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4. 放射性核種の体内汚染時の選択薬剤

放射性核種による体内汚染が生じた時に選択可能な薬剤については、米国放射線防護測定審議会(NCRP)報告を参考とした表5を参照のこと。

表5 放射性核種による汚染時の選択薬剤
核  種 直後の処置 考慮すべき薬剤 注  意
アメリシウム(Am)
Americium
DTPA DTPA
Ca-EDTA
可及的早期にキレート化を行う。DTPAが入手困難ならばCa-EDTAを用いる。
ヒ素(As)
Arsenic
洗浄 BAL(Dimercaprol) 短半減期。
大量被ばく以外はBALは使用しない。
バリウム(Ba)
Barium
洗浄、下剤、浣腸 硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム 胃洗浄を行い、その後に硫酸ナトリウム、または硫酸マグネシウムで不溶性硫酸バリウムとして排泄させる。
臭素(Br)
Bromine
多量の水分を採らせ、尿中排泄を増やす。 利尿剤 消化管汚染では胃洗浄。
カルシウム(Ca)
Calcium
洗浄、下剤、浣腸 Ca剤、利尿剤、Na-DTPA 大量被ばくではNa-DTPAも考慮する。
カリフォルニウム(Cf)
Californium
DTPA、洗浄、下剤、浣腸 DTPA
Ca-EDTA
可及的早期にキレート化を開始。DTPAが入手困難ならばCa-EDTAを用いる。
炭素(C)
Carbon
    C-14のソフトβ線はサーベイ機器では検出できない。別個に低エネルギーβ線測定器で計測。生物学的半減期が短く、治療に要する事故は稀。
セリウム(Ce)
Cerium
DTPA、洗浄、下剤 DTPA
Ca-EDTA
可及的早期にキレート化を行う。DTPAが入手困難ならばCa-EDTAを用いる。
セシウム(Cs)
Caesium
プルシアンブルー、洗浄、下剤 プルシアンブルーFe4[Fe(CN)63 放医研に備蓄
クロム(Cr)
Chromium
洗浄、下剤 DTPA
DFOA
活性炭
陰イオン型は有効な治療法がない。陽イオンとしてメタルが存在するクロム塩の汚染ではDTPAもしくはDFOA。活性炭が消化管での吸収を減らす。
コバルト(Co)
Cobalt
洗浄、下剤 大量被ばくでは、ペニシラミンを考慮。 コバルト塩は不溶性であり飲んだ場合、特に治療は要しない。
キュリウム(Cm)
Curium
DTPA、洗浄、下剤 DTPA
Ca-EDTA
可及的速やかにキレート化を行う。DTPAが入手困難ならば、Ca-EDTAを用いる。
ユウロピウム(Eu)
Europium
DTPA、洗浄、下剤

DTPA
Ca-EDTA

可及的速やかにキレート化を行う。DTPAが入手困難ならば、Ca-EDTAを用いる。
核分裂物質(混合) 洗浄、下剤   施設中の空気、拭き取りサンプルのγ線測定により、治療方針を決める。またα放出物の可能性をチェックする。最も主要な核物質は、ヨウ素、セシウム、セリウム、ストロンチウム。
フッ素(F)
Fluorine
水酸化アルミニウムゲル    
ガリウム(Ga)
Gallium
  ペニシラミン 半減期が極めて短い。
金(Au)
Gold
  BALとペニシラミンが可能な治療剤であり、排泄を増すといわれる。 コロイド型Auの治療法は不明。
トリチウム(H)
Tritium
洗浄
多量の水分を摂取。
利尿剤  
インジウム(In)
Indium
DTPA DTPA  
ヨウ素(I)
Iodine
KI投与 KI できるだけ早くヨウ化カリウム130mg(ヨウ素として100mg)を飲ませる。REAC/TSは、必要に応じて7日間投与するとしている。
鉄(Fe)
Iron
洗浄 DFOA経口ペニシラミンも効果。 穀類やシリアル加工穀物食、コーンフレークス、ポップコーン、オートミール等が、吸収を減少。
クリプトン(Kr)
Krypton
洗浄   身体に吸収されないが、クリプトンを含む混合体の浸潤が皮膚、肺の被ばくをきたすことはありうる。実際上は、あまり問題はない。
ランタン(La)
Lanthanium
DTPA、洗浄、下剤 DTPA
Ca-EDTA
DTPAが入手困難ならば、Ca-EDTAを用いる。
鉛(Pb)
Lead
洗浄 DTPA、Ca-EDTA、BALペニシラミン BAL、ペニシラミンも一定の効果。
マンガン(Mn)
Manganese
洗浄 DTPA 陰イオンとして存在するMnは治療不可能。
水銀(Hg)
Mercury
洗浄 DTPA、BAL、ペニシラミン、硫酸ホルムアルデヒドソーダ、重曹 卵白または、5%硫酸ホルムアルデヒドソーダで胃洗浄。入手できない場合は2〜5%重曹水を用いる。
ネプツニウム(Np)
Neptunium
    DTPAも効果はない。
リン(P)
Phosphotus
洗浄 水酸化アルミニウム(経口) 大量の時は副甲状腺ホルモン。
プルトニウム(Pu)
Plutonium
DTPA DTPA
Ca-EDTA
DFOA
できるだけ早くDTPAを投与する。DTPAが入手困難ならば、Ca-EDTAを用いる。早期にCFOAも用いられる生物学的半減期は、肝臓で40年、骨は100年である。フィルムバッジでは測定できない。尿、便で測定する。
ポロニウム(Po)
Polonium
洗浄、下剤 BAL 低レベルでの被ばく時は、BALの毒性を考慮。ペニシラミンも可。
カリウム(K)
Potassium
下剤、利尿剤、水酸化アルミニウム(経口) 利尿剤 塩化カリウム10〜15mEq/l液を3〜4回/日、経口投与しK-42を稀釈。ジュースに混ぜて飲ませる。
プロメチウム(Pm)
Promethium
DTPA洗浄、下剤 DTPA できるだけ早期にキレート剤を投与。
ラジウム(Ra)
Radium
胃洗浄、下剤 硫酸マグネシウム
塩化アンモニウム
アルギン酸
10%硫酸マグネシウムで胃洗浄。硫酸バリウム(造影剤)の経口投与は、腸管吸収を減少。吸収後では無効。塩化アンモニウムは有効な脱ミネラル剤でありRa-226の尿中排泄を増す。アルギン酸も消化管吸収を減らす。
ルビジウム(Rb)
Rubidium
プルシアンブルー プルシアンブルー 化学的性状はカリウムと似ているが、カリウムと同じ治療の有効性については不明。
ルテニウム(Ru)
Ruthenium
洗浄、下剤 クロールサイアザイドDTPA クロールサイアザイドは尿中排泄を増す。DTPAの効果は一定しない。
スカンジウム(Sc)
Scandium
DTPA、洗浄、下剤 DTPA DTPAの代わりにCa-EDTAも可。
銀(Ag)
Silver
    有効半減期が短く、治療不要。
ナトリウム(Na)
Sodium
洗浄 利尿剤 生理食塩水1リットル静注後、フロセマイド等利尿剤を投与。
ストロンチウム(Sr)
Strontium
洗浄直ちに燐酸アルミニウムゲル、または水酸化アルミニウムゲル100mlを飲ませる。硫酸マグネシウム10g服用により、消化管停留を短縮し、吸収を減少。 安定ストロンチウムステロイド剤
Potassiumrhodizoate (C6O2K2)
プレドニン
乳酸ストロンチウム500〜1500mg/日を経口投与し、連日数週間続ける。グルコン酸ストロンチウム600mg/日を6日間静注投与によりSr-85の尿中排泄を増す。創傷汚染は、いかに小さくても見逃してはならず十分水洗いするがPotassiumrhodizo ate(C6O2K2)1gを撒布すれば、Srは局所的に不溶性となり、吸収されない。コルチコステロド投与は、放射性ストロンチウムの尿中排泄を3倍に増加。プレドニン経口5〜20mg/日、またはメチルプレドニゾロン10〜40mg静注。
硫黄(S)
Sulfur
洗浄、下剤 不明  
テクネチウム(Tc)
Technetium
  過塩素酸カリウム 過塩素酸カリウムKClOは唾液腺、甲状腺、胃線量を減少。Tc-99mは半減期6時間。
トリウム(Th)
Thorium
DTPA DTPA
DFOA
DTPA、DFOAは可溶性成分に有効で、排泄を増加。二酸化トリウムには、有効治療はない。
ウラン(U)
Uranium
DTPA DTPA
重炭酸ナトリウム
DTPAは4時間以内が効果的である。腎毒性に対してREAC/TSは、44.3mEq、7.5%の重曹2アンプルを1000mlの生食に入れ125ml/hrで静注するか、錠剤を尿のpHが8〜9になるまで投与するとしている。
イットリウム(Y)
Yttrium
  DTPA DTPAが入手困難ならば、Ca-EDTAを用いる。
亜鉛(Zn)
Zinc
DTPA、洗浄 DTPA DTPAが入手困難ならば、Ca-EDTAを用いる。フィチン酸は腸管吸収を減じる。
ジルコニウム(Zr)
Zirconium
DTPA、洗浄 DTPA DTPAが入手困難ならば、Ca-EDTAを用いる。フィチン酸は腸管吸収を減じる。
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