典型的なノンポリと思っていた大学生の息子が、ロンドン五輪前後から急に国際社会への関心を語り始めた。国旗の成り立ち程度の話かと思いきや、日中、日韓の微妙な関係である▲竹島、尖閣諸島問題の反日感情に対する日本人としての反論なのだ。ネット上の不確かな情報を論拠にしていたため、「歴史を多角的に学び、相手の立場も考えるべきだ」と教科書的に諭したが、「そんな弱腰で」ときた▲「戦争で学んだのは平和の尊さ。外交は冷静が第一」と続けたが、聞こえてきたのは韓国大統領の「天皇陛下の謝罪」「慰安婦問題への責任ある措置」の要求だった。時を同じく、香港の活動家が沖縄県の尖閣諸島に不法上陸し14人が逮捕、強制送還された▲こうした中韓の強硬姿勢に小職は言葉を失う。テレビは、全国戦没者追悼式で野田首相が歴代と相も変わらず「多大の損害と苦痛を与えた」と、アジア諸国への加害責任に言及する姿を映し出していた▲政府は、両国への抗議で国内世論の沈静化を急いでいるが、五輪サッカー男子韓国代表の竹島問題をめぐる政治的パフォーマンスもあって、火のついた愚息の憤慨は収まりそうにない▲各国の対応に政権批判の矛先を外交問題にすり替える思惑を垣間見るが、同じ歴史を同じ手法で蒸し返すだけの偏狭なナショナリズムはもう終わりにしよう。未来を託す若者を翻弄(ほんろう)する愚は許されない。(福)