母方は白人、母方の
  祖父はイングランドとスコットランドの血だが、祖母はネイ
  ティブ・アメリカン、つまりインディアン。そして母親が離
  婚し再婚した相手はインドネシア人で、イスラム教の濃いイ
  ンドネシアで育ち、その上にハワイという人種・民族のるつ
  ぼのような所で過ごした経験を持つ。大統領就任の演説でも
  オバマはやはり詩的だと感じたものに「我々は何者か」とい
  う問いかけがあった。「人類はどこから来てどこへ行くんだ
  私は誰だというのを、今日は刻み込む日です」と言ったのは
  これまでに色んな経験を積んできて、自分の出自、置かれた
  立場と戸惑い、そして民俗、人種という問題を表した哲学的
  なものだったと思う。そしてこれは今まさにアメリカが置か
  れている状況をも示す。
  http://news.www.infoseek.co.jp/special/j-is/commons0901_029.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

『オバマの仮面を剥ぐ』.jpg
『オバマの仮面を剥ぐ』
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2009年07月16日

●「オバマにあるノン・アメリカン的雰囲気」(EJ第2614号)

 オバマ大統領は、出自や生い立ちについて聞かれると、いつも
決まってこういうのです。「私は自叙伝を書いている。私の過去
について知りたいなら、それを読んでくれ。そうすれば、すべて
は氷解するから」と。その自叙伝とは次の本のことです。
―――――――――――――――――――――――――――――
         バラク・オバマ著/白倉三紀子・木内裕也訳
 『マイ・ドリーム/バラク・オバマ自伝』/ダイヤモンド社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、その本の中では、肝心の出自については曖昧のままぼ
かされています。都合の悪いことはすべて伏せられているとしか
考えられないのです。
 この本によると、母親のアンさんとオバマ氏は、継父になった
ソエトロ氏と1968年から71年までの4年間ジャカルタ地区
で暮らしていたとしています。オバマ氏が6歳から10歳までの
期間がそれに当たります。しかし、産経新聞ワシントン駐在編集
特別委員・論説委員の古森義久氏の調査によると、オバマ氏のこ
のジャカルタでの生活については、事実と異なる部分が多いとい
うのです。
 1970年にアンさんはソエトロ氏の子供を出産しています。
オバマ氏の妹に当たるマヤ・ソエトロ氏です。そのマヤさんの証
言によると、オバマ氏と一緒にジャカルタで暮らしたのは、19
73年までといっています。自伝に書いているよりも2年長く、
自叙伝と異なっています。
 添付ファイルの写真は、インドネシアで暮らしていたときのオ
バマ・ファミリーです。母親のアン・ダナムさんが抱いているの
が、妹のマヤさんです。
 また、自伝では、オバマ氏はジャカルタの私立のカトリック系
インターナショナル・スクールに入学したことになっているので
すが、古森氏の調査によると、インドネシア側での記録や証言と
必ずしも一致せず、次のような情報が出てきたというのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ●当時、バリー・ソエトロと呼ばれたオバマ少年は2年ほど地
  元の公立学校に通い、イスラム教に基づく教育を受け、イス
  ラム聖典のコーランを読誦させられていた。
 ●オバマ少年は、一時はイスラム教を集中的に教えるマドラサ
  (学院)にも通い、宗教教育を受けていた。
 ●インターナショナル・スクールの書類には『バリー・ソエト
  ロはホノルルで生まれたインドネシア国籍の少年である』と
  いう記述があった。    ――古森義久著/ビジネス社刊
   『オバマ大統領と日本沈没/知られざる変幻と外交戦略』
―――――――――――――――――――――――――――――
 こういう情報にもかかわらず、大統領選で繰り返し伝えられた
のは、次のことなのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 オバマ氏は最初からキリスト教徒であって、かつてイスラム
 教徒だったことない。
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、既出のジェローム・コルシ著の『オバマ国家』の中で
は、オバマ氏が何かのときにコーランの一節をとても流暢に口に
したということが紹介されています。これが事実ならオバマ氏は
イスラム教徒であった可能性が高くなります。
 既に述べたように、オバマ氏の出生については、明確になって
いないのです。オバマ氏は、バラク・フセイン・オバマ氏とアン
・ダナムさんとの間に生まれていますが、実はケニアで生まれた
にもかかわらず、母親の親戚がいるハワイで出生届を提出したの
ではないかという疑いが持たれているのです。しかし、ハワイ州
政府は現時点でも情報の開示には応じていないのです。
 それに加えて、母親の再婚によるインドネシアでの生活がある
のですが、そこにも不明な点があるのです。自叙伝でオバマ氏は
インドネシアで4年間暮らしたと述べていますが、6年暮らして
いるという義理の妹の証言もあります。
 さらに、「ホノルルで生まれたインドネシア国籍の少年」とい
う学校の記録が正しいとすると、母親がインドネシア人と結婚し
てインドネシアに行ったときに、オバマ本人も米国籍を放棄して
いる可能性は高いのです。インドネシアでは二重国籍は認めてい
ないからです。
 そうであるとすると、仮に後から米国籍を取得したとしても、
それは米国に帰化したことを意味し、米国大統領の資格要件を満
たしていないことになる可能性もあるのです。
 一国の大統領が自分の出自に関して疑いを持たれているにもか
かわらず、自ら情報を開示して疑惑を晴らすことをせず、権力を
行使して隠蔽しようとしているのは奇異な話です。これに対して
浜田和幸氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ホワイトハウスのロバート・ギブス報道官は「大統領の出生証
 明書はインターネット上で公開してある」と答えているが、こ
 の証明書はハワイ州政府が作成した抄書で出生場所の特定がな
 されていない。しかも、1961年生まれのはずのオバマ大統
 領の記録でありながら、当時は使われていなかったはずのレー
 ザープリンターで作成されている代物。明らかに偽造文書であ
 る。  ――浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 昨年の大統領選でマケイン候補に投票した人の中には、オバマ
氏について「得体のしれない人物」という印象を持っている人が
多く、一部には「何となく怖い」と考えて、オバマ氏に投票しな
かった人もいるといわれています。何となく彼に「ノン・アメリ
カン」的な雰囲気を感じている人が多いのです。それは、オバマ
氏自ら出自を明らかにしようとしない姿勢にあるといっても過言
ではないと思います。オバマ氏には出自だけでなく、他にもたく
さんの疑惑があります。     −―[オバマの正体/04]


≪画像および関連情報≫
 ●2008年8月7日「共同」記事/「売れるオバマ批判本」
  ―――――――――――――――――――――――――――
  米大統領選の民主党指名候補となるオバマ大統領を批判する
  本の売れ行きが米国内で好調で、ベストセラー上位に顔を出
  してきた。共和党の選挙戦術の一環ともいえ、オバマ陣営は
  神経をとがらせている。インターネット書店大手アマゾンの
  ベストセラー10冊(ノンフィクション部門、6日現在)に
  はオバマ氏の批判本が1位、3位、6位に並ぶ。このうち新
  刊で1位の「オバマ・ネーション」の副題は「左翼政治と個
  人崇拝」。オバマ氏とイスラム教との結びつきなどを強調し
  大統領になれば「民主党が失敗してきた過激な政策」を繰り
  返すと警鐘を鳴らしている。著者のジェローム・コルシ氏は
  共和党系の作家で、前回大統領選では民主党候補だったケリ
  ー上院議員を攻撃する本を出版。効果をあげた“実績”を持
  つ。                   ――「共同」
 ●添付ファイル写真出所
  浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
  ―――――――――――――――――――――――――――

インドネシアでのオバマ一家.jpg
インドネシアでのオバマ一家
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2009年07月17日

●「テレプロンプターに頼る大統領」(EJ第2615号)

 「イエス・ウイ・キャン」――これは、オバマ大統領が選挙中
に演説の最後で使っていたフレーズです。演説の中でせいいっぱ
い「夢」や「希望」や「明るい未来」を語り、最後は「イエス・
ウイ・キャン」――われわれはできるでしめくくるのです。
 ところが、大統領選の最中にヒラリー陣営は、オバマ候補の演
説は「パクリ」だとクレームをつけたのです。何のパクリかとい
うと、マサチューセッツ州知事のデバル・パトリック氏の演説と
そっくりだというのです。
 既出の浜田和幸氏の本から、オバマ氏とパトリック氏の演説の
一部を比較すると、次のようになります。きわめてよく似ている
というより、そっくりです。
―――――――――――――――――――――――――――――
≪オバマ氏≫
Don't tell me words don't matter."I have a dream".
Just words ? "We hold these truths to be self-evident,
than all men are created equal". Just words ?
"We have nothing to fear but fear itself".
Just words ? Just speeches ?
≪パトリック氏≫
"We hold these truths to be self-evident, that all men
are created equal".Just words ?
"We have nothing to fear itself". Just words ? "Ask not
what your country can do for you, ask what you can do
for your country". Just words ? "I have a dream".
Just words ?
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは当然なのです。なぜなら、同じスピーチ・ライターが書
いたからです。選挙の演説をスピーチ・ライターに依頼すること
はよくあることです。このスピーチ・ライターが、ジョン・ファ
ブローなる27歳の青年であることはよく知られています。
 しかし、それは演説をする本人がスピーチ・ライターに演説し
たい内容を話し、それをスピーチにまとめてもらうのが普通なの
です。オバマ氏とパトリック氏の2人がたまたま同じスピーチ・
ライターに依頼したのであれば、スピーチのトーンは似てくるか
もしれませんが、内容は違ってくるのが当然です。しかし、この
2人は演説の内容まで同じです。どうなっているのでしょうか。
 それは、オバマ氏もパトリック氏も、同じ人に選挙をプロモー
トしてもらっているからです。その陰の選挙プロモーターは次の
人物です。
―――――――――――――――――――――――――――――
        デイビット・アクセルロッド
―――――――――――――――――――――――――――――
 アクセルロッド氏は元新聞記者で、現在はシカゴ政界の黒幕と
いわれる人物であり、政治コンサルタントとして隠然たる影響力
と資金力を持つ民主党寄りの選挙プロモーターです。
 オバマ氏もパトリック氏もアクセルロッド氏がスピーチ・ライ
ターのジョン・ファブロー氏に書かせた原稿を暗記して話してい
るだけであるといわれているのです。アクセルロッド氏は世論を
動かす天才プロモーターです。
 そのアクセルロッド氏の現況について、浜田和幸氏は次のよう
に伝えています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 その天才演出家アクセルロッド氏は、いまやホワイトハウスの
 奥深い執務室で、オバマ大統領の顧問として、日々新たなメデ
 ィア対応に采配をふるっている。現在の最大のターゲットは、
 金融再生策や経済刺激策をどう国民に売り込むかである。ブッ
 シュ前政権時代に「影の大統領」とも椰掩されたカール・ロー
 プ顧問と同じ立場といえそうだ。このアクセルロッド氏こそが
 「夢と希望の政治」のシナリオライターである。
     ――浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、これはおかしな話です。オバマ大統領は人前に出て何
かを話すときは、どうやらすべてアクセルロッド氏の考える文案
をスピーチ・ライターが演説原稿にまとめていると思われるから
です。これでは自分の考えそのものがないということになってし
まいます。
 まさかそんなことはあるまいと誰でも考えますが、それを裏付
ける事実はいくつもあるのです。そのひとつが、「テレプロンプ
ター疑惑」です。
 テレプロンプターというのは、普通、演壇の前の左右両側に設
置される透明なガラス板で、演説の文章が電子的に表示されてい
くのです。演説する側は左右の表示を順番に読むわけですが、テ
レビには板が映らないため、自然に発言しているようにもみえる
のです。オバマ大統領は、どんな短い演説においてもこのテレプ
ロンプターを使うので、「テレプロンプター・プレジデント」と
呼ばれています。
 2009年2月25日、ロック商務長官の指名発表という短い
スピーチにおいてもプロンプターを使ったのです。それに対して
ロック商務長官はポケットから取り出したノートだけで演説をす
る姿が対照的だったと新聞は報道しています。
 話す内容から話す原稿まで人手を借り、しかもそれをプロンプ
ター映してしゃべる――これでは自分というものがまったくない
ということになります。
 記者との一問一答でもオバマ大統領はプロンプターを見ながら
話しているというのです。記者から質問が出て、オバマ氏が答え
る前に、瞬時に答えの基礎となる資料や答えそのものが背後のス
タッフから提供され、プロンプターに映るというのです。オバマ
氏は自由自在の質疑応答であるはずのやりとりでも、他者によっ
て既に書かれたスクリプトを読み上げるだけだといいます。
                −―[オバマの正体/05]


≪画像および関連情報≫
 ●オバマ大統領とテレプロンプター
  ―――――――――――――――――――――――――――
  同報道によると、この依存度は歴代大統領でも異例なほど高
  い。大統領歴史研究家のマーサ・クマー氏は「他の大統領は
  だれもこれほど一貫してプロンプターを使ったことはない」
  と述べ、その理由の1つはプロンプターが演説者と聴き手の
  障壁になるためだと指摘した。ブッシュ前大統領は主要演説
  以外ではまず使わず、簡単な声明や地方遊説ではせいぜい小
  さなノートを使用する程度で、他の大統領も使用の頻度はず
  っと低かったという。オバマ大統領のプロンプター依存には
  「演説が不自然で人工的になりすぎる」という批判がある一
  方、ホワイトハウスでは「大統領が国民に訴えることはその
  内容が最重要であり、伝達の方法は問題ではない」と反論し
  ている。
  ―――――――――――――――――――――――――――

どこでもプロンプターがないと話せない大統領の風刺画.jpg
どこでもプロンプターがないと話せない大統領の風刺画
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2009年07月21日

●「チェンジすべきものは何か」(EJ第2616号)

 先週はオバマ米大統領の出自に不明な点があるという問題を取
り上げました。本来出自については本人であるオバマ氏に責任は
ないわけですが、ことは大統領の資格にかかわる問題であり、そ
れを隠していることには問題があります。
 ところで、オバマ米大統領は、大統領に就任してからは、選挙
期間中にしきりに訴えていたことと異なることをいくつもやって
いるのです。いわゆる「オバマの変節」です。それは小さいこと
から大きいことまでいろいろありますが、これについては少しず
つ明らかにしていきます。
 オバマ大統領は、2009年1月20日の大統領就任演説にお
いて次の趣旨のことを述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 アメリカの経済はひどく弱体化しており、一部の強欲な資本主
 義者と「多くの一般の国民」が、難しい決断を避け、新しい時
 代に備えることができなかったことにその原因がある。
              ――オバマ米大統領就任演説より
―――――――――――――――――――――――――――――
 つまり、米国の経済が弱体化してしまったのは、一部の強欲な
資本主義者と多くの一般の国民が難しい決断を避けたことが原因
であるといっているのです。
 しかし、選挙期間中にオバマ氏は同じ趣旨のことを何回も繰り
返し訴えているのですが、そのさいには、米国経済を弱体化させ
た責任は、「一部の強欲なウォール街のファンド・マネージャー
や金融機関の経営陣にある」とはっきりと特定していて、「多く
の一般の国民」は入っていなかったのです。もし、オバマ氏が国
民にも責任があると本当に思うなら、選挙のときの演説でもはっ
きりとそういうべきであったのです。しかし、それをいえば選挙
は負けていたかもしれないのです。
 また、選挙期間中の演説で訴えていたグリーンニューディール
政策や500億ドルの資金を投入して500万人の新たな雇用を
創出するなど、具体的に政策を訴えていたのに、就任演説ではそ
ういう具体的な目標や数字は影をひそめ、きわめて抽象的ないい
回しに後退してしまっているのです。たとえば、米国の産業競争
力を高めるために、大学や医療を無料化するという表現は、「新
しい時代の要請に合うように大学を変えていく」という抽象的表
現に後退しています。
 そしてかつてのケネディの演説のように、国家の困難に立ち向
かうには、すべてを国に頼るのではなく、国民一人ひとりが困っ
ている人に親切心や無私の心で救いの手を差し伸べ、国民全体の
責任ある態度と行動によって、難局を乗り切ろうと、ここでも国
民の責任を強調しているのです。
 もっともこれは仕方がないことであるかもしれないのです。オ
バマ氏は選挙中は米国がそこまで傷んでいるとは考えていなかっ
たのではないかと思います。しかし、実際に政権を担当するにあ
たってあまりにも厳しい米国の実情を知り、自分が選挙中に訴え
てきた「チェンジ」をすることがいかに困難であるかわかってき
たので、表現を大幅に後退せざるを得なかったのでしょう。そし
て、次のように国民に対して責任ある役割を求めるトーンの就任
演説にならざるを得なかったと考えることができます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 この試練を乗り越えるためには、資本主義も社会主義もない。
 あるのは責任主義である。国家に頼る気持ちを捨て、国民一人
 ひとりがどれだけ責任ある役割に目覚めるかである。
                    ――オバマ米大統領
―――――――――――――――――――――――――――――
 オバマ氏は、選挙を通して次の3つのキーワードで有権者に訴
えてきたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
      1.ホープ  ・・・・・   希望
      2.チェンジ ・・・・・   変革
      3.ビリーブ ・・・・・ 信ずる心
―――――――――――――――――――――――――――――
 この中で最もインパクトが強かったのは「チェンジ」です。一
体何をチェンジさせるのでしょうか。
 よく考えてみると、米国をここまで凋落させたのは、一部の強
欲なウォール街のファンド・マネージャーや金融機関の経営陣だ
けではなく、多くの一般の国民にもその責任はあるのです。
 というのは、貯金をせず、計画的に頭金を準備することなく、
欲しいものがあればローンで何でも手に入れるライフスタイル、
欲しいものはすぐに手に入れたい、そうでなければ満足できない
という消費行動が多くの国民の間で定着していたことは確かなの
です。それが家電製品ぐらいであればまだよかったのですが、や
がて車や住宅までそのような計画性のない消費行動で手に入れる
ようになっていたのです。
 オバマ氏がチェンジさせたかったのは、米国社会に定着してい
るこういう消費行動だったのではないでしょうか。しかし、そう
いう国民のライフスタイルをチェンジさせるのは容易なことでは
ないのです。多くの米国民は、オバマ大統領をあたかも救世主の
ように考えていて、現時点でも多くの期待を抱いています。
 これについて、既出の浜田氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 一般国民は勝手といえば勝手である。勝手につくりあげた夢に
 酔いしれ、厳しい現実を見ようとはしない。そうした夢がいつ
 までもつのか?ハネムーン期間と呼ばれている就任後「最初の
 100日間」は過ぎたが、まだオバマ大統領への期待感は残っ
 ている。しかし、多くのアメリカ人の不満や失望感が爆発する
 恐れは、日増しに高まりつつある。
     ――浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
                −―[オバマの正体/06]


≪画像および関連情報≫
 ●オバマ米大統領就任演説より
  ―――――――――――――――――――――――――――
  政府はやれること、やらなければならないことをやるが、詰
  まるところ、わが国がよって立つのは国民の信念と決意であ
  る。堤防が決壊した時、見知らぬ人をも助ける親切心であり
  暗黒の時に友人が職を失うのを傍観するより、自らの労働時
  間を削る無私の心である。我々の運命を最終的に決めるのは
  煙に覆われた階段を突進する消防士の勇気であり、子どもを
  育てる親の意思である。(一部略)いま我々に求められてい
  るのは、新しい責任の時代に入ることだ。米国民一人ひとり
  が自分自身と自国、世界に義務を負うことを認識し、その義
  務をいやいや引き受けるのではなく喜んで機会をとらえるこ
  とだ。困難な任務に我々のすべてを与えることこそ、心を満
  たし、我々の個性を示すのだ。    ――オバマ米大統領
  ―――――――――――――――――――――――――――

オバマ米大統領就任演説.jpg
オバマ米大統領就任演説
posted by 平野 浩 at 04:13| Comment(0) | TrackBack(0) | オバマの正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月22日

●「ヘッジファンド業界とオバマ大統領」(EJ第2617号)

 1933年に米国では、「グラス・スティーガル法」が制定さ
れています。この法律は金融機関が一般家庭の投資熱を煽った反
省から生まれたもので、証券業務と銀行業務を分離しています。
ところが、この法律は1994年に廃止されているのです。
 この法案を廃案に追い込んだ立役者とされているのが、フィル
・ダレアム前上院議員であり、昨年の大統領選の共和党のマケイ
ン候補の経済顧問をしていた人物です。
 そして、1999年に「グラム・リーチ・ブライリー法」が制
定され、金融機関同士の垣根が撤廃されたのです。これによって
銀行と証券の区別がなくなり、金融機関同士の競合が激化するこ
とになったのです。この法律の制定によって、金融投資テクノロ
ジーが発達し、デリバティブが激増したのです。
 ここで、この法案の成立を推進したのは、クリントン政権で財
務長官をしていたロバート・ルービン氏とローレンス・サマーズ
氏であったという事実を覚えておくべきです。
 1993年から2001年までのクリントン政権は、ITや不
動産バブルを政策的にもたらし、この法律を活用し、米経済を活
性化させているのです。
 しかし、この「グラム・リーチ・ブライリー法」こそが、今回
の金融危機をもたらした元凶なのです。もし、この法律がなけれ
ば、保険会社のAIGが大量のCDSを抱え込むことも、投資銀
行(証券会社)が少ない資本でレバレッジを最大限に利かせて投
資に奔走することもなかったし、リーマン・ブラザーズも破綻す
ることはなかったのです。
 オバマ氏は、大統領選にあたって、この「グラム・リーチ・ブ
ライリー法」を徹底して批判し、タックスヘイブンの濫用を防止
する法案を強力に推し進めていたのです。
 タックスヘイブンとは、和訳すると「租税回避地」という意味
であり、外国資本や外貨獲得を目的として、意図的に税金を優遇
(無税または極めて低い税率)して、企業や富裕層の資産を誘致
している国や地域のことをいい、ヘッジファンドの顧客である富
裕層が税金逃れのために利用しているのです。オバマ氏はこれに
規制をかけようとしたのです。
 このことは一般の国民から見ると、オバマ氏の主張は正当性が
あり、支持できるのに対し、ヘッジファンド業界やウォール街に
とってオバマ氏は脅威です。ヘッジファンド業界やウォール街と
しては、最良の選択は共和党のマケイン氏であり、次善の策はヒ
ラリー・クリントン氏なのです。
 しかし、彼らの選挙分析によると、共和党のマケイン氏は形勢
が不利であり、クリントンも勝てそうもないと判断したのです。
ヘッジファンドは商売がら調査分析はお手のものなのですが、ど
のように考えても大統領はオバマ氏になると予測したのです。
 ヘッジファンドの調査では、2008年4月の時点で、クリン
トン、オバマ両候補の献金総額は次のようになっていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    クリントン候補 ・・・・・  860万ドル
      オバマ候補 ・・・・・ 4250万ドル
―――――――――――――――――――――――――――――
 この調査結果を見て、ヘッジファンド業界はオバマ勝利間違い
なしと踏んで、オバマ候補に対する献金を加速させたのです。勝
ち馬に乗るのは彼らの常道だからです。
 ヘッジファンド業界がマケイン候補に乗らなかったのは、支援
しても大きなリターンが見込めなかったからです。というのは、
マケイン氏の妻のシンディーさんは、ヘンズレー一族の出身であ
り、米国最大のビール販売会社であるヘンズレー株式会社の社長
であり、米国でも有数の資産家であって、選挙資金にはぜんぜん
困らなかったからです。
 したがって、2008年9月のウォール街の崩壊は、富裕層に
属するマケイン候補には不利に働き、オバマ大統領の実現を後押
ししたのです。ヘッジファンド業界やウォール街の予測は、見事
に的中したのです。
 注目されるのは、金融危機の元凶ともいうべきヘッジファンド
業界やウォール街から多額の献金を受けて大統領に当選したオバ
マ氏のスタンスです。選挙戦が終わった時点でヘッジファンドや
ウォール街は金融危機を引き起こした極悪業界とされてしまって
いたからです。
 オバマ新政権が発足すると、オバマ大統領とティモシー・ガイ
トナー財務長官は、ウォール街の強欲資本主義者たちの仲間の中
にヘッジファンドを加えて、その情報開示や預かり資産の運用に
ついての透明性を求める動きを強化する方針を打ち出しているの
です。これは投資家の機密保持を何よりも身上とするヘッジファ
ンドにとって好ましい動きではなかったのです。
 オバマ大統領とガイトナー財務長官によるこの公式な発言によ
って、オバマ新政権とヘッジファンド業界とは対立しているよう
に見えたのです。
 しかし、不可解なことに、オバマ陣営は大統領の就任式の費用
をヘッジファンド業界に出してもらっているのです。このときの
費用は1億5000万ドル(150億ドル)もかかっています。
 オバマ大統領は、国家財政が逼迫しているときであり、連邦政
府の予算は使わないことを宣言し、ロビー団体や特定の業界から
の資金も受け取らない方針を明らかにしていたのです。オバマ本
人の意向としては、ネットを通じて集める国民からの少額の寄付
をあてにしていたのですが、すでに多くの寄付を選挙資金として
集めていたので、期待したほどのお金は集まらなかったのです。
 そこで最終的にオバマ陣営は、ヘッドファンド業界に募金の要
請を行い、ジョージ・ソロス氏をはじめとするヘッジファンド業
界の立役者たちはこぞってオバマ陣営の要請に応じたのです。
 かくして、オバマ政権とヘッジファンド業界はこうした献金を
通じて切っても切れない関係になっているのです。これから規制
しようという業界とです。    −―[オバマの正体/07]


≪画像および関連情報≫
 ●「グラム・リーチ・ブライリー法」について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  1999年に米国の金融近代化法ができました。法案審議を
  主導した各委員長名前を取って、「グラム・リーチ・ブライ
  リー法」と呼ばれています。この法律で、グラス・スティー
  ガル法によって銀行、保険、証券という金融業務を分離して
  いた垣根が撤廃。金融に関するあらゆる業務が、金融持株会
  社を創設することで、一つの母体で運営されることが可能に
  なりました。米国の金融制度の大転換であり、金融制度は一
  挙に世界恐慌以前のなんでもありの体制に戻されました。
  http://www.kokuminrengo.net/2008/200811-economymotoyama.htm
 ●EJ第2489号/「グラム・リーチ・ブライリー法」
  http://electronic-journal.seesaa.net/archives/20090114-1.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

オバマ大統領とガイトナー財務長官.jpg
オバマ大統領とガイトナー財務長官
posted by 平野 浩 at 04:16| Comment(0) | TrackBack(0) | オバマの正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月23日

●「金融危機の戦犯とオバマ政権」(EJ第2618号)

 大統領就任式にかかる費用は、いかに国家財政が逼迫している
からといえども連邦政府の予算から出すべきです。その代わりに
質素に行うべきです。もし、それができないなら、幅広く企業や
団体から資金を集めるべきです。いかに経済が疲弊しているとは
いっても米国には世界に冠たる企業がたくさんあり、就任式の費
用ぐらいはすぐ集まるはずです。
 問題は、オバマ大統領自身が連邦政府の予算を使わないことと
特定の業界からの資金は受け取らないと公式に宣言しながら、そ
の裏で結果としてヘッジファンド業界という特定の業界から資金
援助を受けて大統領就任式を行ったということは好ましいことで
はないと思います。
 そのようなことをすれば、どうしても大統領はヘッジファンド
業界に対して断固たる態度がとれなくなるはずです。現実にオバ
マ大統領は、次のようにヘッジファンド業界を擁護するような発
言を行っているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 私はヘッジファンドそのものが悪いとは思っていない。数ある
 金融ツールの1つにすぎない。その意味ではヘッジファンドは
 極めて有益な存在といってもいいだろう。ただ一部のウォール
 ストリートのプライベート・エクイティ・ファンドやヘッジフ
 ァンドのマネージャーたちが高額の利益や収入を得ていながら
 適正な税金を納めていないのは問題だ。
     ――浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 実はオバマ政権はヘッジファンド業界とズブズブの関係なので
す。昨日のEJで「グラム・リーチ・ブライリー法」の成立を推
進したのはクリントン政権で財務長官を務めたたロバート・ルー
ビン氏とローレンス・サマーズ氏の2人であると書きました。こ
の法律こそ今回の金融危機を引き起こした元凶である――こうい
っても過言ではないと思います。
 まず、ローレンス・サマーズ氏は、現在ホワイトハウスの経済
諮問会議議長に就任しています。今さらいうまでもなく、ローレ
ンス・サマーズ氏はヘッジファンド業界の完全なる擁護者です。
そういう人をオバマ大統領は重用しているのです。
 もうひとつ、ロバート・ルービン氏はどうでしょうか。
 そのルービン氏の愛弟子であるティモシー・ガイトナー氏が財
務長官に就任しているのです。ガイトナー財務長官は、クリント
ン政権で国際金融担当の財務次官を務めているのです。そのとき
の財務長官はロバート・ルービン氏なのです。したがって、ガイ
トナー財務長官は、ルービン氏の子飼いであり、その基本体質は
変わらないと考えられます。
 このローレンス・サマーズ氏はどういう人物なのでしょうか。
 ローレンス・サマーズ氏についての日本人の一般的イメージは
ハーバード大学学長という米国のアカデミックを代表する学者と
いう印象です。そこから見えてこないのは、サマーズ氏の飽くな
き金権体質なのです。
 このサマーズ氏はハーバード大学で大きな不祥事を起こして大
学を追われています。その事件について浜田和幸氏は著書で次の
ように紹介しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 前代未聞の投資スキャンダルも起こしている。それは、ハーバ
 ード大学がアメリカ政府の国際援助庁(USAID)から委託
 を受けたロシアの株式市場育成プロジェクトに関し、サマーズ
 学長の子飼いとされる経済学の教授が、インサイダー取引にか
 かわっていたことが判明した事件である。結局、ハーバード大
 学は政府に対して、2700万ドルもの賠償金を支払う羽目に
 なった。――浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ハーバード大学を追われたサマーズ氏を受け入れたのは、ヘッ
ジ・ファンドのD.E.ショーだったのです。紹介したのは、ルー
ビン元財務長官です。
 D.E.ショーにおける勤務は、週に1回出社するだけで520
万ドル(5億2000万円)の給与を得ていたのです。そのかた
わら、ウォールストリートの金融機関で講演を行っていますが、
年間270万ドル、1回の講演料が約2000万円〜3000万
円あったというのですから驚きです。
 ロバート・ルービン氏は、クリントン政権入りする前はゴール
ドマン・サックスのCEOであり、クリントン政権を離れてから
は、今度はシティグループの経営執行委員会会長を務めているの
です。前財務長官のポールソン氏もゴールドマン・サックスのC
EO出身であり、このように政府と金融機関を行き来する人が多
いのです。浜田氏によると、これを「リボルビング・ドア」とい
うのだそうです。
 ルービン氏やサマーズ氏、そしてポールソン前財務長官――彼
らのように民間から政府の閣僚級のポストに就任すると、税金を
免除される特典が与えられるのです。具体的にいうと、そういう
人は「米国のノンレジデント/非居住者」になれるのです。
 ポールソン前財務長官を例にとります。彼は財務長官になる前
はゴールドマン・サックスのCEOをしているので、辞任した現
在、非居住者になれます。非居住者とは、海外に出ると、大使な
どのように治外法権の扱いになるので、当然税金はかからないの
です。したがって、民間時代に蓄えた株券や債券を海外に行って
売却すると、税金はかからないのです。
 『フォーチューン』誌によると、ポールソン前財務長官はこれ
を利用して、保有していたゴールドマン・サックスの株を売り、
5億ドル(500億円)をノータックスで懐に入れたとされてい
るのです。こういう特典が得られるので、彼らは「リボルビング
・ドア」を繰り返して、自分の蓄財を増やしているのです。オバ
マ政権はこういう人物と深くつながっていることになります。こ
れでいいのでしょうか。     −―[オバマの正体/08]


≪画像および関連情報≫
 ●「リボルビング・ドア」とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「リボルビング・ドア」という言葉を聞いたことがあるでし
  ょうか。回転扉のことなのですが、アメリカでは政府機関の
  要職を指すことがあります。○○省長官、副長官、長官補な
  どを務め、そこで箔をつけて民間セクターで魅力的なポスト
  を見つけて去っていく姿を回転扉に例えたわけです。副長官
  補以下のポストを経験し、一旦民間セクターに戻った後、再
  び副長官や長官になる場合もあります。彼らは、ポリティカ
  ル・アポインティ(政治任用)ですから、共和党系、民主党
  系と色分けができ、共和党大会、民主党大会に出席し、コネ
  クションを広げ、政治活動や献金をしながら猟官運動をしま
  す。公職時代の報酬は決して高くないのですが、仕事の中身
  が魅力的なのと、その後の「アメリカ版天下り」まで考える
  と政府の要職を求めることは十分割に合うようです。
        http://dndi.jp/00-ishiguro/ishiguro_55.php
  ―――――――――――――――――――――――――――

サマーズ&ルービン.jpg
サマーズ&ルービン
posted by 平野 浩 at 04:19| Comment(0) | TrackBack(0) | オバマの正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月24日

●「ダーティな政治家/オバマ上院議員」(EJ第2619号)

 ここまで米オバマ政権には、今回の世界レベルの金融危機を引
き起こしたA級戦犯ともいうべきヘッジファンドに近い人物が要
職を占めているという事実を明らかにしてきています。
 オバマ大統領自ら彼らを強欲資本主義と口では糾弾しながら、
裏ではヘッジファンド業界と深い関わりを持ち、多くの献金も受
けているのです。こういう政治姿勢を持つバラク・オバマという
人物は、どういう政治家なのでしょうか。
 ワシントンに本拠を持つ「ジュディシャル・ウオッチ」という
議員の監視団体があります。この団体は、毎年「ダーティーな政
治家ワースト10」を発表しているのですが、オバマ上院議員は
そのリストに必ず名前が載る常連だったのです。既出の浜田氏は
次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 実は、オバマ氏は上院議員時代から、金に汚い政治家として、
 悪名が轟いていた。不動産業者や金融機関からは、違法すれす
 れの政治献金を取り放題であった。(一部略)オバマ氏の地元
 のシカゴは、その土地柄のせいか、政治と金の腐敗は当たり前
 という風潮がある。そのシカゴでのし上がったのだから、彼は
 はなから金権体質を持っていたのである。
     ――浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 オバマ氏といえば、ネット上の小口献金で史上最高額を集めた
ことで有名ですが、一人平均25ドルであったといいます。しか
し、それにしても選挙資金があまりにも潤沢に集まり過ぎていた
のです。それは、そういう小口献金に加えて、ヘッジファンド業
界などから膨大な大口献金があったからなのです。
 大口献金の中では、ヘッジファンド以外で突出しているのは、
ゴールドマン・サックスであり、その他、USBアメリカ、リー
マン・ブラザーズ、JPモルガン・チェース、シテイグループ、
モルガン・スタンレーなど、ウォール街の名だたる金融機関が軒
並みリストに載っているのです。ちなみに、大口献金組織の社員
名義の献金は、一人平均2300ドルであったのです。
 なぜ、ヘッジファンドをはじめこれほどの金融機関がこぞって
献金するのでしょうか。
 それはおいしい汁を吸えるからです。現在「サマーズ・ガイト
ナー計画」が実行されています。金融機関の不良債権の買い取り
プランですが、不良債権の価格は金融機関が決めるルールになっ
ています。もちろん価格は低いラインに設定されます。
 しかし、この買い取りには買取者が絶対に損をしない仕組みに
なっているのです。もし、将来、その不良債権が値上がりすれば
儲かりますが、値下がりした場合、その差額は国民の税金で穴埋
めされることになっているのです。いわゆる瑕疵(かし)担保と
同じです。「サマーズ・ガイトナー計画」とはそういうプランな
のです。この仕組みなら、買取者は絶対に損をしないので、多く
の企業が買取者になろうとしますが、そういう場合、政権内部に
ルートがあれば確実に買取者になれるのです。
 なかでもおかしいのは、AIGという保険会社です。AIGは
1800億ドル(18兆円)もの公的資金の注入を受けているに
もかかわらず、社員に対して4億5400万ドル(454億円)
ものボーナスを支払っているのです。
 オバマ大統領はこれに対してテレビカメラの前で怒ってみせま
したが、どうも下手な芝居のように思えてならないのです。その
証拠に、その後もAIGをかばい続けており、国民の怒りに背中
を向けています。株価は急落し、時価総額も2140億ドルもの
減損が生じているにもかかわらずです。
 AIGにはこれからも巨額の公的資金を投入しないと存続でき
ないのです。それがわかっていながら、オバマ政権はAIGをか
ばい続けているのです。よほど潰すと困る事情があるようであり
これについては改めてレポートする予定です。
 さて、オバマ政権にはもう一人気になる人物がいるのです。そ
れは、ラーム・エマニュエル大統領主席補佐官です。主席補佐官
というのは、政権の内部も内部、一番大統領に近いところにいる
人物であり、つねに大統領と行動をともにするのです。そして、
ホワイトハウスを実質的に運営する役割を担います。
 政権の閣僚、たとえヒラリー国務長官でも大統領に会うときは
アポが必要なのですが、主席補佐官はアポなしで会えるのです。
エマニュエル主席補佐官は、オバマ大統領がたっての希望で実現
したといわれますが、彼はどのような人物なのでしょうか。
 エマニュエル氏は、イスラエル出身のユダヤ人であり、クリン
トン政権では、大統領の政治顧問を務めています。しかし、この
人物は、ヘッジファンドとも関係が深く、浜田氏によると、政権
入りする前は、ヘッジファンドで2000万ドル(20億円)近
い収入を得ていたといわれています。
 エマニュエル主席補佐官については、山口増海さんのブログに
詳しいのでご紹介します。どうやらいわくつきの人物です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 大統領首席補佐官はラーム・エマニュエル氏です。エマニュエ
 ルと聞くと、悩ましいエマニュエル夫人を思い出す人もいるで
 しょうが、この男のエマニュエルは、どっこい優しい相手では
 ありません。かれは仲たがいした友人に死んだ魚を送りつけた
 といわれるほどいやな人間です。ただ、生きた魚を送るのも、
 飛び跳ねたりして困ったものだと思うのですが、アメリカでは
 狷介な人間と見られています。また、食事中に政敵を呪いなが
 ら、ナイフをテーブルに突き刺したという伝説も伝わっていま
 す。短気で攻撃的です。現在は、民主党下院議員の会長も務め
 ています。テレビ人気ドラマ「ザ・ホワイトハウス」の登場人
 物のモデルにもなっています。
http://yamaguchi-masumi.blogspot.com/2008/11/blog-post_12.html
―――――――――――――――――――――――――――――
                −―[オバマの正体/09]


≪画像および関連情報≫
 ●エマニュエル主席補佐官についてのブログより
  ―――――――――――――――――――――――――――
  読売新聞は、「剛腕」などと書いているが、ようするにやく
  ざのような人物だ、ということだろう。口が汚い、というこ
  とでも有名で、また「投資会社」経営者で、大金持ち、とい
  う人物でもある。ちなみにエマニュエル氏はつい最近までフ
  レディマックの理事をしていた人物でもある。このように、
  オバマ新政権は、まっしぐらにユダヤ系の富豪たちのために
  働くようになりそうで、結局、キリスト教国家としてのアメ
  リカが、いよいよユダヤ系富豪らに乗っ取られた格好になり
  つつあると言えよう。これは、アメリカというキリスト教国
  家が、ユダヤ系富豪らに利用され、使役させられ、衰退して
  いく、ということになると思っていいだろう。金融恐慌との
  絡みから、これから、アメリカは大変な時期に突入すること
  になる。   http://rockway.blog.shinobi.jp/Entry/38/
  ―――――――――――――――――――――――――――

エマニュエル主席補佐官.jpg
エマニュエル主席補佐官
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2009年07月27日

●「ウォール街の守護神/ガイトナー」(EJ第2620号)

 2007年5月のことです。当時ニューヨーク連邦準備銀行総
裁であったティモシー・ガイトナー氏は、アトランタにおける講
演で次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 アメリカの上位金融機関は極めて健全な財務体質であり、デリ
 バティブ取引に関しても革新的な手法を駆使し、リスク管理は
 以前に比べはるかに改善されており、まったく問題がない。大
 手金融機関は自己資本においてもリスク管理においてもかつて
 ないほど健全な状況におかれている。
     ――浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ガイトナー氏は、2003年11月からニューヨーク連銀総裁
の職についており、2009年1月に財務長官に就任するため辞
任するまで、5年以上その職にあったのです。そのことを記憶に
とどめておいていただきたいと思います。
 ガイトナー総裁の上記の講演ですが、2007年5月といえば
それまで上昇を続けてきた住宅価格の伸びが急速にダウンし、い
わゆるサブプライムローン危機が顕在化しはじめた時期に当たる
のです。そのように考えたとき、ニューヨーク連銀の総裁という
責任ある地位にある人物がこういう発言をするとは考えられない
ことです。
 彼ほどのマーケットのプロが状況を読めていないはずはなく、
おそらく投資家や市場を安心させる方便としての発言と考えられ
ますが、いずれにしても無責任のきわみです。
 ガイトナー氏は38歳のときに財務省の国際担当財務次官に昇
進していますが、そのときの財務長官がロバート・ルービン氏で
あり、続くルービン財務長官の後任であるローレンス・サマーズ
財務長官のもとで、2001年まで仕事をしているのです。
 ブッシュ政権の誕生とともにガイトナー氏は、財務省を離れて
外交問題評議会(CFR)に籍を置いています。この外交問題評
議会は米国の有名なシンクタンクのひとつですが、あのデイヴィ
ッド・ロックフェラー氏が名誉会長を務めるいわくつきのシンク
タンクであり、これについては改めて述べます。
 そして、2003年11月にガイトナー氏は、ニューヨーク連
邦準備銀行総裁に就任するのですが、それから5年間というもの
彼はウォール街の中心で、業界のトップたちと精力的に会って人
間関係を築いたのです。歴代のニューヨーク連邦準備銀行総裁の
中でも彼ほど銀行家やヘッジファンドのマネージャーたちと頻繁
に食事をしたり、パーティーに付き合ったりした総裁はいないだ
ろうといわれているのです。
 2004年のことです。ニューヨーク連銀は、シティグループ
の融資方法に問題があるとし、7000万ドルの罰金をかけたの
です。そして、その翌年、シティグループが、企業買収に伴って
使った手法に問題があるとして、企業買収の業務停止命令を出し
ているのです。
 この措置について、世間はガイトナー総裁はなかなか厳しいこ
とをやるという印象を持ったはずです。しかし、それから2年後
の2006年、ニューヨーク連銀はシティグループに対して科し
ていた規制をすべて解除してしまうのです。その理由としてシテ
ィグループは大幅な業務改善を行い、2年前の問題の再発防止に
全力を尽くしたとしているのです。
 規制を解かれたシティグループは、待っていましたとばかり住
宅ローンの証券化にさらに深入りして、とんでもない負債を背負
い込むことになったのです。2007年の春から夏にかけてサブ
プライムローンの焦げ付きが顕在化するに伴い、シティグループ
の抱える問題も表に出る可能性が出てきたのです。
 こうした状況をニューヨーク連銀が掴んでいないはずがないの
です。そこで、ガイトナー総裁は、シティグループの経営陣と何
回も会合を重ね、この問題が表面化するのを抑えたと考えられる
のです。それはガイトナー総裁が冒頭のアトランタにおける講演
の内容を見れば明らかでしょう。明らかに事実を隠蔽しようとし
ているのです。
 ガイトナー氏とシティグループは、1999年にルービン氏が
シティグループの経営執行委員会会長になってからはとくに親密
な関係にあります。シティグループのサンフォード・ウェイル会
長は、ガイトナー氏に対していずれ自分の後任として、シティグ
ループのCEOに就任してもらいたいという意向を持っていると
いわれます。それほど信頼が厚いのです。
 もともとシティグループは、ルービン氏とサマーズ氏のもとで
「グラム・リーチ・ブライリー法」によって、あらゆる規制を外
し、政府を監視の外に置くことによって、積極的にデリバティブ
を展開し、やりたい放題をして巨額の資金を手にしたのです。こ
れが結果として米国の住宅バブルを煽ることになったのです。こ
れはまさにマネーゲームそのものといえます。
 本来であれば、ガイトナー氏率いるニューヨーク連銀がそうい
うウォール街に対して警告を発し、流れを変える努力をすべきで
あったのですが、彼は何もしていないのです。それどころか「そ
のような危機はまったく存在しない」というレポートを出したり
冒頭のような講演で危機感を払拭するなど、金融機関と一緒に米
国の住宅バブルを加速させたのです。
 そして、金融危機が顕在化した2008年10月3日、時のポ
ールソン財務長官は「市場が驚くほど大きな金額でなければなら
ない」と主張して要求したTARP――7000億ドルの前半部
分3500億ドルが議会で承認されたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 不良資産救済プログラム/ Troubled Asser Relief Program
―――――――――――――――――――――――――――――
 この3500億ドルは、100日以内に急速に使われ、すべて
使い切ってしまったのです。一体何に使われたのでしょうか。そ
れがはっきりしないのです。   −―[オバマの正体/10]


≪画像および関連情報≫
 ●TARPは世界不況を招く/2009.3.19
  ―――――――――――――――――――――――――――
  著名投資家のジム・ロジャース氏はこのほど、米政府が進め
  る不良資産救済プログラム(TARP)について、「健全な
  企業の資本をむしばみ、世界を同時不況に陥れるものだ」と
  述べた。同プログラムの支援対象となったアメリカン・イン
  ターナショナル・グループ(AIG)は08年第4四半期、
  米国史上最大となる赤字を計上した。ロジャース氏は「米政
  府は能力のある者から資産を吸い取り、無能な者にその資産
  を投入している。AIGを破たんさせるべきだった」と米政
  府を強く批判した。また、「米政府は1990年代のバブル
  崩壊時に日本が犯した過ちと同じ道をたどっている」と指摘
  し、本来は破たんすべき金融機関に資金をつぎ込むも、再建
  は失敗。こうした金融機関が「吸血銀行」へと化していると
  形容した。(編集担当:服部薫)
  ―――――――――――――――――――――――――――

ガイトナー財務長官とTARP.jpg
ガイトナー財務長官とTARP
posted by 平野 浩 at 04:17| Comment(0) | TrackBack(0) | オバマの正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月28日

●「目的以外に使用されているTARP」(EJ第2621号)

 TARP――不良資産救済プログラムの前半部分3500億ド
ルは何に使われたのでしょうか。
 このことを考える前に、そもそもTARPの7000億ドルは
何のために使う資金として用意されたのかということを知ってお
く必要があります。
 住宅ローンは、米国の金融システムにおいて大きな割合を占め
ていますが、そのほとんどは証券化され、金融機関をはじめとす
る投資家が保有しているのです。住宅ローンを返済できなくなる
人が多くなり、住宅の差し押さえが実行されると、住宅市場が悪
化し、金融機関に大きな損失が発生することになります。
 そこで政府が不良債権化したそれらの住宅ローン関連証券を買
い取り、住宅ローンの条件を緩和して住宅市場のさらなる悪化を
食い止めるというのがTARPの狙いであったのです。
 しかし、TARPが承認され、住宅ローン関連証券を買い取る
前に、次々と大規模な金融危機が襲ってきたのです。金融システ
ムが麻痺してしまうと大変なので、TARPの資金を使って急遽
金融機関へ資本注入をせざるを得なかったのです。
 そのため本来の目的である住宅ローン関連証券の買い取りは行
われておらず、住宅ローンの債務不履行や差し押さえを食い止め
ることはできていないのです。そこで、一時は住宅ローンの不履
行による差し押さえを凍結していた政府系住宅金融機関も現在で
は差し押さえを進めているのです。
 しかし、公的資金を注入された金融機関がその資金を住宅市場
の安定化や新規の貸し出しに使っているならまだ良いのですが、
大手金融機関に注入された公的資金は国債購入に回されるという
結果に終わっているのです。もともと米国にお金があるわけでは
なく、国債を発行して資金を用意しているので、どうしてもこう
いうことになってしまうのです。このように、TARPの資金は
本来の目的とは違う目的に使われているのです。
 このTARPの資金は、100億ドルがゴールドマン・サック
スに流れています。ゴールドマン・サックスはこの100億ドル
を市場金利より低い条件で受け入れています。しかし、そのとき
この資金は幹部の給料やボーナスに使ってはならないという条件
が一応付けられているのですが・・・。
 時の財務長官はゴールドマン・サックスのCEO出身のポール
ソン氏であり、その財務長官が自分の出身母体の企業に100億
ドルを有利な条件で融資する――きわめて不健全です。しかも、
その資金の使い道について、FRBも当の財務省も一切公開して
いないのです。
 どうしてゴールドマン・サックスが優遇されるのかというと、
ゴールドマン・サックスがAIGの最大の債権者であることが影
響していると思われます。このAIGという保険会社は、シティ
グループと同様に米国が絶対に潰せない金融機関であるといわれ
ているのです。
 そして、現在TARPの権限は、ガイトナー財務長官が一手に
握り、現在公的資金を銀行救済という名目で注入し続けているの
です。彼は歴史上最大の規模とスピードで、公的資金を使ってい
ます。しかし、その注入先は浜田和幸氏にいわせると、「仲間」
「内輪」「友達」に限られているというのです。これについて、
浜田氏は次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは、市場の競争原理をまったく無視しており、アメリカの
 自由競争社会の在り方を根底から覆してしまったと言ってもい
 い。ちなみに、ガイトナー財務長官の首席補佐官はゴールドマ
 ン・サックスのロビイストでならしたマーク・パターソン氏で
 ある。もはや、アメリカにおいては、資本主義は死んだと言っ
 ても過言ではないだろう。
     ――浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 このように現在、TARPを通して資本注入を受けている金融
機関は、米国消費者教育財団のレポートによると、この10年間
に50億ドル(5000億円)を超える資金が金融機関からワシ
ントンの有力政治家に対して政治献金として投入されているとい
う事実がレポートされているのです。
 目的は、金融機関にとって有利な法案作りや運用を加速させる
ためであり、そのためにウォール街から実に3000人を超える
ロビイストが送り込まれているというのです。
 ロビイストというのは、ロビー(政治家の控室という意味)で
活躍する者という意味であり、政治的圧力団体の代理人として政
党や議員や官僚、さらにはマスコミや世論に働きかけて、その団
体に有利な政治的決定を行わせようとする人たちのことです。
 あの「グラス・スティーガル法」を廃案にしてしまったのも金
融機関によるロビー活動の成果なのです。多くの証券会社が献金
を積み重ね、5億ドルを超える資金を政治家に提供してきたとさ
れています。現在、ワシントンには、4万人を超えるロビイスト
たちが暗躍しているといわれています。
 とくに政治家に対してこれまで巨額な献金をしてきたのは、ゴ
ールドマン・サックス、シティグループ、そしてメリルリンチで
あり、これら3社は献金御三家と呼ばれています。
 これらの政治献金は、55%が共和党の政治家に、残りの45
%は民主党の政治家に流れていたのですが、2008年に関して
は、オバマ効果によってその大半が民主党に流れているというこ
とがいえます。このように巨額のウォール街の資金が、長年にわ
たってワシントンに注ぎ込まれているのです。そのため、財務長
官のポストは、ほぼ例外なくウォール街の金融機関のCEOの指
定席になっているのです。
 オバマ大統領は、選挙中の公約として、「自らの政権からロビ
イストを一掃する」といっていたのです。しかし、彼が大統領に
なってもロビイストの数が減ったという話は一向に聞こえてこな
いのです。           −― [オバマの正体/11]


≪画像および関連情報≫
 ●町田徹の“眼”/2009年7月17日
  ―――――――――――――――――――――――――――
  7月に入って、米市場がもたついている。異例の速さでめど
  がついたゼネラル・モーターズ(GM)の再建、過去最高益
  を記録したゴールドマン・サックスの四半期決算公表といっ
  た予想外の好材料が続いても、ニューヨーク株式市場はそれ
  らの好材料にほとんど反応せず、ダウ平均(工業株30種)
  は15日の終値が8616ドル21セントと6月の高値(8
  799ドル26セント、12日)すら追い抜けない状態に陥
  っているのだ。
         http://diamond.jp/series/machida/10084/
  ―――――――――――――――――――――――――――
浜田和幸氏.jpg
浜田和幸氏
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2009年07月29日

●「ストレステストで何がわかったか」(EJ第2622号)

 2009年5月7日のことです。オバマ政権は、金融機関19
社を対象に実施した「ストレステスト/健全性審査」の結果を発
表しています。これら19社は、資産が1000億ドルを超える
大手銀行持株会社です。この19行で米国の銀行の総資産の3分
の2、総融資の半分以上を占めているのです。
 ストレステストというのは、金融市場での不測の事態が生じた
場合に備えて、ポートフォリオ(ポジション)の損失の程度や損
失の回避策をあらかじめシミュレーションしておくリスク管理手
法のことをいうのです。
 本来のストレステストでは、一般に発生確率が低いと考えられ
るリスクシナリオをいくつか用意すると共に、ヒストリカルデー
タから異常な環境下のものを抽出し、その発生確率や変動パター
ンを当該シナリオに当てはめて、現在のポジションが抱える潜在
的なリスク量を計測し、不測の事態に備える狙いがあります。
 このストレステストは、TALPの残金が1000億ドル程度
になったときに行われていることをアタマに置いておく必要があ
ります。ストレステストの結果は次のようになっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
  ≪資本増強が必要ない銀行≫ ・・・・・・・・・・ 9行
   ・JPモルガン・チェース
   ・ゴールドマン・サックス
   ・USバンコープ
   ・バンク・オブ・ニューヨーク・メロン
   ・ステート・ストリート
   ・キャピタル・ワン・フィナンシャル
   ・BB&T
   ・アメリカン・エクスプレス
   ・メットライフ
  ≪資本増強が必要な銀行と必要額≫ ・・・・・・ 10行
   ・バンク・オブ・アメリカ        339億ドル
   ・ウェルズファーゴ           137億ドル
   ・GMAC               115億ドル
   ・シテイグループ             55億ドル
   ・リージョンズ・ファイナンシャル     25億ドル
   ・サン・トラスト             22億ドル
   ・キー・コープ              18億ドル
   ・モルガン・スタンレー          18億ドル
   ・フィフス・サード・バンコープ      11億ドル
   ・PNGフィナンシャル           6億ドル
―――――――――――――――――――――――――――――
 資本増強が必要な銀行10行の必要資本額の総計は746億ド
ルであり、TARPの残額といわれる1000億ドルの範囲内に
入っています。しかし、これはかなり苦しい数字であり、また作
為的な数字であるという専門的な見方があります。いずれにせよ
これにより当面議会の反対の強い資金枠の増加はやらないでも済
むというメッセージを発したかたちになっています。
 FRBのバーナンキ議長は、ストレステストの結果公表に先立
つ講演で次のように楽観的見通しを示しているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 対象の19行は、いずれも債務超過のリスクはない。ストレス
 テストの審査結果は、銀行の貸し出し能力に関する信頼感を市
 場にもちらすであろう。     ――バーナンキFRB議長
―――――――――――――――――――――――――――――
 ゴールデン・ウィーク明けに米国のダウは8000ドル台に乗
り、日経平均も9000円台まで戻しましたが、これはストレス
テストの結果を反映したものと見ることができます。しかし、こ
れは作られた相場そのものといえます。
 ところで、ゴールドマン・サックスはストレステストでは「資
本増強が必要ない銀行」に入っています。また、1〜3月期の当
社の決算も黒字になっていますが、これは既に述べたTALPの
特別融資のおかげなのです。
 また、1〜3月期の決算ではシティグループも黒字になってい
ますが、ゴールドマン・サックスにしても、シティグループにし
ても、これは「時価会計基準の緩和」を利用した結果であると考
えられるのです。
 不良債権を多く抱え込んだ場合、時価で資産を査定すると不良
債権に対する引当金を多く積まなければなりませんが、時価で評
価しなくてもよいとなると、資産査定はラクになり、引当金の額
は大幅に減少するのです。それも、資産については時価評価を行
わず逆に負債については時価評価を行い、負債評価益を計上する
などかなりいい加減な会計処理を行っているのです。これでは、
「粉飾決算」といわれても仕方がないでしょう。
 浜田和幸氏によると、このストレステストがはじまる前の時点
で19行のうち16行は破綻同然の状態であるというのです。そ
のため米当局と銀行の間で激しいやりとりがあり、資本不足額の
再算定が行われたものと思われます。要するに数字合わせです。
何しろ、破綻同然の16行のうち、2行が現実に破綻するだけで
政府の保証枠はすべてなくなるといわれています。浜田氏は19
行の現状について次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 もし、こうした見方が正しいなら、オバマ政権とウォール街の
 仲間たちは最終的な破綻を先送りしているだけである。ストレ
 ステストも厳格に行われたのか疑わしく、ともかく時間を稼い
 でドルを刷り増ししているのが、いまのアメリカのリアルな姿
 なのではないか。最終的にアメリカの銀行は5つに絞られるの
 ではないかと、大方の関係者はみている。しかし、それとて、
 現在のシナリオがうまくいっての話である。
     ――浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
                −―[オバマの正体/12]


≪画像および関連情報≫
 ●事前リークの多いオバマ政権
  ―――――――――――――――――――――――――――
  今朝方、発表された米ストレステスト。事前観測と若干のブ
  レはありながらも、既に周知されていた内容がマーケットに
  公開されたという政府主演の茶番劇。事前リークによって市
  場、株価、投資家の反応を見た上で、金融機関側と当局者側
  による微妙な味付けで施された内容といえよう。シティの資
  本不足を巡っては、最悪の場合、数百億ドルの資本不足にな
  るのではないかとの事前情報も入手していたが、発表された
  結果は優先株を普通株に発行する”予定”までも認められた
  のだから、今さらこの結果を議論する必要もないだろう。
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0508&f=business_0508_120.shtml
  ―――――――――――――――――――――――――――

ガイトナー財務長官とバーナンキ議長.jpg
ガイトナー財務長官とバーナンキ議長
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2009年07月30日

●「政商ヘッジファンドはなぜ儲かるのか」(EJ第2623号)

 「政商」という言葉があります。政商とは、政治家や政府高官
との結びつきを利用して経済活動上の特権的利益を得たり、政策
を自己の利益に有利な方向へ誘導しようとする事業家、企業を意
味しています。こういう人たちのことを米国ではロビイストとい
うのでしょうか。
 日本においても金融機関の不良債権処理や郵政民営化などでは
そういう政商の姿が見え隠れすることがありますが、あくまで陰
に隠れてこっそりやるというイメージです。しかし、米国では政
府高官と企業が密接に結びついており、なにか堂々とやっている
という感じです。
 現在、オバマ政権においてガイトナー財務長官が中心となって
やっているTARP――不良資産救済プログラムは、国民の税金
である公的資金を使って金融機関の不良債権を一括処理するプロ
グラムです。しかし、これはある意味においてマネーゲームその
ものなのです。
 以下、そのマネーゲームのからくりを例をあげて説明します。
図は添付ファイルをごらんいただきたいと思います。
 住宅価格が下落して、金融機関が住宅ローンの担保にとってい
た不動産はピーク時の2分の1か3分の1まで下落しています。
しかし、このまま塩漬けにしておくと、金融機関が身動きが取れ
なくなるので、救済スキームを作ったのです。
 ある不良債権を買い取るとき、その14分の1ずつを政府と民
間が出し、残りの7分の6を預金保険公社が融資する仕組みなの
です。この場合、民間というのはヘッジファンドのことです。
 額面100億円の不良債権があったとします。これを42億円
で売却するとして、民間、政府、預金保険公社は次の割合で資金
を負担します。
―――――――――――――――――――――――――――――
  政府     (1/14) ・・・・・  3億円
  ヘッジファンド(1/14) ・・・・・  3億円
  預金保険公社(12/14) ・・・・・ 36億円
―――――――――――――――――――――――――――――
 ひとつの可能性について考えてみます。もし、経済が回復して
債権の価値が100億円に戻ったとします。この場合、預金保険
公社から受けた融資額36億円を返済すると、残るのは64億円
――この金額は政府とヘッジファンドで山分けをするのです。3
億円出して32億円戻るので、29億円の儲けになります。
 もうひとつの可能性です。不良債権の価値がさらに下がってゼ
ロになったとします。この場合、預金保険公社からの36億円の
融資は公的資金なので、返済する必要はないのです。したがって
政府とヘッジファンドはそれぞれ3億円の損失ということになり
ます。実際にはゼロになる可能性は少ないし、42億円もの債権
を運用して損失はわずか3億円で済むのですから、ヘッジファン
ドにとっては、ローリスク・ハイリターンでボロ儲けができる仕
掛けになっているのです。
 このマネーゲームに参加させるヘッジファンドを指名する権限
はガイトナー財務長官が握っているのです。ガイトナー財務長官
は、次のトップ10に入ったヘッジファンドの中からマネーゲー
ムに参加させるヘッジファンドを選ぶはずです。もちろんオバマ
政権に実績の高いヘッジファンドが選ばれることになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ≪2008年度ヘッジファンド・マネージャートップ10≫
    マネージャー名          2008年の収入
  1.ジェームズ・シモンズ ・・・・・・  2500億円
  2.ジョン・ポールソン ・・・・・・・  2000億円
  3.ジョン・アーノルド ・・・・・・・  1500億円
  4.ジョージ・ソロス ・・・・・・・・  1100億円
  5.レイモンド・ダリオ ・・・・・・・   780億円
  6.ブルース・コブナー ・・・・・・・   640億円
  7.デイビッド・ショー ・・・・・・・   275億円
  8.スタンリー・ドラッケンミラー ・・   260億円
  9.デイビッド・ハーディング ・・・・   250億円
  9.アラン・ハワード ・・・・・・・・   250億円
  9.ジョン・テイラー・ジュニア ・・・   250億円
             出典/「アルファー・マガジン」誌
     ――浜田和幸著、『オバマの仮面を剥ぐ』/光文社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ヘッジファンド・マネージャーについて少しご紹介しておくこ
とにします。ヘッジファンドといえば、世界的な金融危機を引き
起こした戦犯企業のひとつですが、この危機によって姿を消した
ヘッジファンドは1000社に上るのです。2008年のはじめ
には1万社のヘッジファンドが存在したのです。
 生き残ったヘッジファンドの全体の3分の2は、平均して18
%の損失を計上しているのですが、そういう不利な状況をものと
もせず、利益を上げたヘッジファンドが、上記の10ヘッジファ
ンドです。2008年の第1位は、ルネッサンス・テクノロジー
ズのジェームズ・シモンズ氏です。シモンズ氏は、元数学教授で
あり、高等数学を駆使した精緻な市場分析で、25億ドルの利益
を上げてトップに輝いたのです。
 第2位は、ポールソン・アンド・カンパニーのジョン・ポール
ソン氏です。不動産価格の急落を前提として、空売りを繰り返し
て20億ドルの利益を手にしています。
 第3位は、元エンロンのトレーダーで、天然ガスのデリバティ
ブ取引を得意とするケンタウルス・エナジーのジョン・アーノル
ド氏で、15億ドルの利益を上げています。
 そして、あの有名なジョージ・ソロス氏――金融危機の到来を
先回りして得意の空売り戦略を展開して、11億ドルの利益をあ
げて、第4位につけています。ソロス氏は一時は息子に事業を継
がせて引退したのですが、2007年から復活して2008年に
は上位に食い込んでいます。   −―[オバマの正体/13]


≪画像および関連情報≫
 ●年収世界一/ジェームズ・シモンズ氏について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ルネサンス・テクノロジーズを率いる第1位のジェームズ・
  シモンズ氏の08年の報酬は2500億円だった。既に71
  歳になるが、現役として活躍。過去にも06年に1位となっ
  ており、昨年も3位とランキング上位の常連でもある。19
  82年に創業されたルネサンス社は、これまでの創業以来の
  年平均リターンは38%とも言われる。
    http://ameblo.jp/kouryu1093/entry-10246910670.html
  ―――――――――――――――――――――――――――
 ●図・写真の出典/「SAPIO」/8/5号より

ヘッジファンドを代表する3人.jpg
ヘッジファンドを代表する3人
posted by 平野 浩 at 04:18| Comment(0) | TrackBack(0) | オバマの正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月31日

●「米政権の経済のかじ取りは評価すべきか」(EJ第2624)

 オバマ政権の米経済のかじ取りをどのように評価すべきでしょ
うか。100年に一度の経済危機ということで、オバマ大統領が
就任する前から、なりふりかまわない景気刺激策と金融救済策に
巨額の資金を注ぎ込んできたのですが、それは本当に米国未来経
済の落ち込みを回避させることに成功したのでしょうか。
 確かにもっと下がるのではと思われてきたダウ平均株価は、7
月28日現在、9042ドルまで戻しており、それを好感して、
日経平均も1万円台を回復しています。
 バーナンキFRB議長は、今年の1月の議会証言では、次のよ
うに発言していたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 2007年12月に生じた米景気後退が今年度中に終焉を迎え
 2010年には回復に向かうと判断する十分な根拠がある。
                 ――バーナンキFRB議長
―――――――――――――――――――――――――――――
 確かにバーナンキFRB議長のいうように、ダウ平均株価につ
いては、上記のように戻してきているように見えます。さらに、
バーナンキFRB議長は、7月21日の議会証言で、米経済につ
いて次のコメントを出しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 米経済は2008年の第4四半期から09年の第1四半期にか
 けて大幅に収縮した。より最近では、下降ペースは著しく緩や
 かになったようにみえる。
       ――2009年7月22日付/日本経済新聞朝刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 これはどういうことを意味しているのでしょうか。
 これについては、経営コンサルタントの小宮一慶氏の分析をご
紹介することにします。米国のGDP成長率を見ていただきたい
と思います。
―――――――――――――――――――――――――――――
  ≪米国のGDP成長率/実質 年率%≫
         2700年 ・・・・・  2.0
         2008年 ・・・・・  1.1
   2008年 7〜 9月 ・・・・・ ▲0.5
   2008年10〜12月 ・・・・・ ▲6.3
   2009年 1〜 3月 ・・・・・ ▲5.5
              ――米国務省データより
―――――――――――――――――――――――――――――
 2008年の第4四半期というのは10〜12月ですが、これ
は実質でマイナス6.3 %、しかし、2009年1〜3月がマイ
ナス5.5 %ですから、「大幅に収縮」といっているのです。
 そこで注目されるのは、2009年4〜6月期の数字です。そ
の数字は本日、すなわち、7月31日に発表されるのです。バー
ナンキ議長は、おそらく1〜3月期よりも下落幅は小さくなると
予測しているのだと思います。
 その一方でバーナンキFRB議長は、雇用について次のように
懸念を表明しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 最終需要と生産では一応の安定化のサインがみえているが、雇
 用は引き続き弱い。       ――バーナンキFRB議長
       ――2009年7月22日付/日本経済新聞朝刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 2008年は、雇用が307.8 万人減少しています。しかし
2009年に入ってからは、この6月までで既に338.2 万人
も減っているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
          失業率(%) 非農業部門(増減数万人)
 2009年 1月  7.6 %       ▲74.1 万人
 2009年 2月  8.1 %       ▲68.1 万人
 2009年 3月  8.5 %       ▲65.2 万人
 2009年 4月  8.9 %       ▲51.9 万人
 2009年 5月  9.4 %       ▲32.2 万人
 2009年 6月  9.5 %       ▲46.7 万人
                   ――米総務省のデータ
―――――――――――――――――――――――――――――
 一番最新のデータで米国の失業率は9.5 %――もはや10%
を超えるのは確実とみられています。そうなると、オバマ政権の
支持率は大幅に下がると思います。確かに5月は失業者が若干減
り、このまま減少するのではないかと考えられたのですが、6月
にはさらに失業者が増えてしまっています。
 バーナンキFRB議長は、さらにいろいろ述べており、小宮氏
の分析はまだ続くのですが、米経済の分析は新しいデータが出た
時点で改めて述べることにします。
 バーナンキFRB議長は、「金融は著しく改善している」と強
調したうえで、次のように議会証言を締めくくっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 雇用は引き続き失われ、失業率は上昇している。失業と住宅価
 格の下落などにより、個人消費の伸びにも制限があるだろう。
 最近の住宅価格の安定が一時的なものである場合、今後の景気
 見通しが悪化する恐れがある。
       ――2009年7月22日付/日本経済新聞朝刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 一番心配なのは、米経済は本当に持つのかということですが、
それは長期金利が今後どのように推移するのかにかかっていると
思います。上記の7月22日付の日本経済新聞の記事でも次の見
出しが出ていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
         長期金利の抑制を重視
―――――――――――――――――――――――――――――
 長期金利については来週考えます。―[オバマの正体/14]


≪画像および関連情報≫
 ●金融市場議論百出
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  オバマ米大統領は、2009年6月23日に「ベン・バーナ
  ンキについては新しいニュースをつくろうとは思わない。非
  常に困難な環境下で彼がすばらしい仕事を行なってきたと私
  は思っているが」と語った。来年1月に4年の任期が終わる
  バーナンキ議長を大統領が再任するか否かにマスコミや市場
  の関心が集まってきている。それに対する答えが上記の発言
  である。昨年9月のリーマンショック以降、バーナンキ率い
  るFRBは、崩壊しかかった金融市場を支えるために、FR
  Bのバランスシートをリスクにさらしながら、救済策を次々
  と発動してきた。
       http://diamond.jp/series/money_market/10086/
  ―――――――――――――――――――――――――――

バーナンキ議長議会証言.jpg
バーナンキ議長議会証言
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