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南海トラフ想定をどう見る

8月30日 04時15分

記者

東海から西の太平洋沿岸の「南海トラフ」付近で起きる巨大地震と津波で、国は、最悪の場合32万3000人が死亡するという衝撃的な想定を公表しました。
想定をどのように受け止め、身を守ればいいのか。
社会部・災害担当の加藤大和記者が解説します。

新たな想定の意味

公表された数字に驚いた方も多いと思います。
実は南海トラフの巨大地震の被害想定が出たのは今回が初めてではありません。
国は9年前の平成15年、南海トラフで東海地震や東南海・南海地震の3つの地震が同時に起きた場合の被害想定を発表していました。
マグニチュードは8.7、死者2万5000人、経済的被害は81兆円に達するという、当時としては、衝撃的な内容でした。
これに対し、今回は地震の規模はマグニチュード9クラス、死者の数は32万3000人とされ、地震の規模も犠牲者の数も大きく異なります。

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どうしてこれほどまでに想定に差が出たのか。
これまでの想定は、過去数百年間に起きた地震を基に作られていました。
しかし、東日本大震災では、こうした考え方ではまったく太刀打ちできませんでした。
このため国は、1000年に1度起きるような地震も含めて、あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震と津波を検討すると想定を一から見直してきました。

想定はスタート地点

今回新たな想定が発表されたからといって、今すぐ地震が起きるということではありませんし、必ず同じ規模で被害が出る訳でもありません。
ただ、科学的にはこれだけの巨大地震が起きる可能性があるということはしっかりと受け止めるべきだと思います。
圧倒的な津波の高さや広い範囲に及ぶ浸水、そして死者32万人・・・。
被害の想定は確かに衝撃的です。
しかし、想定に驚き、諦めるのではなく、どうやって被害を少なくしていくのか、今回の想定を今後の対策のスタート地点と考えるべきだと思います。

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防災対策の効果

国は今回の想定で、避難や防災対策で被害をどれほど減らすことができるのかという試算を公表しました。
例えば、死者の半分以上を占める津波による被害です。
地震のあと、およそ70%の人が10分以内に避難を始め、互いに呼びかけあって逃げたり、津波避難ビルを活用したり、建物を耐震化して逃げ遅れを防ぐといった対策を徹底すれば、津波の死者を80%減らせると推計しています。

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また、地震の揺れで建物が倒壊する被害を防ぐには、古い住宅の補強や建て替えなどの「耐震化」も有効です。
平成20年の時点で全国の耐震化率は79%。
これを90%にまで高めることができれば、建物倒壊は今より40%余り軽減できるとしています。

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また、津波が到達する時間がわずかしかない地域では、揺れているさなかに避難しなければならないという事態も想定されます。
できる限り安全な避難場所を確保する以外にも、長期的には津波避難ビルの建設や、高台への移転などを組み合わせた防災対策なども必要です。

みずからできることを

想定を受け止め、乗り越えるためには、被害を減らす取り組みを積み重ねることが重要ですが、行政の対策だけでは実現できません。
日本に暮らす以上、地震や津波は避けては通れません。
今回の想定をきっかけに防災訓練に参加してみたり、避難について家族と話し合ったりして、自分自身の防災対策を見直すことが大切だと思います。

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公表された津波のシミュレーション

内閣府が作成したもので、津波発生からほぼ6時間の波の動きを2分半程度に短縮してあります。
どこで津波が大きくなるかのパターンごとに5種類作成されています。

① 駿河湾〜紀伊半島沖で津波が大きくなるケース

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作成:内閣府

② 紀伊半島沖で津波が大きくなるケース

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③ 紀伊半島〜四国沖で津波が大きくなるケース

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④ 四国沖の断層で津波が大きくなるケース

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⑤ 四国沖〜九州沖で津波が大きくなるケース

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