表5 放射性核種による汚染時の選択薬剤
核 種 |
直後の処置 |
考慮すべき薬剤 |
注 意 |
アメリシウム(Am)
Americium |
DTPA |
DTPA
Ca-EDTA |
可及的早期にキレート化を行う。DTPAが入手困難ならばCa-EDTAを用いる。 |
ヒ素(As)
Arsenic |
洗浄 |
BAL(Dimercaprol) |
短半減期。
大量被ばく以外はBALは使用しない。 |
バリウム(Ba)
Barium |
洗浄、下剤、浣腸 |
硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム |
胃洗浄を行い、その後に硫酸ナトリウム、または硫酸マグネシウムで不溶性硫酸バリウムとして排泄させる。 |
臭素(Br)
Bromine |
多量の水分を採らせ、尿中排泄を増やす。 |
利尿剤 |
消化管汚染では胃洗浄。 |
カルシウム(Ca)
Calcium |
洗浄、下剤、浣腸 |
Ca剤、利尿剤、Na-DTPA |
大量被ばくではNa-DTPAも考慮する。 |
カリフォルニウム(Cf)
Californium |
DTPA、洗浄、下剤、浣腸 |
DTPA
Ca-EDTA |
可及的早期にキレート化を開始。DTPAが入手困難ならばCa-EDTAを用いる。 |
炭素(C)
Carbon |
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C-14のソフトβ線はサーベイ機器では検出できない。別個に低エネルギーβ線測定器で計測。生物学的半減期が短く、治療に要する事故は稀。 |
セリウム(Ce)
Cerium |
DTPA、洗浄、下剤 |
DTPA
Ca-EDTA |
可及的早期にキレート化を行う。DTPAが入手困難ならばCa-EDTAを用いる。 |
セシウム(Cs)
Caesium |
プルシアンブルー、洗浄、下剤 |
プルシアンブルーFe4[Fe(CN)6]3 |
放医研に備蓄 |
クロム(Cr)
Chromium |
洗浄、下剤 |
DTPA
DFOA
活性炭 |
陰イオン型は有効な治療法がない。陽イオンとしてメタルが存在するクロム塩の汚染ではDTPAもしくはDFOA。活性炭が消化管での吸収を減らす。 |
コバルト(Co)
Cobalt |
洗浄、下剤 |
大量被ばくでは、ペニシラミンを考慮。 |
コバルト塩は不溶性であり飲んだ場合、特に治療は要しない。 |
キュリウム(Cm)
Curium |
DTPA、洗浄、下剤 |
DTPA
Ca-EDTA |
可及的速やかにキレート化を行う。DTPAが入手困難ならば、Ca-EDTAを用いる。 |
ユウロピウム(Eu)
Europium |
DTPA、洗浄、下剤 |
DTPA
Ca-EDTA
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可及的速やかにキレート化を行う。DTPAが入手困難ならば、Ca-EDTAを用いる。 |
核分裂物質(混合) |
洗浄、下剤 |
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施設中の空気、拭き取りサンプルのγ線測定により、治療方針を決める。またα放出物の可能性をチェックする。最も主要な核物質は、ヨウ素、セシウム、セリウム、ストロンチウム。 |
フッ素(F)
Fluorine |
水酸化アルミニウムゲル |
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ガリウム(Ga)
Gallium |
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ペニシラミン |
半減期が極めて短い。 |
金(Au)
Gold |
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BALとペニシラミンが可能な治療剤であり、排泄を増すといわれる。 |
コロイド型Auの治療法は不明。 |
トリチウム(H)
Tritium |
洗浄
多量の水分を摂取。 |
利尿剤 |
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インジウム(In)
Indium |
DTPA |
DTPA |
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ヨウ素(I)
Iodine |
KI投与 |
KI |
できるだけ早くヨウ化カリウム130mg(ヨウ素として100mg)を飲ませる。REAC/TSは、必要に応じて7日間投与するとしている。 |
鉄(Fe)
Iron |
洗浄 |
DFOA経口ペニシラミンも効果。 |
穀類やシリアル加工穀物食、コーンフレークス、ポップコーン、オートミール等が、吸収を減少。 |
クリプトン(Kr)
Krypton |
洗浄 |
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身体に吸収されないが、クリプトンを含む混合体の浸潤が皮膚、肺の被ばくをきたすことはありうる。実際上は、あまり問題はない。 |
ランタン(La)
Lanthanium |
DTPA、洗浄、下剤 |
DTPA
Ca-EDTA |
DTPAが入手困難ならば、Ca-EDTAを用いる。 |
鉛(Pb)
Lead |
洗浄 |
DTPA、Ca-EDTA、BALペニシラミン |
BAL、ペニシラミンも一定の効果。 |
マンガン(Mn)
Manganese |
洗浄 |
DTPA |
陰イオンとして存在するMnは治療不可能。 |
水銀(Hg)
Mercury |
洗浄 |
DTPA、BAL、ペニシラミン、硫酸ホルムアルデヒドソーダ、重曹 |
卵白または、5%硫酸ホルムアルデヒドソーダで胃洗浄。入手できない場合は2〜5%重曹水を用いる。 |
ネプツニウム(Np)
Neptunium |
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DTPAも効果はない。 |
リン(P)
Phosphotus |
洗浄 |
水酸化アルミニウム(経口) |
大量の時は副甲状腺ホルモン。 |
プルトニウム(Pu)
Plutonium |
DTPA |
DTPA
Ca-EDTA
DFOA |
できるだけ早くDTPAを投与する。DTPAが入手困難ならば、Ca-EDTAを用いる。早期にCFOAも用いられる生物学的半減期は、肝臓で40年、骨は100年である。フィルムバッジでは測定できない。尿、便で測定する。 |
ポロニウム(Po)
Polonium |
洗浄、下剤 |
BAL |
低レベルでの被ばく時は、BALの毒性を考慮。ペニシラミンも可。 |
カリウム(K)
Potassium |
下剤、利尿剤、水酸化アルミニウム(経口) |
利尿剤 |
塩化カリウム10〜15mEq/l液を3〜4回/日、経口投与しK-42を稀釈。ジュースに混ぜて飲ませる。 |
プロメチウム(Pm)
Promethium |
DTPA洗浄、下剤 |
DTPA |
できるだけ早期にキレート剤を投与。 |
ラジウム(Ra)
Radium |
胃洗浄、下剤 |
硫酸マグネシウム
塩化アンモニウム
アルギン酸 |
10%硫酸マグネシウムで胃洗浄。硫酸バリウム(造影剤)の経口投与は、腸管吸収を減少。吸収後では無効。塩化アンモニウムは有効な脱ミネラル剤でありRa-226の尿中排泄を増す。アルギン酸も消化管吸収を減らす。 |
ルビジウム(Rb)
Rubidium |
プルシアンブルー |
プルシアンブルー |
化学的性状はカリウムと似ているが、カリウムと同じ治療の有効性については不明。 |
ルテニウム(Ru)
Ruthenium |
洗浄、下剤 |
クロールサイアザイドDTPA |
クロールサイアザイドは尿中排泄を増す。DTPAの効果は一定しない。 |
スカンジウム(Sc)
Scandium |
DTPA、洗浄、下剤 |
DTPA |
DTPAの代わりにCa-EDTAも可。 |
銀(Ag)
Silver |
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有効半減期が短く、治療不要。 |
ナトリウム(Na)
Sodium |
洗浄 |
利尿剤 |
生理食塩水1リットル静注後、フロセマイド等利尿剤を投与。 |
ストロンチウム(Sr)
Strontium |
洗浄直ちに燐酸アルミニウムゲル、または水酸化アルミニウムゲル100mlを飲ませる。硫酸マグネシウム10g服用により、消化管停留を短縮し、吸収を減少。 |
安定ストロンチウムステロイド剤
Potassiumrhodizoate (C6O2K2)
プレドニン |
乳酸ストロンチウム500〜1500mg/日を経口投与し、連日数週間続ける。グルコン酸ストロンチウム600mg/日を6日間静注投与によりSr-85の尿中排泄を増す。創傷汚染は、いかに小さくても見逃してはならず十分水洗いするがPotassiumrhodizo ate(C6O2K2)1gを撒布すれば、Srは局所的に不溶性となり、吸収されない。コルチコステロド投与は、放射性ストロンチウムの尿中排泄を3倍に増加。プレドニン経口5〜20mg/日、またはメチルプレドニゾロン10〜40mg静注。 |
硫黄(S)
Sulfur |
洗浄、下剤 |
不明 |
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テクネチウム(Tc)
Technetium |
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過塩素酸カリウム |
過塩素酸カリウムKClO4は唾液腺、甲状腺、胃線量を減少。Tc-99mは半減期6時間。 |
トリウム(Th)
Thorium |
DTPA |
DTPA
DFOA |
DTPA、DFOAは可溶性成分に有効で、排泄を増加。二酸化トリウムには、有効治療はない。 |
ウラン(U)
Uranium |
DTPA |
DTPA
重炭酸ナトリウム |
DTPAは4時間以内が効果的である。腎毒性に対してREAC/TSは、44.3mEq、7.5%の重曹2アンプルを1000mlの生食に入れ125ml/hrで静注するか、錠剤を尿のpHが8〜9になるまで投与するとしている。 |
イットリウム(Y)
Yttrium |
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DTPA |
DTPAが入手困難ならば、Ca-EDTAを用いる。 |
亜鉛(Zn)
Zinc |
DTPA、洗浄 |
DTPA |
DTPAが入手困難ならば、Ca-EDTAを用いる。フィチン酸は腸管吸収を減じる。 |
ジルコニウム(Zr)
Zirconium |
DTPA、洗浄 |
DTPA |
DTPAが入手困難ならば、Ca-EDTAを用いる。フィチン酸は腸管吸収を減じる。 |