下記は、大津地方裁判所に提出された訴状内容の「請求の原因」である。
<請求の原因>
第1 当事者及び原告らが居住する地域の特徴・問題の経過
1 当事者
(1)原告らは、草津市笠山八丁目4番25号の滋賀県精神医療センター周辺に居住する住民である。
(2)被告は、滋賀県知事の地位にあるものである。
2 原告らが居住する地域の特徴
医療観察病棟建設予定地は、滋賀県が昭和54年に「びわこ文化公園都市構想」により位置づけられた文化公園都市の福祉ゾーンに存在し、我々が住まう「飛島グリーンヒル」は、福祉ゾーンを取り巻く大規模な住宅ゾーンとして、飛島都市開発株式会社が開発した滋賀県でも最大規模の閑静なニュータウンである。
昭和54年3月大津湖南都市計画事業として認可され、173ha(甲子園球場45個分) 5千戸2万人の街として、昭和56年工事着工、昭和58年12月より入居を開始して28年経過している。平成24年4月現在、草津市若草地区 834世帯 2,439名、大津市青山・松が丘地区が2,714 世帯 9,886名、大津市・草津市合計で3,548世帯 12,325名が生活する大きな住宅地となっている。
この地域は、街のシンボルとなっている里山の「牟礼山」を中心として、四季折々の樹木や花で彩られた緑地ゾーンや、多くの緑歩道が配置され、滋賀県でも有数の緑豊かで閑静な住宅街を構成している。平成21年には、青山・松が丘を含め財団法人住宅生産振興財団が毎年主催する全国最大規模のまち並みコンペである「住まいのまちなみコンクール」で優秀賞を受賞するなど、緑溢れるきれいな街並みとしての高い評価を受けている。
特に、大津市行政区においては、人口は9,886人、世帯数3,092世帯、幼年人口比率が24.3%となっており、学区別の子どもの割合は、大津市内36学区中1位と、子育て世帯の大変多い地域である。また近隣には、立命館大学びわこキャンパスと、龍谷大学瀬田学舎もあり、多くの若い学生が行き交い、学生の活力溢れる街にもなって来ている。
3 問題の経過
この地域が、自然環境と調和を保ち、子供や学生の活気溢れる共生社会を目指したまちづくりをしながら歩んできた最中、22年9月、突然に、医療観察病棟建設計画が、新聞報道として取り上げられた。大方の住民は、そうした事実すら知らず、新聞報道で知った住民も、報道記事に記載があるように、近日中に説明会が開催されるものと思っていた。
しかし、数か月が経っても滋賀県からは何の連絡もなく、この計画を知った住民たちが説明会開催を再三要望し23年9月になってやっと説明会が実施された。
説明会では、地域の同意や理解を得られなくても進めるという県職員の一方的な発言と、事実でない説明を繰り返した対応から、住民の不信感が増幅する原因を作ることになった。
また、近隣にある福祉ゾーンとの共生を築きあげてきた住民にとって「医療観察病棟建設計画」は、精神障害者に対する無用な偏見を助長することにもなり、国が理想とする「共生社会」の実現が困難なものとして変容してきている。
この医療観察病棟建設計画は、地元住民だけでなく、精神障害者関係団体なども反対の意向を示し、精神障害者の社会復帰のために・・と繰り返し発言してきた嘉田知事や県に対して、住民はその説明に到底納得が出来ないものとなり、周辺地域の自治連合会としても、医療観察病棟建設反対を幾度となく訴えるも、滋賀県は全く対応すらせず、平成24年1月31日に、「大方の地域合意が得られたとして建築確認を申請する・・」という記者会見を、嘉田知事自らが行い、建設推進の動きが加速していく中、地域住民としては住民監査請求を行わざるを得ない事態へと至った。
周辺地域への住民説明は十分に行ったと滋賀県側が主張するが、大津市瀬田4学区(約6万人の人口)に対しては、出席者8名しかいないような説明機会しか設けていない実態が散見され、更に滋賀県は29回もの住民説明会を実施したと主張しているが、実質的な住民説明会は8回のみである。