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<新型出生前診断>今月にも開始 高い精度 心のケアに遅れ

毎日新聞 9月1日(土)2時32分配信

<新型出生前診断>今月にも開始 高い精度 心のケアに遅れ
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新型出生前診断の仕組み

 国立成育医療研究センター(東京)と昭和大病院(同)は31日、妊婦の血液から胎児のダウン症など三つの染色体異常を高精度で調べることができる新型出生前診断の臨床研究を、早ければ今月にも始めると千葉県で開かれた学会で発表した。35歳以上の高齢妊婦などを対象に、妊娠10週から行う。ダウン症の場合、99%の精度で判別できる。他に北海道大など7施設程度も研究への参加を検討しているという。【斎藤広子、五味香織、河内敏康】

 米国の検査会社が開発し、米国で昨年10月から始まった。その仕組みはこうだ。

 妊娠10週前後の妊婦の血液の血漿(けっしょう)成分には、わずかに胎児のDNAが漂っている。妊婦の血液からDNAを取り出し、23対ある染色体のどれに由来するか分類する。例えばダウン症の場合、21番染色体に由来するDNAの割合が、通常よりもわずかに多ければ「陽性」と判定する。同様に比較的頻度が高い13番、18番染色体の異常についても高精度で判定可能とされる。

 一方この検査では、遺伝病の有無を調べることはできない。また検査結果の精度が確認されているのは、35歳以上の妊婦など染色体異常の胎児を妊娠する可能性が高いケースだけだ。従来は採血のみでこれほど高い精度で胎児の異常を調べられる検査はなかった。例えば、現在行われている「母体血清マーカー検査」は、採血だけで済むが胎児のダウン症は8割の精度でしか分からない。「羊水検査」や「絨毛(じゅうもう)検査」は妊婦の子宮に針を刺すなどして胎児の遺伝子を直接調べられるが、わずかに流産の可能性があるとされる。

 昭和大の関沢明彦准教授によると、新型の検査は香港やドイツ、フランスなどですでに行われており、韓国などでも9月から開始予定だという。

 ◇相談窓口、ルール作りが必要

 検査の実施に当たっては、妊婦が検査の内容や意味を理解し、結果をどう受け止めるかサポートするカウンセリングが重要となる。だが日本では、専門的に対応できる「遺伝専門外来」などの窓口を設けている医療機関は限られ、態勢は不十分だ。玉井真理子・信州大准教授は「医療現場に、妊婦にしっかりと説明できる人と資金がないと、カウンセリング体制の充実は実現しない」と指摘。「各病院の善意では追いつかない。人材の養成の機会を作るため、公的な支援が必要だ」と話す。

 31日に行われた学会で、成育医療研究センターの左合治彦周産期センター長は「安易に検査が行われると大きな混乱が生まれる恐れがある。臨床研究でカウンセリングの基礎資料を作りたい」と話した。また臨床研究に参加する施設の条件として「出生前診断に精通した専門医が複数所属する」「遺伝専門外来で30分以上のカウンセリングを行う」などを示した。

 研究への参加を検討しているという北海道大病院の山田崇弘助教は「この検査はいずれいやおうなく日本で導入されるが、水面下で行われるのはよくない」と、ルール作りの必要性を強調。一方、日本医科大は、研究への参加は現在検討していないという。同大遺伝診療科の三宅秀彦医師は「この検査がダウン症の人を否定する流れになるのは危険」と、安易な検査の広がりを懸念した。

 ★ダウン症 人間の体細胞に23対46本ある染色体のうち、21番染色体が1本多い3本ある染色体異常によって発症する。知的障害のほか、心臓などに先天性の異常があることが多い。平均700〜1000人に1人の割合で生まれ、母親の年齢が上がるほど割合も高まる。ダウン症とは別に、13番染色体、18番染色体が1本多い染色体異常もある。

◇「受診は慎重に」日産婦が声明へ

 日本産科婦人科学会(日産婦、小西郁生理事長)は31日までに、新型の出生前診断について、全ての妊婦が事前に検査の意味を理解してから、受けるかを判断するよう求める声明を出す方針をまとめた。医療者にも丁寧な事前説明を求める。理事長声明として1日に発表する。

 日産婦の出生前診断に関する作業グループの平原史樹委員長は「採血だけで検査自体は簡単だが、結果は遺伝子に関する重大な情報だ。通常の妊婦健診のような感覚で受けると、予期せぬ結果に困惑する可能性がある」と話す。【斎藤広子】

最終更新:9月1日(土)2時32分

毎日新聞

 

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