2012年09月03日

テーマパークのつくり方とミッキーの十戒

最後のパレードが発売された半年前に旧ブログに掲載した記事です。ミッキーの十戒を頭に入れておくと構想サツキとメイの武蔵野茶んぽ共和国構想もジオパーク化構想も簡単に理解できるようになります。

<転載開始>
ディズニーランドに関する2冊の書籍と「ミッキーの十戒」

最近発刊された2冊の「ディズニー本」を読みました。
今日はその感想を述べたいと思います。

◆ウォルト・ディズニーの成功のルール
リッチ・ハミルトン著 箱田忠昭訳 あき出版 2005年 12月2発刊
「全米一のディズニー研究家が解き明かすディズニーマジック! 夢をかなえる16の法則」

◆ディズニーが教える お客様を感動させる最高の方法
ディズニー・インスティチュート著 月沢季歌子訳 日本経済出版社 2005年 11月22日発刊
「驚異のリピーター率を生み出すノウハウ、コツをディズニー本家が初公開」

結論から申し上げます。私がお勧めするのは前者の「ウォルト・ディズニーの成功のルール」です。

両本とも元々は英語で書かれたものが翻訳されたものです。この点は共通します。

読者ターゲットは、自分の仕事にディズニーの手法を活かしたい人全般です。
それでも前者「ウォルト・ディズニーの成功のルール」の方が「個人向け」に書かれている本であると言えるでしょう。

「訪れる人をすべてトリコにするディズニーランド? この秘密は何か? この秘密を学び 自分の人生に応用すれば あなたの人生は 劇的に変わる!」

と、書かれています。

一方、「ディズニーが教える お客様を感動させる最高の方法」にはこのように書かれています。

「世界中の企業が目標とする究極のサービス精神は、いかにして世界中のディズニーランドで共有され、従業員に伝授され、お客様に届けられているのか?」

内容的にはディズニーに近い人が、ディズニーのことを書いているのですから、間違っている内容はありません。著者が紹介している内容や主張はみな「その通りだ」ということばかりです。

私が両本の決定的な違いを感じたのは「翻訳」についてです。
英語を和訳する「訳者」の訳し方によって「伝わり方」がガラリと異なることに気づきました。
今日はそのことをお伝えしたいのです。

前者の「ウォルト・ディズニーの成功のルール」の訳者の箱田忠昭氏は、数多くの著書を出版されている方です。

私が20年以上前に読んだ箱田氏の著書「ビジネスに成功する時間活用術 実業之日本社刊」は名著であり、今でも時々読み返す「座右の一冊」です。

この本は単にビジネス上のテクニックを著しただけのものではなく、心の法則の紹介など「人生マネージメント」についても書かれているとても奥が深い一冊です。

後者の「ディズニーが教える お客様を感動させる最高の方法」の訳者は、外資系証券会社に勤務されていた方だそうです。

訳者お二人の「訳し方」によるものでしょう。伝わってくるものが全く違うように感じました。

私はディズニーランド出身ですが、「ディズニー本家」が書いたこの本の内容に、理解できない部分もかなりありました。
理由は簡単です。東京ディズニーランドの現場運営では使われない用語に翻訳しているからです。

たとえば「パフォーマンス文化をつくり上げる」「セットはメッセージを伝える」という項目がありますが、パフォーマンスやセットなどという用語は日本のディズニーランドでは使いません。

パフォーマンス(Performance)は、日本では「うけねらい」など軽蔑に値する行動という意味にとられてしまいます。
セット(Set)も同様、舞台上の使い捨ての大道具(ハリボテ)を連想させてしまいます。

ディズニーランドは「心の産業」といわれます。ゲストに提供しているのも「ハピネス・しあわせ」です。
「心」が伝わる言葉を使用しないとディズニーランド側が伝えたいこともゲストには伝わらないのです。

小書にも書きましたが「伝える」と「伝わる」は180度違います。

「伝える」という言葉は、伝えたい側の立場に立った言葉です。
「伝えました」はお役所仕事と同じであり、ポスターでも作れば済むことです。

「伝わる」ということは、伝えられる側を意識した言葉です。
そして「伝わる」まで「伝え続ける」ことこそがディズニーの仕事そのものであり、決して楽ではないディズニー・キャストの使命であるのです。
(もちろん、伝えたいものは「心」であり「ホスピタリティ」です)

さて、ディズニーランドには多くの通訳の方が働いていますが、通訳するだけであっても必ずディズニーの教育を受けます。
なぜならば「ディズニーの心」を知らなくてはディズニーの使う言葉に訳せないからです。
相手に「伝わる」ことにならないのです。

それは、伝えたい側と伝えられる側間のコミュニケーションが成立しなくなってしまうということを意味します。
であるからこそ、ディズニーランドの通訳の方は、たとえビジネス用語であっても必ずディズニー的な用語に「意訳」します。それが「仕事」です。

前置きが長くなりましたが、この二冊の本から「伝わったもの」・・・ずいぶん違います。

「私はディズニー関係者ではないからディズニーで使う用語ではなく、一般に使われている用語のほうが理解しやすい」とお考えの方はぜひ二冊を読み比べてみてください。

そうではなくて「もっとディズニーを知りたい」とお考えの方には、冒頭に書きましたように「ウォルト・ディズニーの成功のルール」をお読みになることをお勧めします。

理由は、「著者と訳者の心が伝わってきたから」に他なりません。

最後にディズニーランドのつくりかた「ミッキーの十戒」を紹介します。

1、お客を知る。
2、ゲストの気持ちになる。
3、人とアイディアの流れを整理する。
4、「目を引くもの」をつくる。
5、視覚リテラシーを使う・
6、過負荷を避け、わくわくする気持ちにさせる。
7、一度にたくさんの話をしない。
8、矛盾を避け、独自性を保つ。
9、一オンスの努力で一トンのもてなしを。
10、努力を続ける。
「ディズニーが教える お客様を感動させる最高の方法」より引用

この本の「ミッキーの十戒」の和訳は東京ディズニーランドで実際に使用している「和訳」とはかなり違っています。表現しだいで伝わり方はガラリと異なる・・・

今日、私が皆さんにお伝えしたいことです。

NHKの「プロジェクトX」という番組ではないのですが、実際にプロジェクトに携わってきた人間が伝道者にならなければ、伝えたいことも伝わらないのです。

「ウォルト・ディズニーの成功のルール」の著者 リッチ・ハミルトン氏は「全米一のディズニー研究家」と称しています。

理由は後日に書かせていただきますが、私も今後「日本一のディズニーランド研究家」と称させていただきます。

リッチ・ハミルトン氏に負けないよう、ディズニーランドのホスピタリティを中心に皆さんにディズニーの真実をお伝えしていきたいと考えています。
<転載終了>

ミッキーの十戒は、人が人を楽しませるテーマパークのつくり方を示したものです。私の中に深くしみ込んでいるものです。私はこの鉄則を適用することにより、サツキとメイの武蔵野茶んぽ共和国という装置産業施設は大成功すると確信します。

私は、日本社会にミッキーの十戒の4に記された「目につくもの」のディズニー用語である「ウイニー」という用語などをインプットしたいと思います。白雪姫の願いの井戸というウイニーが大道具なら、「プロップス」は小道具です。東京ディズニーランドにさりげなく置かれた樽や木箱などがプロップスであり、人を楽しませるとても大切なものなのです。

日本中に、フランスのパサージュ(歩行者にとって快適な場所)のような通りが整備され、ウイニーやプロップスが人を楽しませる装置として設置されれば、この国に住む人々や、外国から訪れた人々の観光満足度は高まっていくに違いありません。

日本は、宮崎アニメなどで示された美しく、気高いソフトウエアが世界一豊富であると思います。それらをウイニーやプロップスというスクリーンや紙面上から飛び出した「カタチ」にすることこそが、この国のバリューを向上させることにつながるのです。

※今日も長い文章を読んでくださり、本当にありがとうございます。この記事の投稿前に「サツキとメイの武蔵野茶んぽ共和国A」という記事を投稿しています。合わせてご高覧いただきますようお願いいたします。
posted by S・C・ NAKAMURA at 17:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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