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内閣府が29日公表した南海トラフ巨大地震の最大被害想定で、全壊約2400棟とされた県内の建物被害のうち、約6割の約1500棟は液状化によるものとされた。諏訪湖周辺の軟弱地盤を抱える諏訪市や、隣の岡谷市の一部などで危険性が高いとみられる。ただ、国や県などはこれまで個々の住宅への予防的な液状化対策を行っておらず、今後も費用面などから簡単には進まないとの見方が強い。自治体関係者からはソフト面を含めた実効性ある対策の検討が必要との声が出ている。
国土交通省などによると、液状化は地盤が緩く砂質で、地下水位が高い地域などで起き、東日本大震災では埋め立て地や川沿いなどで発生。県が00、01年度に行った地震対策基礎調査では、諏訪地域は、東海地震の際に「平地部で(液状化の)危険度が高い」としていた。
同省などによると、液状化のハード対策は、住宅建設の際に地中にくいを打ち込むことや硬い砂をくい状に打ち込んで地盤改良する方法などがあるという。ただ、こうした対策に支援すれば、「天文学的に費用がかかる恐れがある」(県建築指導課)。揺れによる建物倒壊に比べ「人命に影響する危険性が小さい」(国交省建築指導課)との判断もあって、全国的に進む耐震改修への補助とは異なり、国は個々の住宅への液状化対策は進めてきていないのが現状だ。
諏訪市は、軟弱地盤を抱える平地部の広い範囲で危険があるとするものの、市としてハード面での対策は取っていない。市危機管理室の担当者はソフト面での対策を考えるとし、「液状化の危険性の高い地域や、対策となる工法を紹介するマップ作りを検討したい」と説明する。
隣の岡谷市も、地下水位の高い諏訪湖北側の地域での被害を懸念。市危機管理室の担当者は「出前講座などで被害想定を地元に説明し、住宅を新築するときに地盤改良するなどの対策を取ってもらうようにしたい」とする。
一方、今回の最大被害想定で、地震の揺れによる全壊棟数は、全体の約3割に当たる約700棟。震度分布推計で震度6強となっている飯田市の危機管理・交通安全対策室によると、住宅の耐震化率は3月末現在で約77%(推計)。耐震改修に最大60万円を補助する制度を続けており、「不況が長引いている影響で利用は伸びづらいが、粘り強く啓発していくしかない」とする。
最大約90棟が全壊する要因とされた急傾斜地崩壊。県砂防課によると、県内の危険箇所8800カ所余のうち、擁壁設置などのハード対策を既に行ったのは600カ所余。周囲に住宅などが5戸以上ある箇所などを優先して整備する方針で、同課は「限られた財政の中、今後も少しずつでも進めていく」としている。