マッキーの「海の常識」

第3回目「面舵、取舵、ようそろ!」(1117日放送)

 

 「あなたは、なにどし生まれ?」なんて、日常会話ではよくする質問ですが、きょうのテーマは、この「えと」に関係があります。正確には、「えと」のうち「と」に関係しますが、「と」と言いつつ、10ではなく12支なんですね、これが。「ね うし とら う たつ み うま ひつじ さる とり いぬ い」と、諳んじている人も多いと思います。この12支は、時刻や方位を示す用語としても使用され、北を「ね」、南を「うま」などと呼んでいました。「草木も眠る丑三つどき」「子午線」などが、有名ですね。

これを、船に当てはめ、船のへさきを「ね」とし、船の全周を時計回りに12分すると、右舷が「う」、左舷が「とり」となります。それで、船のへさきを右舷側に向けるように舵を取ることを「うかじ」、これがなまって「うむかじ」から「おもかじ」に、船のへさきを左舷側に向けるように舵を取ることを「とりかじ」と言います。

次に、「ようそろ」は、船をまっすぐに進めることですが、漢字では「宜候(ようそろ)」と書き、「そのままでよろしい」くらいの意味です。

これらは、代表的な操舵号令ですが、どのように、発声されるのか、ここで言ってみます。「面舵」は「おもーかーじ」、「取舵」は「とーりかーじ」、「ようそろ」は「よーそろー」です。その昔、伏木みなとにも縁深い千石船などは、安全に船を進めるため、船頭が船首にいて水路を見極めながら、船尾にいる舵取りに、風で号令が掻き消されないように大声で、独特の抑揚を付け、面舵と取舵を間違わないように、操舵号令を発声したそうです。

ところで、操舵号令が日本語なのは、海上保安庁、海上自衛隊、日本漁船くらいで、その他の船は、英語です。英語では、「面舵」は「starboard」、「取舵」は「port」、「ようそろ」は「steady」と言います。「steady」とは、船と舵が恋人?!なんでしょうか。

さて、ここで、映画「タイタニック」で、氷山にぶつかる寸前に当直の航海士が「starboard」と号令し、船のへさきが左に向き始めましたが、間に合わずに、氷山に右舷側をこすりながらぶつかった場面を覚えていますか?私は、見ていて、号令と船の動きが反対だと咄嗟に思いました。これは、当時、海事関係者の間では、格好の話題となりました。何故、号令と動きが反対かの答えは、あの当時は、舵に着いた柄()(「舵柄」(だへい)と言います。)を動かして舵を取っていたか、又はその名残りのせいだそうです。つまり、船のへさきを左(port)に向けるには、舵を左に取る必要がありますが、そのためには、舵柄を右(starboard)に取らなければならない訳で、タイタニックの航海士の号令はおかしくないということになります。

以上、きょうの「マッキーの「海の常識」」でした。次回は、「船のトン数って、何?」です。では、「よーそろー。ボンボヤージュ!」