CPUの適正温度は何度か?
CPUの適性温度は何度なのだろうか?
CPUの場合、性能、TDP等がそれぞれ異なる。
また、アイドル時、高負荷時でも異なるはずだ。
さらに、季節、つまり室温によってCPUの温度が変動するだろう。
実際に、ユーザーやPCによって、CPU温度はマチマチだ。
40度程度の場合もあれば、80度近い温度になっている場合もある。
当然、負荷や室温によって変動するので、同一PCでも温度は乱高下していることが多い。
したがって、一概に適性温度は何度と決めるのは難しいように思える。
ユーザーによっては、夏場にはCPU温度が80度前後の状況で使用していて不安に思っている人もいるだろう。
また、そこまでの温度になっていなくても、CPUの温度をどの程度に保っておけばいいか分からない人は多いのではないだろうか?
そこで、CPUの適性温度について考えてみることにした。
CPUの温度は基本的に低ければ低い程いいはずだ。
もちろん、0度以下になれば別だが、余程の寒冷地で氷点下の環境でPCを使用しない限りそういうことはないだろう。
性能が発揮できない程の低温で使用する場合を除いては、熱による劣化や故障を防ぐ点で、より低温であることが望ましい。
これは、電気製品等の熱を発生する機器であれば、共通して言えることだろう。
一方で、CPUは発熱し、CPUクーラーを使用しなければ、100度前後まで温度が上昇する。
実際には、CPUクーラーで冷却され、少なくとも60度〜80度くらいには温度が低下する。
この温度はPCパーツの中でも、グラフィックカードとともに高い。
見方を変えれば、高温になることが想定されているので、ある程度熱に強い設計がされていると考えられるだろう。
もちろん、熱暴走をしたり、劣化や故障を引き起こす温度では問題はあるが、それよりも低温で安定して動作し、かつ劣化や故障が発生しにくい温度に保っておけばいいだろう。
したがって、低温であるに越したことはないが、ある程度の高温であっても問題ないと言えそうだ。
では、ある程度の高温とは、どのくらいの温度なのだろうか?
実を言うと、CPU温度に関する指標が存在する。
「Tcase」というCPU温度に関する指標がある。
これは、CPUのヒートスプレッダ中央部分の温度のことで、この温度より低ければ、CPUが安定して動作することを意味している。
つまり、このTcaseを目安にすれば、とりあえず、CPUの上限の温度は分かることになる。
したがって、PCを使用する際は、少なくともこの温度以下で使用することが望ましいはずだ。
ただ、Tcaseは、CPU毎に異なる。性能やTDP等によって上限温度が異なってくるからだ。
各CPUのTcaseは、メーカーサイトの仕様表等で確認できるので、今使っているCPUやこれから購入予定のCPUのTcaseを確認しておいた方がいいだろう。
参考までにIntelの主要なCPUのTcaseの値を挙げておこう。
i7-980X : 67.9℃
i7-975 : 67.9℃
i7-930 : 67.9℃
i7-2600K : 72.6℃
i7-2600 : 72.6℃
i7-2600S : 69.1℃
i7-860 : 72.7℃
i5-2500K : 72.6℃
i3-2100 : 69.1℃
Pentium G6950 : 72.6℃
Core 2 Quad Q9550 : 71.4℃
上記に挙げたCPUを見ると、設計、性能やTDP等によって、ばらつきはあるが、67.9℃〜72.7℃になっている。
つまり、だいたい70度ブラスマイナス3度くらいがデスクトップPC向けCPUのTcaseと考えていいだろう。
したがって、CPU温度は、少なくとも70度前後以下に保つ必要があり、これ以上の温度になっている場合は、早急にCPUクーラーの交換やPCケースのエアフローの見直し等の対策が必要になるだろう。
Tcaseによって、CPUの上限温度は分かったが、この温度以下であれば十分かと言うと、そうとも言い切れない。
やはり、Tcaseは最低限クリアしなければならない温度であり、またCPU温度は低ければ低い程いいはずで、適性温度はさらに下に設定する必要があるだろう。
ただ、そうは言っても、例えば夏場の高負荷状態で30度台を保つことは、まず無理であろう。
室温に加えて、CPUの発熱があるので、どんなに冷却対策をしても40度台後半にはなるはずだ。
そうなると、理想論は別として、ある程度現実的な温度を適性温度と考えることが必要となりそうだ。
現実的に考えると、Tcaseが70度前後であるので、それより10度低い60度以下にするというのが、一つ考えられる。
Tcaseは安定して動作する温度ではあるが、劣化や故障率等を考慮すると、やはりTcaseよりも低い温度にしておいた方がいいはずだ。
そして、現実的に夏場に高負荷状態でCPUが動作した場合を考えると、60度前後以下が適性温度の目安となりそうだ。
60度前後であれば、Tcaseより10度低く、劣化や故障を防ぎ寿命を長くすることができるだろう。
また、60度前後以下であれば、ハイエンドCPUであっても、不可能な温度ではない。
エアフローの見直しや簡易水冷CPUクーラーを導入することで、夏場の高負荷時でもなんとか保つことができる温度ではないだろうか。
そう考えると、60度前後以下、つまり50度台の温度におさまっていれば、とりあえずは適性な温度と言えそうだ。
また一般的にも、50度台のCPU温度であれば、標準的な温度と言え、理想的とまではいかなくても、とりあえずは安心してPCを利用できる温度と考えられる。
ただ、これはあくまでも夏場の高負荷時という最悪の条件を想定したものなので、年間を通じてこの温度内に保つ必要がある。
逆に言えば、夏場の高負荷時以外の時は、さらに温度は下がるし、下げることは可能なはずだ。
また、比較的性能が低く、TDPも低いCPUであれば、常時60度よりももっと低い温度にできるはずだ。
さらに、CPU以外のPCパーツにとっても、CPU温度が下がれば、CPUの熱の影響を受けにくいので、特にマザーボードやメモリーの劣化や故障を回避し寿命をのばすことができるだろう。
したがって、CPUだけでなく、他のPCパーツへの影響を考えると、60度よりもさらに低い、50度前後以下が理想的な温度と考えられそうだ。
この温度であれば、CPUとっては全く問題ない温度であり、しかもマザーボードやメモリー等にも悪影響を与えない温度と言えそうだ。
もちろん、CPUのスペックやCPUクーラー、エアフロー等によっては達成は難しい場合もあるだろう。
ただ、仮に室温が30度だとしても、室温より20度高い温度なので、明らかに不可能な値ではない。
また、夏場の高負荷時以外であれば、十分におさまる値であるので、少なくとも、最悪条件以外の平常時には、この温度を理想温度と考えた方がいいだろう。
以上のように、CPUの適性温度について考えてみた。
最初に述べた通り、CPUのスペックや負荷状態、室温等条件は様々なので、一概に言えることではない。
ただ、少なくとも、Tcaseの値については意識し、自分が使っているCPUのTcaseを知らない場合は確認しておいた方がいいだろう。
そして、最悪の条件でもTcaseの値を越えないように、冷却対策をすることは必須と考えるべきだろう。
その上で、さらに低い温度を目指し、年間を通じて最悪条件でも60度以下にしておけば、ほぼ合格と言えるだろう。
可能であれば、さらに低い50度以下を目指し、冷却対策をするといい。
これが達成できれば、申し分なく理想的な温度でCPUやその他PCパーツを安心して使用していくことができるはずだ。
もちろん、これ以上に低い温度になれば、さらにいいが、現実的には難しく、またそのためにCPUクーラーやPCケースを買い換えるというのは、経済的にも損失が大きい。
あくまで50度は、最悪条件下での温度なので、それ以外の場合は、40度台前半、場合によっては30度台になりえるので、これ以上を目指す必要性は薄いだろう。
最後にまとめると、以下のようになる。
上限温度 : 70度前後以下(各CPUのTcase値)
適性温度 : 60度以下
理想温度 : 50度以下
これから、夏に向けて暑さが厳しくなるだろう。
そして、今年の夏は節電が要求されるので、室温が例年より上がり、PCにとっても過酷な夏となる。
CPUの温度上昇に不安がある場合は、上記の温度を参考に今のうちから冷却対策をしておいた方がいいだろう。
現時点の気候で上限温度や適性温度を越えている場合は、なおさらであろう。
一番てっとり早いのは、CPUクーラーを交換することだ。
リテールクーラーを使っているなら、市販のCPUクーラーにすると冷却性が増す。
設置スペースがあり、前から後ろへのエアフローであれば、サイドフロー型のCPUクーラーがより冷却性が高く好ましい。
ただ、大幅に温度低下を目指すなら、簡易式の水冷式CPUクーラーがお勧めだ。
特に、上限温度を越えている場合は、水冷式にすることを検討した方がいい。
条件によって異なるが、空冷式より10度以上温度低下することも多いので、一気に適性温度までCPU温度を下げることができるだろう。
あとは、PCケースのエアフローの見直しも効果的であろう。
ケースファンの設置場所、風量調整、さらにケースファンの増設等によって、エアフローを最適なものにすれば、CPUの温度も下げることができ、また周辺のPCパーツの温度も下げることができる。
まずは、現状の温度とCPUのTcaseを確認することから始めよう。
問題があれば、夏までに対処をしておけば、過酷な夏も安心して乗り切ることができるはずだ。