社説:日朝協議 平壌宣言の原点に戻れ
毎日新聞 2012年09月02日 02時31分
北朝鮮は4年前の協議で拉致問題の再調査を約束したが、日本の首相交代などを理由にほごにしてきた。日本との関係改善や国交正常化のためには、拉致問題の解決に向けた誠意と具体策を明確にすることが欠かせないということを、北朝鮮は改めて認識すべきである。
また、北朝鮮の核開発や弾道ミサイル発射なども大きな課題だ。日本政府はこれら安全保障にかかわる問題も積極的に取り上げ、中断したままの6カ国協議の再開へとつなげる役割を果たしてほしい。
小泉純一郎元首相が訪朝し、故金正日(キムジョンイル)総書記との間で日朝平壌宣言に署名してから、今月17日でちょうど10年になる。同宣言は「日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立する」ことが双方の利益と地域の平和・安定に寄与する、と明記した。双方がこの原点に戻って真摯(しんし)に向き合うことでしか、国交正常化の道筋は見えてこないだろう。
領土をめぐる韓国や中国との対立を抱えたこの時期だからこそ、政府は日朝正常化を含む東アジア全体の安定した秩序と将来像をどう構築するかを、真剣に考える必要がある。日朝協議もその文脈の中に位置づけていくべきではないか。