2012年01月22日
今世紀の書籍販売動向をグラフ化してみる(「出版月報」編)
2012年01月22日06:56
具体的な値は【総合統計データ月報】の「S文化等」にある「1.書籍・雑誌の販売及び発行状況」。収録されているデータは社団法人全国出版協会出版科学研究所「出版月報」を元にしたもので、先の一連の記事が出版ニュース社の「出版年鑑」をしていたのとは別物。同じ業界を対象としてはいるが、取り扱う範囲や区分、解釈が微妙に違うため、両者に互換性は無い(概念・傾向としては似通っているが、双方を連結させるのは不可能)。
収録データは現時点では年次が2001〜2010年、月次が2008年11月から2011年10月。月次データも色々と面白い動きをしているが、季節・月特有の変動が激しく、中長期的な視点で見るのには向いていない。そこで「総合統計データ月報」という名前ではあるが、年次のデータで各種確認をしていく。
まずは書籍の販売動向を、販売部数と販売金額の双方でグラフ化したのが次の図。
↑ 書籍販売動向(推定)(〜2010年)(出版月報)
「販売部数」とは厳密には、「取次出荷部数」から「小売店から取次ぎへ返本された数」を引いたもの。【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる(2011年「出版物販売額の実態」版)】で説明している通り、書籍は出版社と本屋さんとの間に「取次」という中間問屋が介在し、色々と調整をしている。その取次の行き来から推測した「販売部数」であり、厳密には「お客が買った数」では無い(各本屋さんの在庫もカウントされる)。新聞の各家庭への配送の際に、地域販売店が間に挟まるのと同じ仕組み。
さて販売部数は2008年まではほぼ横ばいを維持していたものの、それ以降は急速な下落を見せている。データが収録されている限りでもっとも古い2001年以降では、2002年〜2003年の不景気時に販売部数が落ち込んでおり、書籍の販売部数は景気と浅からぬ関係があることが推測できる。また落ち込み具合は2003年時よりも大きく、(書籍そのものの立ち位置が以前より危うくなったのも合わせ)業界がより一層不景気感にあることが分かる。
他方、販売金額だがこちらは部数の下落より早く、2007年から下落傾向にある。後述する「1書籍あたりの平均販売部数」の大きな落ち込みは2009年に入ってからなので、部数動向と販売金額動向が一致しない2007年〜2008年は、書籍の低価格化(全体か、それとも低価格書籍のシェア増加かまでは不明)が起きたものと思われる。
続いて、公開されている新刊の発行点数と、推定販売部数を元に、平均販売部数を算出したもの。あくまでも「推定」で「平均」だが、景気動向にある程度翻弄されながらも、10年スパンで見ると逓減していることが確認できる。
↑ 1書籍あたり推定販売部数
先の販売部数・販売金額同様に、不景気時の2003年に大きく落ち込む動き、そして2009年にそれ以上の勢いで下降する流れは、今販売部数も同じ。ただし2010年には多少ながらも持ち直しを確認できたのが幸い。
【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる(2011年「出版物販売額の実態」版)】などでも触れているように、書籍と雑誌を比べた場合、昨今のメディアの大きな流れ(デジタルメディアの浸透や不景気)においては、書籍の方がまだゆるやかな落ち込みをしている。次の機会に触れることになる雑誌では、かなり厳しい現実を突き詰められることになる。
年次データが月次データを元に集計されるのなら、2011年分は後2か月後には収録されるはず。今春には2011年分を反映した、最新の値を盛り込んだ更新記事を提供する予定だ。
■関連記事:
【戦後の雑誌と書籍の発行点数をグラフ化してみる(「出版年鑑」編)】
【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる(2011年「出版物販売額の実態」版)】
これらの書籍が参考になります
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