'12/9/1
広電最後の木造駅舎が解体へ
広島電鉄(広島市中区)の電車の駅・電停のうち木造で唯一残る、宮島線の廿日市駅(廿日市市廿日市)の駅舎が今秋、移設のため解体される。大正時代の開業時から地域を見守った駅に、地元では惜別の声が相次ぐ。有志のグループは8日、さよならイベントを開催する。
同駅は1924(大正13)年に廿日市町駅として開業。当時は路線の終点だった。戦前の改修工事などを経て現存する駅舎は木造平屋約25平方メートル。ホームにつながる待合室に残る出札窓口や鉄製の改札口が往時をしのばせる。出札窓口は、2005年に業務を終えていた。
市が本年度着工する沿線道路と駅前の整備事業に伴い、広電は10月以降に駅舎の解体を始め、新たなホームを約50メートル東側に移設する予定。新駅は来年3月末の供用開始を目指す。
「長い間お世話になりました」「寂しい」―。待合室に置かれた1冊の大学ノートには、通勤・通学で利用した思い出や感謝の言葉が手描きでつづられる。
終戦後の48年から50年余り、駅舎の売店を夫婦で営んだ和田トモエさん(90)は「昔は駅前から路線バスが発着し、足の踏み場のないくらい多くの人が行き来した」と懐かしむ。「人生の大半は駅舎と共にあった。最後まで見届けたい」
8日午後1時から駅舎であるイベントは、広島や廿日市市のファンでつくる「路面電車を考える会」などが主催。オリジナルの「切符」500枚を待合室で配布するほか、昔の駅前風景の写真パネルも展示する。
【写真説明】広電で唯一残る廿日市駅の木造駅舎。秋にも解体が始まる