社説:アジアと原発 地域全体で安全向上を
毎日新聞 2012年09月02日 02時30分
福島第1原発の事故を受け、国内の原発をどこまで減らすべきかが、熱く議論されている。だが、日本で近い将来、原発がゼロになったとしても、世界では新興国などを中心に、当分、原発の増加が続く。国境付近での重大事故により、放射能などの影響が国外に及ぶリスクは今後、高まっていきそうだ。
具体的に日本の周辺を眺めてみよう。今年2月、韓国の古里(コリ)原発1号機で、定期点検期間中に一時、全電源が喪失する事故が起きた。電力会社による政府への事故報告は1カ月以上も経過した後だったという。
古里原発は韓国南部・釜山にあり、福岡市まで約200キロ、長崎県・対馬は約75キロしか離れていない。韓国の原発23基中、17基が日本海沿いにある。無関心ではいられない。
韓国や中国など東アジア地域では、今後、急速に原発の建設が進みそうだ。国際原子力機関(IAEA)の予測によると、2030年時点の原発の発電能力は10年末比で最大3倍超になるという。この地域で事故を防ぐため、福島の教訓も最大限生かしながら、国境を超えた情報共有や技術協力を活発化させたい。
事故を想定した準備も欠かせない。原発で事故が発生すれば、IAEAを通じ各国に情報が伝達される仕組みがある。ただ、放射能の直接的な影響が考えられる近隣諸国に対しては、特に詳しい情報が迅速かつ持続的に伝えられるべきだろう。